よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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絵馬噺

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 合格祈願や縁結び、家内安全など、様々な願いごとを絵馬に書いたことがあると思いますが、なぜ絵馬というのでしょうか。

 古来より、馬は神の乗り物として神聖視されており、かつては実際に馬が奉納されていました。

 ただ馬を奉納するのは色々と負担が大きいということで、奈良時代には土や木で馬をかたどった”馬形うまがた”を代わりに奉納するようになり、平安時代からは馬の形をした木の板に馬の絵を書いて奉納するという、絵馬の元祖のようなものが誕生しました。

 安土桃山時代になると、絵馬の文化はすっかり定着し、狩野派などの有名絵師たちが腕を振るった大型の絵馬が競うように奉納され、それを人々が鑑賞できるように絵馬堂まで建てられるようになりました。

 このように誰でも自由に見ることができる絵馬は、江戸時代になるとコミュニケーションツールとしても使われるようになりました。

 その最たる例が数学者たちで、彼らは自分たちで考えた問題や解き方を”算額さんがく”として奉納することで、世間に発表したのです。

 当時は庶民の間でも算術が盛んであったため、学者同士だけでなく、一般の人たちもそれを見て問題を解くのがちょっとしたブームになったそうです。

 そして、現在ではアニメなどのキャラクターが描かれた絵馬が奉納されるようになるなど、絵馬には時代を映す鏡のような側面があるのかもしれません。

 では、今回はこの辺で失礼いたします。
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