15 / 19
15
しおりを挟む
この予想外な顛末に、ミチカはパニックになった。
なにが起こったのかよく分からず、とりあえず早く逃げなければ、と思考を放棄して本能に従った。
「あの、わたくし、急な用事を思い出しまして」
「いやいや。何の急用があるというのだ? そんな格好で外へ出たら変態だと思われるぞ」
すたすたと足早に地下室を出るミチカの後ろにはぴたりとアーシュがついてくる。
「主(あるじ)よ、そのガウンの下は全裸だ。分かっているのか?」
「ええそうですね、ええ、そうなんですけれど」
「主が変態だと思われたら私は悲しいぞ」
のんびりとミチカへの気遣いを見せるアーシュ。
必死に歩いているというのに、距離はちっとも開かない。
階段を駆けのぼる途中、気が急いたミチカは足を滑らせて、真後ろにいたアーシュの胸に抱き止められた。
「大丈夫か? 少し落ち着いたらどうだ?」
「あ、ありがとう……ええ、そうね。でも、急いでいますので」
「ああ……なるほど。そういうことか」
にやりと勝手に納得しているアーシュを振り切って階段を駆け上がり、ミチカは玄関ホールへと出るが、すぐに追いかけてきたアーシュに腕を掴まれ捕らわれた。
玄関のドアを目の前に、ミチカの希望は閉ざされた。
「離してくださいっ」
「まあ、落ち着け、主よ。よく分かったから」
ミチカの乱れた髪を整えてやり、首筋にちゅっと口づけてから「まったく可愛い主だ」と、耳元で嬉しそうに囁くアーシュ。
どうせロクなことを考えていないに違いないのだ、とミチカは思う。
「寝室へ行くのが待ちきれなかったのだな? 欲しがりな主め」
「だからもう、ちが……っ」
そのまま耳たぶをはむっと咥えられて、否定の言葉は封じられた。アーシュは優雅にミチカのガウンの胸元を寛げ、手を忍ばせてくる。
「んっ、ちょ、アーシュ!」
「そんなに待ちきれないのなら、今、ここでしてやろうか?」
「そ、れは、ぜったいに嫌、です」
「なんと奥ゆかしいことだ。では玄関(ここ)がいやなら、すぐそこのゲストルームだ。そこまでなら我慢できるだろう? さあ、主、そこの廊下を右だぞ」
ミチカは促されるまま、ふらふらと歩き出す。
なぜか不思議と抵抗できなかった。後ろから乳を揉まれているというのに、歩けと言われてそのまま歩いてしまう。勝手に身体が動いているわけではないが、彼の命令に逆らうことができない。
これがペナルティの強制力なのだろうか。
アーシュが下した『あの命令』を遂行するための行動には、逆らえない——。
なにが起こったのかよく分からず、とりあえず早く逃げなければ、と思考を放棄して本能に従った。
「あの、わたくし、急な用事を思い出しまして」
「いやいや。何の急用があるというのだ? そんな格好で外へ出たら変態だと思われるぞ」
すたすたと足早に地下室を出るミチカの後ろにはぴたりとアーシュがついてくる。
「主(あるじ)よ、そのガウンの下は全裸だ。分かっているのか?」
「ええそうですね、ええ、そうなんですけれど」
「主が変態だと思われたら私は悲しいぞ」
のんびりとミチカへの気遣いを見せるアーシュ。
必死に歩いているというのに、距離はちっとも開かない。
階段を駆けのぼる途中、気が急いたミチカは足を滑らせて、真後ろにいたアーシュの胸に抱き止められた。
「大丈夫か? 少し落ち着いたらどうだ?」
「あ、ありがとう……ええ、そうね。でも、急いでいますので」
「ああ……なるほど。そういうことか」
にやりと勝手に納得しているアーシュを振り切って階段を駆け上がり、ミチカは玄関ホールへと出るが、すぐに追いかけてきたアーシュに腕を掴まれ捕らわれた。
玄関のドアを目の前に、ミチカの希望は閉ざされた。
「離してくださいっ」
「まあ、落ち着け、主よ。よく分かったから」
ミチカの乱れた髪を整えてやり、首筋にちゅっと口づけてから「まったく可愛い主だ」と、耳元で嬉しそうに囁くアーシュ。
どうせロクなことを考えていないに違いないのだ、とミチカは思う。
「寝室へ行くのが待ちきれなかったのだな? 欲しがりな主め」
「だからもう、ちが……っ」
そのまま耳たぶをはむっと咥えられて、否定の言葉は封じられた。アーシュは優雅にミチカのガウンの胸元を寛げ、手を忍ばせてくる。
「んっ、ちょ、アーシュ!」
「そんなに待ちきれないのなら、今、ここでしてやろうか?」
「そ、れは、ぜったいに嫌、です」
「なんと奥ゆかしいことだ。では玄関(ここ)がいやなら、すぐそこのゲストルームだ。そこまでなら我慢できるだろう? さあ、主、そこの廊下を右だぞ」
ミチカは促されるまま、ふらふらと歩き出す。
なぜか不思議と抵抗できなかった。後ろから乳を揉まれているというのに、歩けと言われてそのまま歩いてしまう。勝手に身体が動いているわけではないが、彼の命令に逆らうことができない。
これがペナルティの強制力なのだろうか。
アーシュが下した『あの命令』を遂行するための行動には、逆らえない——。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m


お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる