騎士団長の秘密

交際31日目 それは犯罪です

「ミーシャさん、虚偽に事件を装い騎士の業務を妨害するのは立派な犯罪っすよ。」


「…………だって！だって、アルク様が最近会ってくれないから。
みんな私と結婚したがるのに、なんでアルク様は落ちないわけ！？

シーナ・リューセーなんて、あんな……あんな下等な人間とつるんで！！
あなたは獣人のなかでも上位種なのよ！？

私と結婚してより優れた種を残すべきなの！」


「……俺はあんたと結婚したいとも思わないし、ただの一度も好きだと思ったことないし。

それにシーナ団長を下等だなんて言うの止めてもらえます？

何にも知らないくせに……
これ以上、あの人を侮辱するならまじ許さないっすよ」


ムカつきすぎて、握った掌に爪が食い込む。

獣人よりどうしても身体能力で劣ってしまう人間が、団長まで登り詰めるなど並大抵のことではない。

それを人間が下等などと……

(お前ごときが、どの口でほざきやがる)



「……あっ、そう言えばさっきシーナ団長も見ましたよ。」

「どこでっ！？」

「えっ、ここに来る途中に丘下っていきました。

ウィルフィ副団長と一緒でした。
なんかシーナ団長の腰に腕回していい感じの雰囲気でしたね。」

今も寒いなか待っていることはないと知って少しだけホッとすると共に、モヤモヤと言い知れない不快感がある。

なぜウィルフィと……。


ウィルフィはシーナと同じ東騎士団の副団長で確かハイエナの獣人だったはず。
シーナ命って感じの奴で物静かなシーナの代わりによく発言している。
ハキハキと歯切れのよい言葉で話し、真面目で堅物と評判だ。

１ヶ月前にあった騎士団上層部の会議のときは確かいなかったはず……

(なんでウィルフィがシーナ団長といるんだ？)


一刻も早くシーナに会いたい。
だが、これは実質ポーラールのせいで起きた事件だ。
さすがに「後、よろしく。」で抜け出せるはずもない。

シーナが家に帰ったのであれば安心だし明日の仕事終わりにでも謝りに行けばいい。
ポーラールはそう思った。


部下が持っていたロープでは全員を縛り上げるには足りない。
一番足の早い奴に麓までロープを探しに行かせ何とか全員縛り上げると、賊どもとミーシャを詰所まで連行する。

尋問など全て終わる頃には、真夜中過ぎてすでに次の日になっていた―――