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第1章 出会い

17.立ち話

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「じゃあ、また夜に会おう」

「はい、仕事頑張ってください」

リベルトは仕事を抜けてきていたようで、すぐに執務室に戻らないといけないらしい。

「ありがとう、ハルカも無理ない程度にな」

リベルトは最後にそう言いながら手を俺の頭に近づけて、触れる寸前でピタッと止まった。

「リベルト…」

「…すまない」

今さっき人前ではやめようって決めたばかりなのに、もう癖になってるのかな。
何と言うか、リベルトはかっこいい時と可愛い時のギャップがすごいな。
思わず吹き出してしまいそうになって、堪えると身体がプルプルした。

「ハルカ、どうしたんだ?」

「り、リベルトが、可愛くて…ふっ、はは、」 

笑いをこらえている俺に真面目に心配してくれるリベルトが面白すぎて、もう我慢出来なかった。

突然腹を抱えて笑いだした俺をリベルトはきょとんと不思議そうに見つめていたが、つられてしまったのか、リベルトも笑顔になった。

「可愛いのはハルカだろう?」

そう言って優しい眼差しで微笑む姿は、今度はすごくかっこいい。思わずドキッとしてしまって、ちょっと悔しい。

俺が照れくさくて何も返せずに居ると、いつの間にか団長の背後に立っていたシモンさんと目が合った。

「あの~イチャついているところ申し訳ないんですが、団長はそろそろ戻ってくださいね」

「お前…」

シモンさんがそうやって声をかけてきたのを聞いて、リベルトはすぐ戻らないとって言っていたのにいつの間にか喋って引き留めてしまってたことに気づいた。

「ハルカ様も魔法の練習があるのでいつまでも居座られたら困ります」

「そう言うわりには、すぐに戻って来なかったが、何をしていた?」

そういえば、シモンさんは今まで何してたんだろう。リベルトを呼びに行ったシモンさんよりリベルトの方が先に来たのは何か用事でもあったのかなって思ったけど。

「ただ団員たちと世間話をしていただけですよ」

「お前、何か企んでないか?」 

「いやいや!まさか!そんなことより、さぁ、ハルカ様、練習の続きをしましょう。」

シモンさんはそう言って俺の肩に手を回して、肩を組んで、リベルトから離すように誘導した。

「ハルカ、もしそいつに嫌なことをされたらすぐ教えてくれ」

「失礼な!私を何だとお思いで?巷では品行方正な紳士で知られているのをご存知ない?」

「それは表ヅラの話だろう」

「まるで私に裏があるような言い方ですね、私は傷付きましたよ」

そう言って顔を手で覆って泣いているような素振りをしたシモンさんをリベルトは冷ややかな目で見ていた。

「全く、白々しい演技はやめろ。私はもう行くが、くれぐれもハルカにセクハラをしないように」

「本当に信用されてませんね。ハルカ様、私はセクハラなどしたことありませんよね?」

この世界ではどこからがセクハラになるのか分からないけど、普通に考えてお尻とか触られたらセクハラになるのかな。シモンさんは確かにやたら距離が近いけど、セクハラみたいなことはされたことない。

「ないですよ。シモンさんはいつも丁寧に魔法を教えてくれ出ます。身体に密着しながら魔力の動かし方とか、力の入れ方を教えてくれます。」

俺が魔法の勢いに負けそうになったら腰に手を回して支えてくれたり、指先に魔力を集める練習で俺の手に指を絡めて魔力の流れを確かめてくれる。

「密着だと…?」

「魔力の流れは触れないと分からないんですよ?」

「お前は"見える”から触れる必要などないだろう」

「あ、バレてしまいましたか。それはそれとして、触れている方が分かりやすいのでやめませんよ。」

シモンさんには魔力が見えるのかな。でも、俺は無償で教えてもらっている立場だし、シモンさんがその方が教えやすいと言うなら、そうしてほしい。

「俺はシモンさんの好きにしてほしいです」

「ハルカ様!では、遠慮なく好きにさせていただきます」

シモンさんが鼻息を荒くして接近してきて、その獲物を狙う蛇のような目に気圧されて後ずさりすると、リベルトが間に入ってくれた。

「ハルカ、こいつのような変態にそういうことを言ってはいけない」

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