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第1章 出会い
14.欲
しおりを挟む「あなたは、ハルカ様をいじめたいんですか?まさかそんな趣味をお持ちだったとは、全く存じ上げず…」
「何の話だ」
今日もいつも通り騎士団長としての公務の書類確認をしていると、突然執務室に押しかけてきたシモンにまるで汚物でも見るように見下され、また騒がしいのが来たと追い出そうとしたものの、"ハルカ”という名前が聞こえて、再び腰を下ろした。
「はぁ…ハルカ様、泣いてましたよ」
「…は?」
一気に頭に血が上る感覚がした。あれだけ言いつけておいたというのに、ハルカを泣かせるような度胸があるやつが居たとは。
「先に言っておきますが、あなたのせいですよ」
一体誰だと問い詰めようとした時、衝撃的な言葉に思考が停止した。
「私が……ハルカを……?」
通常、騎士団で保護した被害者はすぐに保護施設に預けて、もし身寄りがなければそのままその施設で働いてもらうか、仕事を斡旋してやったりする。つまり、いくら身寄りがないとはいえ、ハルカを騎士団もとい自分の元で保護することにしたのは完全に私情だ。
いくら美しい容姿を持っていても、子供に邪な感情を向けられるはずはなく、初めは本当に震えて涙を流す姿にあまりにも庇護欲をそそられて、自分の近くで見ていないと安心出来なかったからだ。
しかし、すぐにハルカは18歳で成人していたとやその真面目で礼儀正しい性格を知り、料理を美味しそうに頬張る姿、そして、普段のクールな表情が解けた時に見せるあどけない純粋無垢な笑顔を見ていたら、次第に庇護欲以外の欲が自分の中に生まれていた。
それを自覚したのは、ハルカに子供の作り方を聞かれた時だった。ハルカは、森に居た以前の記憶がないようで、それまでも色々なことを尋ねてきた。始めは本当に常識的なことを聞かれて驚いたが、ハルカのためになるならと何でもすぐに答えた。
しかし、その流れで結婚の話になり、子供の作り方まで聞かれるとは思わなかった。
子作りの方法は、異性同士でも同性同士でも、基本的には同じだ。ただ、男同士の場合は、元々子宮が無いため、何度も魔力の籠った精子を体内に放ち、時間をかけて体内に子宮を形成していく。つまり、男同士の方がより多く身体を繋げる必要がある。
好奇心に満ちた純粋な瞳を向けてくるハルカに、これを説明するのは心苦しかったが、性の知識は無いほうが危険だと判断し、出来るだけ生々しくならないように淡々と説明するように務めた。
しかし、ハルカの雪のように白い肌が、次第に林檎のように赤らんでいくのを見ていると、ドクンと心臓が跳ねた。
こんな風に説明を聞いただけで耳まで真っ赤に染め上げてしまうなんて、あまりに純粋で、危うい。
成人を迎えるころには、貴族や地位の高いものは特に愛の女神の信仰のもと、正しく愛し合えるように専門の店で筆下ろしを行う。当時鍛錬に明け暮れていて経験が無かった私も、そうやって初体験は軽く済ませた。
成人から2年も経った18歳ともなれば、遊び盛りで、身体だけの関係を持つ者も多い。
しかし、ハルカのこの様子では、初体験すらまだなんじゃないか。
想像してしまった。
華奢な身体を押し倒して、白いシーツとその黒髪のコントラストに目がくらみ、その白い肌が林檎のように色づいていく様を。そして、そのまま滑らかな肌に触れたら、今のような真っ赤な顔で、あの時のような濡れた瞳で、どんな声を聞かせてくれるんだろうか。
私はいつの間にか、説明している行為の手順をハルカに重ねてしまっていた。
「すみません、やっぱり多分知っていたので大丈夫です」
しかし、ハルカの言葉で一気に目が覚めた。
私は今、一体何を考えていたのか。
ハルカのあられもない姿を想像しながら熱のこもった視線を向ける男に、ハルカは気づいてしまったんだろうか。
もう聞いていられないとばかりに俯いてしまったハルカの耳は赤く色づいていて、それを見てまた自分の中から沸き上がる欲を感じた。
もうここには居られない。今ハルカにとって1番危険なのは私だ。いつ理性が崩れて、すぐ後ろにあるベッドに押し倒してしまうか分からない。
慌ててハルカの部屋を後にした後も熱が収まらず、初めて他人を想像しながら抜いてしまった。
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