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第1章 出会い
15.自覚
しおりを挟むそれからも、ハルカの顔を見るとまた邪な妄想をしてしまいそうで、出来る限りハルカと距離を置いた。シモンに任せきりになるのはあまり気が進まなかったが、シモンはあれでも国内一の魔法使いであり、安全面の心配はないだろう。
そう思って任せていたシモンが、1週間ほど経った今日、部屋に押しかけてきた。そして、ハルカが俺のせいで泣いていたと言った。
「単刀直入に言います。あなたは恋愛したことがないんですか?いつまでくだらない理由で避けるつもりで?思春期ですか?」
「……」
俺も好きで避けている訳では無い。しかし、シモンの言うことは全て正論で、言い返す言葉がなかった。
シモンとは長い付き合いなだけあって、俺がハルカを避けていた理由も、俺の中にある感情も全てお見通しのようだった。
「ハルカは、怖い目にあったばかりだろう。それなのに私は…」
保護という名目で自分の傍に置いておきたかったのは事実で、最初は違ったとは言え、今はもう下心が無いとは言えない。
ハルカは私を騎士団長として頼ってくれているのに、そんな私も結局、ハルカの服を破ったやつと同じだった。もしハルカが知ったら裏切られたと感じるだろう。
「はぁ、好きな子の乱れた姿を想像してしまうのは普通でしょう。まず、あなたは過保護すぎなんですよ。ハルカ様だってもう成人してるんですから、普通に口説けばいいんですよ」
「…好きな子?」
「まさか自覚なかったんですか?ハルカ様は子供扱いされていると思っているようですが、誰がどう見ても距離感おかしいでしょう。逆に好きでもないのにやたら頭撫でたり、部屋で一緒に食事していたのなら軽蔑しますよ」
そうだ。自分はハルカをとっくに好きになっていた。顔を見るだけで癒されて、笑顔が見たくなるのも、あられもない姿を想像してしまうのも、全部ハルカが好きだったから。
そもそも、私はこれまでいくら言い寄られても特定の人に興味を持つことはなかった。それなのに、自分の手で保護して、傍に置いておきたいと思った時点で気づくべきだった。
「お前には感謝しないとな」
シモンはいつもはただの変なやつだがこういう時は頼りになる。
「本当は私が優しく慰めてあなたのことなんか忘れさせてあげても良かったんですがね。私もハルカ様の涙を見ていると何かに目覚めそうだったので、今回は仕方なくあなたに譲ってあげることにしました」
もうとっくに目覚めてるんじゃないか?
やはり油断ならない。シモンに任せきりにしていたらハルカに何をするか分からない。
「お前…もしかして」
そもそも、薄々感じていたが、こいつも私と同じ気持ちなのではないか。
「あ、安心してくださいね。もちろんあなたからハルカ様を略奪するつもりはありませんから!私は2番目の男で良いので!」
安心したのはつかの間だった。
確かにこの国は愛の女神を信仰しているだけあって、一夫多妻も、一妻多夫も可能だ。
「2番目など要らない」
一妻多夫が可能なのは、自分の妻が他の男に触れられても許せる前提がある場合のみだ。ハルカが他の男に触れられているのを想像しただけで手が出そうになる私はそれを許せないだろう。
「そうでしょうか?決めるのはハルカ様だというのをお忘れなく」
いつもより何倍も胡散臭い笑みを浮かべながらシモンは執務室を後にした。挑発されたものの助言をもらった手前、強くは出れなかったが、これ以上シモンに遅れをとるわけにはいかない。まずはハルカに謝らなければ。
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