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第1章 出会い

7.魔法

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「シモン、落ち着け。ハルカが怖がってる」

「はっ!ついまた我を失っていました。すみません。ハルカ様どうか怖がらないで。私はその、魔法のことになるとどうにも抑えられなくて…」

「そ、そうなんですね」

やっぱりちょっと、いや結構勢いが怖い。黙っていれば物静かで所謂インテリイケメンという感じなのに、魔法の話を始めるとテンションの上がり下がりが激しくなってしまうらしい。

「はぁ…こうなると分かっていたから嫌だったんだ」

「すみません…でもこんな綺麗な黒髪をお持ちなのに魔法を使わないなんてあまりにも勿体ないですよ…!」

「全く、お前は反省してくれよ。ハルカ、こいつの言うことは気にしなくていいからな」

リベルトは気にしなくていいと言ってくれるし、シモンさんがやたら俺の黒髪にこだわっているのもよく分からないけど、正直俺はシモンさんの話に興味を引かれた。
魔法が使えるかもしれないなんて、ワクワクしないはずがない。まぁ、普通に使えないことが分かってガッカリする落ちが見えるけど、自分では使えなかったとしても、普通に魔法については知りたい。

「あの、迷惑でなければ教えて欲しいです」

「え!?本当ですか!??」

またもや前のめりに近づいてきたシモンさんにガッシリと両手を握られる。

「ハルカ、本当か?」

リベルトは俺の手を握るシモンさんの手をさり気なく掴んで引き離しながら、気遣うように俺の顔を覗きこんだ。

「はい、教えてもらっても出来ないかもしれませんが…」

「そんなことはお気になさらず!大歓迎ですよ」

「ハルカ、シモンに気を遣ってないか?」

「団長、ハルカ様自身が希望しているんです。あんまりしつこいと嫌われますよ」

シモンにそう言われて、今度はリベルトの方が項垂れてしまった。180センチ以上はある大きな身体で、しゅんとしてしまったリベルトが何だか可愛くて、ついクスッと笑ってしまった。

「でも、リベルトが嫌なら俺は大丈夫です」

そもそも俺はリベルトに助けられなかったら、あそこで野垂れ死んでいた身だ。これからの面倒を見て貰えるだけで十分すぎる。

「いや、すまない。ただ、私は魔法はあまり得意ではなくて…」

「ハルカ様、気にしなくていいですよ。団長はただ拗ねているだけですから。」

「拗ねてる?」

「団長は、自分では魔法を教えられないことが悔しいんですよね。大魔法使いの私が責任を持って指導いたしますので、団長は公務に励んでいてください。」

リベルトは、世話焼きな性格なんだろうとは思っていたけど、生活の保証だけではなく、俺の魔法のことまで面倒を見ようとしてくれてたのか。でも、騎士団の団長なんて、忙しいに決まってる。俺の世話までしてもらう訳にはいかない。

「リベルトにそこまで迷惑はかけられません。俺のことは気にしないでください」

「そうですよ!あなただって、ずっと付き纏っているわけにはいかないでしょう」

「それはそうだが…」

「心配になる気持ちは分かりますよ。純粋な黒髪を持っているうえに、こんな美人さんであれば、手を出そうとする輩も出てくるでしょうね」

「そうだろう」

リベルトが深く頷いた。

「だからこそ、身を守る術を持つ必要があると思いませんか?」

「それは……確かに」

美人さんというのは、どうやら俺のことらしい。
あの大学のサークルでも、やたらイケメンくんと呼ばれていたし、高校時代も友達によく残念なイケメンといじられていたから、俺は顔はそんなに悪くないんだと思う。でも、俺は顔が普通より整っているだけで実際は女々しいただの貧弱な男だ。
だから、男らしくて本当にかっこいいリベルトたちにそう言われると、何だか自分が恥ずかしくなる。
顔だけ良かったとしても、いつまで経っても女子とまともに話せないままで、もしかしたらと期待して入ったサークルでも唯一の長所である顔のせいで、怖い先輩に色々されて、それでも震えて泣くだけで逃げることも出来ずにただされるがままになって。

もし魔法を使えるようになったら、
強くなったら、俺も変われるかな。

自信がついて、女の子とも普通に話せるようになれるかもしれない。そしたらあの時諦めた恋愛が今度こそ出来るかもしれないなんて甘い考えが一瞬頭をよぎったが、すぐ期待してしまうのは俺の悪い癖だと我に返って、今はそれより、身を守る術を身につけることを目標にしないとと自分に言い聞かせた。

「俺、精一杯頑張ります」










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