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第1章 出会い
16.なでなで
しおりを挟む「ハルカ、すまなかった」
シモンさんがリベルトのところに行ってしまってから、1人で魔法の練習を続けていると、シモンさんではなくリベルトが来て、突然俺の目の前で頭を下げた。
「リベルト?どうしたんですか?」
急にどうしたんだろう。あの時子供の作り方とか恥ずかしいことを聞いちゃったのと、最近はずっとまともに会話が出来ていなかったからちょっと緊張する。
「最近、ハルカとあまり顔を合わせられていなかったのは私が意図的にそうしていた」
「それって…」
やっぱりリベルトは俺のことが迷惑になったのかな。俺はリベルトに与えられるばかりで俺からは何もあげられてない。リベルトに得なんかないはずなのに、優しくしてくれた。俺がそれに甘えてた。リベルトに謝る必要なんてあるわけがない。
早く言わないと、もう俺のことは気にしなくていい、もうそんなに優しくしてくれなくても大丈夫だって。
「ハルカ、今日からまた共に食事をしてもいいだろうか」
「えっ?」
「それと、ハルカはまだ城下町に行ったことがないだろう?明日、案内させてくれないか?」
突然の思いもよらなかった言葉についていけない。リベルトは俺にもう構ってられないって話じゃなかったのか?
「でも、迷惑なんじゃ…」
そう、リベルトにこれ以上迷惑をかけないようにしようと思ったばかりなのに。
「私がハルカと居たいんだ。駄目だろうか?」
俺と?本当に?
リベルトにそんな風に誘われたら断るわけがない。
「駄目じゃない!…嬉しいです」
思わず前のめりに答えてしまって、顔が熱くなる。でも、リベルトが力の抜けたように笑ってくれて、俺も自然と口角が上がった。
なんだか、全部俺の考えすぎだったのかな。
「そうか、良かった」
リベルトが俺の頭にポンと大きい手のひらを置いた。久しぶりの手のぬくもりが気持ちいい。
でも、ちょっと待った。ついうっとりしてしまったけど、こういうことばかりしてたからこの前ロタくんとかに誤解されたんじゃ。
前は何も知らなくて、リベルトは男から見ても憧れるかっこよくて頼れるお兄さんだと思ってたけど、ここでは男同士でも普通に恋愛するんだ。
そう思うと、どう見てもリベルトは女の子じゃないのに、この世界では女の子に撫でられてるのと同じようなものだと考えてしまう。
「リベルト、俺はもうこういうのは大丈夫です」
俺が変に意識してしまいそうというのもあるけど、リベルトだって俺と恋人だと間違われたら迷惑だろう。
リベルトがさり気なさすぎて前までは気にならなかったけど、俺も子供じゃないし、今は辛いことなんかないから撫でて慰めてもらう必要もない。それがもうなくなると思うと何だか少し寂しいけど、リベルトにいつまでも気遣ってもらうわけにはいかない。
だからこそ、もう俺は元気だから大丈夫だと伝えたつもりだったのに、何故かリベルトはまるで耳が垂れた大型犬のように項垂れてしまった。
「…すまない、嫌だったか?」
こんな風に切実さが滲むワインレッドの瞳でじっと見つめられると、何だかドキドキするからやめてほしい。やっぱりリベルトはカッコいいのに、こういう時は大型犬みたいで可愛いからずるい。
「もちろん嫌じゃないです。でも、また誤解させてしまうかもしれないから…」
「それなら、二人きりの時ならしてもいいか?」
二人きり?俺の部屋でご飯食べる時のことかな。確かにそれなら他の人の目を気にする必要はないけど。
「それは大丈夫ですが…その、もしかしてリベルトは人を撫でるのが好きなんですか?」
「それは…そうかもな」
リベルトはまるで今そのことに気づいたような様子で頷いた。
なるほど。それなら納得だ。リベルトは世話焼きな性格だから、撫でることも自然と身についたのかな。でも、普段から他の人にもこんなことをしてるならちょっと心配だな。こんなカッコいい騎士団長に頭ポンポンとかされたら女の子はひとたまりもないだろう。少女漫画だったら一発で恋が始まってる。いや、この世界なら男でも恋が始まるのか。
リベルトが他の人にも撫でて慰めてあげたりしてる姿を想像してみると、何だかモヤモヤした。
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