上 下
23 / 37
第1章 出会い

21.初めてのキス

しおりを挟む


「試す、とはどういうことだ?」

「えっと…例えば…」

今の俺の気持ちを誤解されたくなくて、試してみれば分かると勢いで言ってしまった。
試すって実際何をすればいいんだろう。
好きな人になら出来て、そうじゃない人には出来ないことと言えば…

「キス、してみるとか?」

「…は?」

「してみたら自分の気持ちが分かる気がして…」

リベルトの呆れたような反応にビクッとするも、やっぱりこれくらいしか思いつかなかった。

「分かった」

リベルトのこれまでの態度から一変して覚悟を決めたようなはっきりとした声音だった。

リベルトはゆっくりと距離を詰めて、大きな手のひらで頬に触れて、優しく撫でてきた。

女の子とはキスどころか、手を繋いだこともないのに突然こんなことになるなんて。

ついに、今からキスをするんだと思うと緊張して身体が強ばった。

「…っ」

まつ毛の1本1本が見えるくらいリベルトの整った顔が近づいてきて、思わずぎゅっと目をつむってしまった。

しかし、すぐに感じると思っていた唇の感触はなかなか来なかった。

「リベルト?」

不思議に思って恐る恐る目を開くと、リベルトは辛そうな表情をしていた。

「…ハルカ、もうやめよう」

リベルトは絞り出すように言葉をこぼした。

「私はハルカが好きだ。しかし、ハルカにもそれを強要したくはない」

リベルトはいつだって俺の気持ちに寄り添ってくれていた。だからこそ、俺が慣れていないことが分かって気遣ってくれたんだろう。
でも、俺は無理なんかしていない。俺自身が自分の気持ちを知りたいから、リベルトの気持ちに応えたいからこんなことまで提案したんだ。
こんな悲しそうな表情をさせたかったわけじゃない。また慈愛に満ちた瞳で、優しく微笑んでほしい。

「リベルト」

俺は覚悟を決めて目の前のリベルトの顔を両手で挟んで、思い切り引き寄せながら背伸びをしてリベルトの薄く整った唇に、自分の唇をくっつけた。

一瞬の出来事に呆気にとられた様子のリベルトに俺はやってやったぞと満足気に笑った。

「キスできたぞ!全然嫌じゃな…」

するとリベルトが突然俺の頭の後ろに大きな手を回して引き寄せて、今度はリベルトの方から唇に触れてきた。

「…んん!?」

その勢いが強くて、さっき俺がしたキスなんて全く大したものじゃなかったんだと思い知らされる。

始めは唇をはむはむと噛みながら顔の角度をずらしていたが、上手く呼吸が出来なかった俺が口を開いた隙にリベルトの熱い舌が口の中に押し入ってきた。

「…んっ…んん!」

思っていたより何倍も濃厚なキスは、休む暇を与えてくれない。ますます息が上手く出来なくなって苦しくて目に涙が溜まってくる。

キスが気持ちいいものだったなんて知らなかった。
上顎のところを舌のザラザラとしたところで擦られるとビクッと身体が跳ねて、頭の奥から蕩けるような感覚だった。
キスをしているからリベルトが今どんな表情をしているのか分からない。ただ荒い息遣いだけが聞こえて、頭がおかしくなりそうになる。

頭の中まで気持ちよくて、酸素も足りないから段々足の力も入らなくなってきた。

「…ぅ、んっ…んん」

ずっとリベルトの胸を叩いているのに、気づいてくれない。止めるどころか腰に手を回して力強く引き寄せられてしまう。

もう限界だ、と思った瞬間フッと身体の力が抜けて下に崩れ落ちそうになると、リベルトが腰に回していた手で抱えてくれた。

「…はぁ、はぁ…」

やっと口が解放されて、肩で息をしながらリベルトを見上げた。

そして目が合うと先程までの朦朧とした目つきは消え、顔を真っ青にしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖
BL
人生だめだめな陰キャくんがありがちな展開で異世界にトリップしてしまい、公爵サマに拾われてめちゃくちゃ甘やかされるウルトラハッピーエンド アルファポリスさんに登録させてもらって、異世界がめっちゃ流行ってることを知り、びっくりしつつも書きたくなったので、勢いのまま書いてみることにしました。 他の話と違って書き溜めてないので更新頻度が自分でも読めませんが、とにかくハッピーエンドになります。します! 6/3 ふわっふわな話の流れしか考えずに書き始めたので、サイレント修正する場合があります。 公爵サマ要素全然出てこなくて自分でも、んん?って感じです(笑)。でもちゃんと公爵ですので、公爵っぽさが出てくるまでは、「あー、公爵なんだなあー」と広い心で見ていただけると嬉しいです、すみません……!

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿
BL
夢を追い求める三男坊×無気力なひとりっ子 孤独な幼少期を過ごしていたルイ。虫や花だけが友だちで、同年代とは縁がない。王国の一人っ子として立派になろうと努力を続けた、そんな彼が隣国への「嫁入り」を言いつけられる。理不尽な運命を受けたせいで胸にぽっかりと穴を空けたまま、失意のうちに18歳で故郷を離れることになる。 行き着いた隣国で待っていたのは、まさかの10歳の夫となる王子だった、、、、 8歳差。※性描写は成長してから(およそ35、36話目から)となります

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...