28 / 48
第1章 卒業後の進路
対エルフツリー
しおりを挟む
(コレ以上近ヅクナ。去レ、去レ)
「な、なんだ? なんか頭ん中で声がしたんだけど?」
突然頭の中で不気味な声が響いたので、タフィは思わず後ずさりした。
「あ、タフィもこれ聞こえたんだ」
「僕も変な声が聞こえました」
タフィだけでなく、カリンとボイヤーの頭の中でも謎の声が響いていた。
「これなんの声なんだ?」
「そうねぇ、状況から考えれば、この木からのメッセージじゃないの」
「メッセージ? ……あ、ちゅうことは、近づいて欲しくない何かがあるってことか!」
再び木に向かって歩き出すタフィ。
(近ヅクナ、去レ、去レッ!)
先ほどよりも少し口調が強くなったが、タフィは歩みを止めない。
一方で、カリンとボイヤーは様子を見るために木陰には入らず、立ち止まってタフィの動向をじっと見つめていた。
(去レッツッテンダロ!)
「おわっ!?」
怒ったエルフツリーは、地中から根を出してタフィの足に絡ませ、盛大にすっ転ばせた。
「いってぇ……」
(近ヅイタ報イダ。ワカッタラ去レ)
「なめんなよ。こんなもんどうってことねぇや」
タフィは立ち上がって体に付いた土を払い落とすと、根を絡ませないために全速力で駆け出した。
(ワカラン奴ダナ)
エルフツリーは、タイミング良くタフィの進路上に根で小さなアーチを作り出した。
「のわっ!?」
根のアーチにつまずいたタフィは、再び盛大にすっ転んだ。
(ドウダ、今度コソ諦メテ去レ)
「誰がこんなもんで諦めるかよ」
タフィとエルフツリーのやり取りを見ながら、ボイヤーは冷静に状況を分析する。
「カリン姉さん、思うんですけど、アレ絶対ただのエルフツリーじゃないですよね」
「そうね。怨念というか、なんかの魂が乗り移ってるような感じがするわね」
「ということは、やっぱりここに隠してあるってことですかね?」
「可能性は高いわね。いずれにせよ、ああやってしゃべってれば、そのうち答えがわかるでしょ」
カリンの言葉どおり、答えはすぐに判明する。
(ナゼ、ソコマデシテワタシニ近ヅコウトスル?)
「なぜって、ここに包丁が隠してあるかもしれないからだよ」
タフィが「包丁」と言った瞬間、ガサガサっと木が揺れた。
「あっ、なんか今揺れたぞ。やっぱここに包丁があるんだな」
(ナイ、ナイゾ。ダカラ去レ)
若干だが口調に乱れがあった。
「完全に動揺してんじゃん。あんだろここに、包丁がさ」
タフィはもちろん、カリンとボイヤーもこれで確信した。
「ボイヤー、うちらも行くよ」
「はい」
満を持して、カリンがエルフツリーとのやり取りに加わった。
「エルフツリーさん、うちらはある凄腕の料理人の依頼で、ジェイコブセンが作ったっていう肉切り包丁を探してるの。もしここにそれがあるのなら、渡してもらえないかな?」
「凄腕の料理人? 母ちゃんはそんな凄う……」
「あんたちょっと黙ってな」
バチーンと、カリンはタフィの後頭部をひっぱたいた。
(サッキモ言ッタガ、ココニソノヨウナモノハナイ。ダカラ去レ)
「お願い。その料理人のことは、ケーシー・カルドーゾさんも認めてるし、それに包丁は使ってこそ価値があるもんだと思うんだ。だから、渡してもらえないかな?」
(ダカラ、ソンナモノハナイト言ッテルダロ。サッサトココヲ去レ)
少し口調が荒くなっていた。
「お願い。絶対に売ったりしないし、大事に使うからさ」
カリンは頭を深々と下げて懇願する。
(イイカラ去レ!)
だが、エルフツリーは全く聞く耳を持たない。
「お願い」
(去レ!)
「お願い」
(去レ!)
