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第2章 卒業試験
カーナヴォンで一泊
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「なるほど、こいつは宿屋の回し者だったのか」
三毛猫はタフィたちを宿屋の前まで連れてくると、ぴょーんっと屋根の上に飛び乗って、役目は終わったとばかりに丸くなって休み始めた。
「本当、良くできた客引きよね」
カリンは、自身の魅力を最大限に活かした三毛猫のあざといやり口に感心していた。
「それでどうします、この『キャットシップ』って宿に泊まりますか?」
宿屋はレンガ造りの2階建ての建物で、猫の顔の形をした小窓がズラッと並んでいる。
「いいんじゃないの、見た感じそんなに変な宿屋じゃなさそうだし」
「俺もここでいいよ」
この宿に泊まることを決めた3人は、中へ入り部屋を確保した。
「あー、だから“シップ”なのねぇ」
部屋へ入るなり、カリンは名前の意味するところを理解した。
「おい、さっさと奥行ってくれよ。……うわっ、狭っ!」
タフィが驚くのも無理はない。狭い室内の左右には2段ベッドがびっちりと置かれ、余分なスペースは一切なかった。
「なるほど、確かに船の客室みたいですね」
カリン同様、ボイヤーも名前の意味を理解した。
「ま、寝るだけだからいいんじゃないの。うち、こっちに寝るから」
カリンは左側のベッドに腰を下ろす。
「じゃあ、俺らはこっちだな」
体格の関係から、どちらが上段に寝るかは自然と決まる。
「こんな天井の近くで寝たことねぇや。ボイヤー、そっちはどうだ?」
「えっと……ギリギリ大丈夫でーす」
ボイヤーの体は壁にピタッとくっついていた。
「それじゃ、ご飯食べに行こっか」
「おう」
「はーい」
3人は夕食を食べるために宿屋を後にした。
「このパンちょっとボソボソしてますね」
ボイヤーはパンの味に不満を漏らすと、流し込むように野菜スープを口に入れた。
「お前もパスタにしとけば良かったんだよ。これ結構うまいぞ」
タフィは大量にかつおぶしがかかったパスタを豪快にすすり上げた。
「あんたのうまいはあてになんないからね」
カリンは猫の形に切られたチーズをためらいなく頭からかじり、追いかけるようにワインをぐびぐびっと飲んだ。
3人が食事を楽しんでいるのは「キャットフード」という名前のレストランで、チーズの形からもわかるように、すべての料理に猫が絡んでいた。
「それで姉さん、キャットダンジョンはヴァーベンのやつと同じ洞窟タイプですか?」
心配性なボイヤーは、明日行くダンジョンの予習をしっかりとしておく。
「そう。だけど、大きさや複雑さはヴァーベンの比じゃないからね。それに馬車でも言ったけど、モンスターの強さは問題ない。あと一番の特徴としては、出てくるやつが愛くるしいことかな」
「愛くるしい?」
タフィが聞き返した。
「ここにいるキャットダンジョンは、モンスターにしろ魔石にしろ、出てくるやつがみんな愛くるしいというか、丸っこい形をしてるのよね」
「へぇ、そういうのに違いがあるんだ」
「絵の上手い下手じゃないけどさ、ひどいクオリティのネコダンジョンだっているんだから。ただ、戦う側からしたらそっちの方がいいんだけどね」
「なんで?」
「だって、相手がかわいいとなんか倒しにくいでしょ」
「あぁ、それなんとなくわかるな」
「だからここでは見た目を気にしちゃダメ。相手がどんな姿をしてようと、こうやってためらいなく攻撃しないとね」
カリンは猫の形をしたチーズを豪快に頭から食べると、グラスに残ったワインを一気に飲み干した。
三毛猫はタフィたちを宿屋の前まで連れてくると、ぴょーんっと屋根の上に飛び乗って、役目は終わったとばかりに丸くなって休み始めた。
「本当、良くできた客引きよね」
カリンは、自身の魅力を最大限に活かした三毛猫のあざといやり口に感心していた。
「それでどうします、この『キャットシップ』って宿に泊まりますか?」
宿屋はレンガ造りの2階建ての建物で、猫の顔の形をした小窓がズラッと並んでいる。
「いいんじゃないの、見た感じそんなに変な宿屋じゃなさそうだし」
「俺もここでいいよ」
この宿に泊まることを決めた3人は、中へ入り部屋を確保した。
「あー、だから“シップ”なのねぇ」
部屋へ入るなり、カリンは名前の意味するところを理解した。
「おい、さっさと奥行ってくれよ。……うわっ、狭っ!」
タフィが驚くのも無理はない。狭い室内の左右には2段ベッドがびっちりと置かれ、余分なスペースは一切なかった。
「なるほど、確かに船の客室みたいですね」
カリン同様、ボイヤーも名前の意味を理解した。
「ま、寝るだけだからいいんじゃないの。うち、こっちに寝るから」
カリンは左側のベッドに腰を下ろす。
「じゃあ、俺らはこっちだな」
体格の関係から、どちらが上段に寝るかは自然と決まる。
「こんな天井の近くで寝たことねぇや。ボイヤー、そっちはどうだ?」
「えっと……ギリギリ大丈夫でーす」
ボイヤーの体は壁にピタッとくっついていた。
「それじゃ、ご飯食べに行こっか」
「おう」
「はーい」
3人は夕食を食べるために宿屋を後にした。
「このパンちょっとボソボソしてますね」
ボイヤーはパンの味に不満を漏らすと、流し込むように野菜スープを口に入れた。
「お前もパスタにしとけば良かったんだよ。これ結構うまいぞ」
タフィは大量にかつおぶしがかかったパスタを豪快にすすり上げた。
「あんたのうまいはあてになんないからね」
カリンは猫の形に切られたチーズをためらいなく頭からかじり、追いかけるようにワインをぐびぐびっと飲んだ。
3人が食事を楽しんでいるのは「キャットフード」という名前のレストランで、チーズの形からもわかるように、すべての料理に猫が絡んでいた。
「それで姉さん、キャットダンジョンはヴァーベンのやつと同じ洞窟タイプですか?」
心配性なボイヤーは、明日行くダンジョンの予習をしっかりとしておく。
「そう。だけど、大きさや複雑さはヴァーベンの比じゃないからね。それに馬車でも言ったけど、モンスターの強さは問題ない。あと一番の特徴としては、出てくるやつが愛くるしいことかな」
「愛くるしい?」
タフィが聞き返した。
「ここにいるキャットダンジョンは、モンスターにしろ魔石にしろ、出てくるやつがみんな愛くるしいというか、丸っこい形をしてるのよね」
「へぇ、そういうのに違いがあるんだ」
「絵の上手い下手じゃないけどさ、ひどいクオリティのネコダンジョンだっているんだから。ただ、戦う側からしたらそっちの方がいいんだけどね」
「なんで?」
「だって、相手がかわいいとなんか倒しにくいでしょ」
「あぁ、それなんとなくわかるな」
「だからここでは見た目を気にしちゃダメ。相手がどんな姿をしてようと、こうやってためらいなく攻撃しないとね」
カリンは猫の形をしたチーズを豪快に頭から食べると、グラスに残ったワインを一気に飲み干した。
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