騎士団長の秘密

さねうずる

文字の大きさ
上 下
28 / 41

交際3ヶ月と1日 頼ってください

しおりを挟む

「シーナ団長には、皆さんには伝える必要はない。と言われておりましたが、

……団長は今、目が見えておりません。

東軍が4ヶ月前、ハクア深森にワイビーの討伐に出たことはご存じのことと思います。
その際、隊列を外れ勝手な行動をした部下が数名おりました。

我々がそれに気付き、見つけたときには彼らはポイゾスネークに食われる寸前でした。

シーナ団長が間一髪助けに入りましたが、その時にポイゾスネークの毒が目に入り込んだようで……」


ポイゾスネークは毒性の弱い魔物だ。
毒をくらったからといって死に至ることはないが、毒があたった部分は長い時間をかけて壊死していく。

「ポイゾスネークの毒なら解毒剤が開発されているはずでしょ。
シーナがそれ知らなかったとは思えないんだけど。」


ネクシス西軍団長が、訝しげに口を開く。
彼は蛇の獣人で毒についての知識が深い。

「もちろん。シーナ団長も存じ上げておりましたが、『解毒のための材料が手に入らない』と。」


「そりゃ、確かに難しいけど……けど、不可能じゃない。
東軍の獣人たちでは無理でも、北軍……というか恋人なんだしアルクに頼めばよかったじゃん。」


「ネクシス団長。俺なら入手できるんすか?
それなら俺、今からでも取りに行ってきます。
どこですか!?教えて下さい!!」


今すぐにでも行きたい。とポーラールは身を乗り出した。

しかし……、とウィルフィが続ける。

「シーナ団長はそれを望んでいません。
私もシーナ団長に進言致しました。『北軍の力を借りてはどうか』と。

しかし、シーナ団長は、『自分のミスだから北軍の騎士が命をとしてまで助ける必要はない。』と仰って、首を縦に振ってはくださらなかった。」

ウィルフィはその時のことを思い出したのか、下唇を噛んで悔しそうに言った。

それを聞いたとき、ポーラールの頭の中の何かがぷつりと切れる音がした。

1ヶ月付き合って分かっていた。

シーナは人に与えるばかり。
自分に何かを与えて貰おうなんて、人が自分を助けてくれるなんてこれっぽっちも考えていない。

所詮ポーラールには何も……何も望んでいないのだ……。


ポーラールは無言で机に拳を叩きつける。
その衝撃で会議用の長机が真っ二つに割れた。

ポーラールの人生史上、一番頭にきている。
頭に血が昇って、アドレナリンがバンバン流れでるのが自分でも分かった。

普段、へらへら笑っているポーラールが無表情で急に机を破壊したことに、他の獣人たちは唖然としているようだった。
1人を除いてだが……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

信号六
BL
後宮のどの美女にも美少年にも手を出さなかった美青年王アズと、その対策にダメ元で連れてこられた屈強男性妃イルドルの短いお話です。屈強男性受け!以前Twitterで載せた作品の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話

信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……? 美形名門貴族青年×屈強男性受け。 以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

処理中です...