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第1章 出会い
21.初めてのキス
しおりを挟む「試す、とはどういうことだ?」
「えっと…例えば…」
今の俺の気持ちを誤解されたくなくて、試してみれば分かると勢いで言ってしまった。
試すって実際何をすればいいんだろう。
好きな人になら出来て、そうじゃない人には出来ないことと言えば…
「キス、してみるとか?」
「…は?」
「してみたら自分の気持ちが分かる気がして…」
リベルトの呆れたような反応にビクッとするも、やっぱりこれくらいしか思いつかなかった。
「分かった」
リベルトのこれまでの態度から一変して覚悟を決めたようなはっきりとした声音だった。
リベルトはゆっくりと距離を詰めて、大きな手のひらで頬に触れて、優しく撫でてきた。
女の子とはキスどころか、手を繋いだこともないのに突然こんなことになるなんて。
ついに、今からキスをするんだと思うと緊張して身体が強ばった。
「…っ」
まつ毛の1本1本が見えるくらいリベルトの整った顔が近づいてきて、思わずぎゅっと目をつむってしまった。
しかし、すぐに感じると思っていた唇の感触はなかなか来なかった。
「リベルト?」
不思議に思って恐る恐る目を開くと、リベルトは辛そうな表情をしていた。
「…ハルカ、もうやめよう」
リベルトは絞り出すように言葉をこぼした。
「私はハルカが好きだ。しかし、ハルカにもそれを強要したくはない」
リベルトはいつだって俺の気持ちに寄り添ってくれていた。だからこそ、俺が慣れていないことが分かって気遣ってくれたんだろう。
でも、俺は無理なんかしていない。俺自身が自分の気持ちを知りたいから、リベルトの気持ちに応えたいからこんなことまで提案したんだ。
こんな悲しそうな表情をさせたかったわけじゃない。また慈愛に満ちた瞳で、優しく微笑んでほしい。
「リベルト」
俺は覚悟を決めて目の前のリベルトの顔を両手で挟んで、思い切り引き寄せながら背伸びをしてリベルトの薄く整った唇に、自分の唇をくっつけた。
一瞬の出来事に呆気にとられた様子のリベルトに俺はやってやったぞと満足気に笑った。
「キスできたぞ!全然嫌じゃな…」
するとリベルトが突然俺の頭の後ろに大きな手を回して引き寄せて、今度はリベルトの方から唇に触れてきた。
「…んん!?」
その勢いが強くて、さっき俺がしたキスなんて全く大したものじゃなかったんだと思い知らされる。
始めは唇をはむはむと噛みながら顔の角度をずらしていたが、上手く呼吸が出来なかった俺が口を開いた隙にリベルトの熱い舌が口の中に押し入ってきた。
「…んっ…んん!」
思っていたより何倍も濃厚なキスは、休む暇を与えてくれない。ますます息が上手く出来なくなって苦しくて目に涙が溜まってくる。
キスが気持ちいいものだったなんて知らなかった。
上顎のところを舌のザラザラとしたところで擦られるとビクッと身体が跳ねて、頭の奥から蕩けるような感覚だった。
キスをしているからリベルトが今どんな表情をしているのか分からない。ただ荒い息遣いだけが聞こえて、頭がおかしくなりそうになる。
頭の中まで気持ちよくて、酸素も足りないから段々足の力も入らなくなってきた。
「…ぅ、んっ…んん」
ずっとリベルトの胸を叩いているのに、気づいてくれない。止めるどころか腰に手を回して力強く引き寄せられてしまう。
もう限界だ、と思った瞬間フッと身体の力が抜けて下に崩れ落ちそうになると、リベルトが腰に回していた手で抱えてくれた。
「…はぁ、はぁ…」
やっと口が解放されて、肩で息をしながらリベルトを見上げた。
そして目が合うと先程までの朦朧とした目つきは消え、顔を真っ青にしていた。
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