よもやまメモ噺

いんじんリュウキ

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ガイドブック噺

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 現代同様、江戸時代にも旅のお供としてガイドブックは欠かせないものでした。

 ポピュラーなものとしては、道中記と称する各地の案内本や袖珍版しゅうちんばんと称するポケットサイズの地図や案内書があります。

 また東海道、中山道の宿場間の距離や、荷物の運賃、上方の観光案内などを詳細につづった「諸国道中袖鏡そでかがみ」や、五街道すべての施設や距離などがわかりやすいイラストで描かれた「五街道中細見独案内ひとりあんない」、そして参拝の目的から丁寧に説明してくれる「伊勢参宮細見大全」など、時代を経るにつれて中身もどんどん多様化していきました。

 そして江戸時代後期になると、旅の心得をまとめた本も登場するようになります。

 それが1810年に出版された「旅行用心集」で、著者の八隅蘆菴やすみろあんは「わたしが旅好きなことを知る人たちが、いざみずから旅をする段になると、心得をあれやこれやと問い合わせてくる。いっそのこと一冊にまとめたほうが早い」と前書きしています。

 その前書きのとおり、本にはふさわしい旅装束はもとより、旅の必需品、旅籠はたごの選び方、旅籠に着いた後の心得、寒い地方に旅するときの心得、船で旅するときの心得、諸国の温泉ガイドなどが、箇条書きでわかりやすく解説されています。

 当然ながらこの本は大人気となり、初めて旅をする人はもちろん、旅慣れた商人たちも持ち歩く旅の必須アイテムとなったのです。

 では、今回はこの辺で失礼いたします。
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