そんな堂々巡りのようなやり取りが何回か続き、カリンはこのままでは埒が明かないと判断、攻め方を変えることにした。
「な、なんだ? なんか頭ん中で声がしたんだけど?」
突然頭の中で不気味な声が響いたので、タフィは思わず後ずさりした。
「あ、タフィもこれ聞こえたんだ」
「僕も変な声が聞こえました」
タフィだけでなく、カリンとボイヤーの頭の中でも謎の声が響いていた。
「これなんの声なんだ?」
「そうねぇ、状況から考えれば、この木からのメッセージじゃないの」
「メッセージ? ……あ、ちゅうことは、近づいて欲しくない何かがあるってことか!」
再び木に向かって歩き出すタフィ。
(近ヅクナ、去レ、去レッ!)
先ほどよりも少し口調が強くなったが、タフィは歩みを止めない。
一方で、カリンとボイヤーは様子を見るために木陰には入らず、立ち止まってタフィの動向をじっと見つめていた。
(去レッツッテンダロ!)
「おわっ!?」
怒ったエルフツリーは、地中から根を出してタフィの足に絡ませ、盛大にすっ転ばせた。
「いってぇ……」
(近ヅイタ報イダ。ワカッタラ去レ)
「なめんなよ。こんなもんどうってことねぇや」
タフィは立ち上がって体に付いた土を払い落とすと、根を絡ませないために全速力で駆け出した。
(ワカラン奴ダナ)
エルフツリーは、タイミング良くタフィの進路上に根で小さなアーチを作り出した。
「のわっ!?」
根のアーチにつまずいたタフィは、再び盛大にすっ転んだ。
(ドウダ、今度コソ諦メテ去レ)
「誰がこんなもんで諦めるかよ」
タフィとエルフツリーのやり取りを見ながら、ボイヤーは冷静に状況を分析する。
「カリン姉さん、思うんですけど、アレ絶対ただのエルフツリーじゃないですよね」
「そうね。怨念というか、なんかの魂が乗り移ってるような感じがするわね」
「ということは、やっぱりここに隠してあるってことですかね?」
「可能性は高いわね。いずれにせよ、ああやってしゃべってれば、そのうち答えがわかるでしょ」
カリンの言葉どおり、答えはすぐに判明する。
(ナゼ、ソコマデシテワタシニ近ヅコウトスル?)
「なぜって、ここに包丁が隠してあるかもしれないからだよ」
タフィが「包丁」と言った瞬間、ガサガサっと木が揺れた。
「あっ、なんか今揺れたぞ。やっぱここに包丁があるんだな」
(ナイ、ナイゾ。ダカラ去レ)
若干だが口調に乱れがあった。
「完全に動揺してんじゃん。あんだろここに、包丁がさ」
タフィはもちろん、カリンとボイヤーもこれで確信した。
「ボイヤー、うちらも行くよ」
「はい」
満を持して、カリンがエルフツリーとのやり取りに加わった。
「エルフツリーさん、うちらはある凄腕の料理人の依頼で、ジェイコブセンが作ったっていう肉切り包丁を探してるの。もしここにそれがあるのなら、渡してもらえないかな?」
「凄腕の料理人? 母ちゃんはそんな凄う……」
「あんたちょっと黙ってな」
バチーンと、カリンはタフィの後頭部をひっぱたいた。
(サッキモ言ッタガ、ココニソノヨウナモノハナイ。ダカラ去レ)
「お願い。その料理人のことは、ケーシー・カルドーゾさんも認めてるし、それに包丁は使ってこそ価値があるもんだと思うんだ。だから、渡してもらえないかな?」
(ダカラ、ソンナモノハナイト言ッテルダロ。サッサトココヲ去レ)
少し口調が荒くなっていた。
「お願い。絶対に売ったりしないし、大事に使うからさ」
カリンは頭を深々と下げて懇願する。
(イイカラ去レ!)
だが、エルフツリーは全く聞く耳を持たない。
「お願い」
(去レ!)
「お願い」
(去レ!)
そんな堂々巡りのようなやり取りが何回か続き、カリンはこのままでは埒が明かないと判断、攻め方を変えることにした。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる