初心なイケメンくんの初体験は異世界の騎士団長と 《もだもだラブコメBL》

らくタ

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第1章 出会い

23.白髪の男

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「………っ」

寒い。それに何だか身体が痛い。

いつものふかふかのベッドではない寝心地に、これ以上寝ていたくなくて、意識が浮上した。

「………ん」

やけに重たいまぶたを持ち上げると、そこは朝にしては薄暗い石造りの室内で、俺の目の前には黒ずくめの男が見張るようにこちらを見ていた。

「おお~やっと起きた。こんな状況でよく寝れるね」

俺の目が覚めたことに気づいた知らない男は、間の抜けた声で話しかけてきた。

ここはどこだ?それにこの人は誰?

すぐに起き上がろうとして、腕が後ろで固定されていることに気づいた。

グッと力を入れてみてもビクともせず、手錠のようなもので拘束されているようだった。

「あ、それ外れないよ~」

そう淡白な調子で声をかけられて、目を向けると、小さい窓から差し込む月の光が黒ずくめの男の白い髪を照らしていて、銀色に煌めいていた。

「…あなたは誰ですか?」

白髪の男は、無表情を崩さずに淡々と答えた。

「へー気になるのそこなんだ?オレは、ただの何でも屋だよ」

「もしかして、俺は誘拐されたんですか?」

「まぁ、見ての通りだよね」

誘拐されたと聞いても実感が湧かなかった。
あの時リベルトの部屋に居たのもこの人だったようだけど、俺を誘拐して何になるんだろう。

「どうして俺を誘拐したんですか?」

「とある組織に依頼されて、騎士団長の部屋から調査報告書を盗もうとしてたら、アンタが来ちゃってさ。そういう時、いつもは眠らせて放置してんだけど…」

白髪の男は突然こちらに手を伸ばして、俺の髪に触れてきた。

「この髪、すごいよねぇ。売ったらいくらになるんだろ」

"売る”という言葉を聞いて初めて、目の前の男を怖いと思った。質問にすぐ答えてくれるから味方であるような錯覚をしてしまっていたが、彼は誘拐犯で、自分は拘束されていて、何をされても抵抗出来ない。

俺が警戒の目を向けると、男は両手を挙げて降参のポーズをした。

「あ、ごめんね~ジョーダンだよ、冗談。こんなに綺麗な黒髪を傷つけたりなんてしないよ」

そういえば、この国で黒髪は珍しいんだ。
リベルトや騎士団の人たちは普通に接してくれていたから忘れていた。

「俺は、これからどうなるんですか」

リベルトに、黒髪は珍しいから目をつけてくる悪い人がいるから1人で騎士団の敷地から出ないように言われていた。でも、髪の色が珍しいだけで危ない目に合うなんて、大袈裟だと思っていた。リベルトがあんなに過保護だったのはこうやって誘拐する人が居ることを知っていたからだったのかな。

「アンタを組織に売れば相当な額が手に入るだろうな~でも、今回攫ってきたのは別の理由」

突然真っ直ぐ見つめられて、恐怖で身体が震えた。

「オレの髪、真っ白でしょ。」

そう言ってわざと月の光がよく当たるところに動いた男の髪は雪の銀世界のように真っ白で、月光が透き通って煌めいていた。

「この世界で白髪は異端でしょ。アンタに分かる?どこに逃げても気味が悪い、悪魔の子だと蔑まれる気持ち」

シモンさんが前に教えてくれた。この世界では魔力の量が髪の色に現れる。暗ければ暗い程多くの魔力を持っていることが分かるから、初めて黒髪の俺を見た時は驚愕したと。だからこそこの世界で黒髪は珍しい。そして、魔力があるのが当たり前のこの世界で、生まれつき魔力を持たないものも存在して、そういう白髪の人間は悪魔の子だと大昔から差別の対象とされてきたという。

実際目にしてみて分かった。こんなに綺麗な白髪を気味が悪いという人たちを俺は理解できない。俺からしたら魔力がないのが当たり前だったから、魔力が無いから気持ち悪いって気持ちもよく分からない。

「…こんなに綺麗なのに」

つい思ったことをそのまま呟いたら、男は突然喋っていた口を閉じてしまった。

「………っ」
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