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その夜、身体を清めて部屋に戻ろうとすると、ガウン姿のアーシュが部屋の前に立っていた。
「アーシュ? そんなところでどうしたのですか?」
壁にもたれたアーシュは、珍しく真面目な顔を向けた。
「今日改めて気づいたことだが、やはりおまえには素晴らしい資質がある。それを言いたくてな」
またエッチな話だろうか? と警戒しながら聞くとそうではなかった。
「おまえは、自分が思うよりもずっと強大な魔素を持っている。ただの使い魔では受け止めきれない質と量だ。私の中にはおまえからもらった魔素が蓄積され、解放の時を待っている。この私ですらもてあますほどにな」
「は、はい」
話の流れが見えず、ミチカは曖昧な返事をする。
魔素とは、そもそも魔族が魔力を使うためのエネルギーになるものだと聞いているが、人間の持つ魔素にそこまで差があるとは知らなかった。
「そんなに凄いのですか? わたくしの魔素は」
「こちらの世界を二つ三つ征服できるだけの力になるだろうな」
(せ、世界征服……)
あまりに話が大きすぎてピンとこなかったが、不穏な空気だけは感じた。アーシュの気怠げな瞳には、魔王と呼ばれるだけの凶暴さが潜んでいることに、今更ながら気付く。
「アーシュは、こちらの世界を征服したいのですか?」
「支配欲は魔王の本能だから、嫌ではないな。この濃厚なる魔素はそれ以外に使い道もなかろう。しかし、同時に私はおまえの使い魔でもあるから、主の意思に反することはできない。おまえが望むのならば、話は別だが……」
その気はあるか? と、軽く媚びを含んだ視線を向けられて、ミチカはあわてて首を振った。
「だめですっ! あの、わたくしはただ、チンポを克服できればそれでいいので、世界征服はいたしません」
するとアーシュはがっかりするどころか、にやりと不敵な笑みを閃かせた。
「そうか。欲のないことだな。まあよい。私はおまえに従う奴隷だからな。気が向いたら命令しろ。おまえに世界をくれてやる」
そう言って笑う。
毎日スケベなことしかしていないが、やはり、アーシュは一歩間違えば危険な男だ。
使い魔の皮を被った、魔王なのだ。
支配を望んでいる。
ミチカが世界を望むことを、望んでいる。
ぞくりと背筋が冷えた。
(アーシュはきっとチンポを提供するだけでは不満なのね。でも、わたくしにとって大事なことは世界征服よりもチンポ問題です。これだけは譲れません。命令しなければいいとは言うけれど、世界征服を望んでいると分かった以上、アーシュにこれ以上魔素を提供するわけには……)
アーシュとの契約を解除して、ここを出るしかない——。
まだ完全にペニスを克服してはいないが、あとはイメージトレーニングでなんとかなるはずだ。
これ以上彼と一緒にいてはいけない。
その思いが、ミチカを突き動かした。
「アーシュ? そんなところでどうしたのですか?」
壁にもたれたアーシュは、珍しく真面目な顔を向けた。
「今日改めて気づいたことだが、やはりおまえには素晴らしい資質がある。それを言いたくてな」
またエッチな話だろうか? と警戒しながら聞くとそうではなかった。
「おまえは、自分が思うよりもずっと強大な魔素を持っている。ただの使い魔では受け止めきれない質と量だ。私の中にはおまえからもらった魔素が蓄積され、解放の時を待っている。この私ですらもてあますほどにな」
「は、はい」
話の流れが見えず、ミチカは曖昧な返事をする。
魔素とは、そもそも魔族が魔力を使うためのエネルギーになるものだと聞いているが、人間の持つ魔素にそこまで差があるとは知らなかった。
「そんなに凄いのですか? わたくしの魔素は」
「こちらの世界を二つ三つ征服できるだけの力になるだろうな」
(せ、世界征服……)
あまりに話が大きすぎてピンとこなかったが、不穏な空気だけは感じた。アーシュの気怠げな瞳には、魔王と呼ばれるだけの凶暴さが潜んでいることに、今更ながら気付く。
「アーシュは、こちらの世界を征服したいのですか?」
「支配欲は魔王の本能だから、嫌ではないな。この濃厚なる魔素はそれ以外に使い道もなかろう。しかし、同時に私はおまえの使い魔でもあるから、主の意思に反することはできない。おまえが望むのならば、話は別だが……」
その気はあるか? と、軽く媚びを含んだ視線を向けられて、ミチカはあわてて首を振った。
「だめですっ! あの、わたくしはただ、チンポを克服できればそれでいいので、世界征服はいたしません」
するとアーシュはがっかりするどころか、にやりと不敵な笑みを閃かせた。
「そうか。欲のないことだな。まあよい。私はおまえに従う奴隷だからな。気が向いたら命令しろ。おまえに世界をくれてやる」
そう言って笑う。
毎日スケベなことしかしていないが、やはり、アーシュは一歩間違えば危険な男だ。
使い魔の皮を被った、魔王なのだ。
支配を望んでいる。
ミチカが世界を望むことを、望んでいる。
ぞくりと背筋が冷えた。
(アーシュはきっとチンポを提供するだけでは不満なのね。でも、わたくしにとって大事なことは世界征服よりもチンポ問題です。これだけは譲れません。命令しなければいいとは言うけれど、世界征服を望んでいると分かった以上、アーシュにこれ以上魔素を提供するわけには……)
アーシュとの契約を解除して、ここを出るしかない——。
まだ完全にペニスを克服してはいないが、あとはイメージトレーニングでなんとかなるはずだ。
これ以上彼と一緒にいてはいけない。
その思いが、ミチカを突き動かした。
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