騎士団長の秘密

さねうずる

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交際31日目 ウザいのですが

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結局、ミーシャはすぐに見つかった。
ポーラールは、白熊の獣人だ。
普通の人より鼻が効く。
森に入り、木々の入り組んだ場所に建っている小屋をすぐ見つけた。

中に入ると、衣服を乱したミーシャとそれを囲む十数人の賊たち。
今にも事に及ぶ寸前といったところだ。

「大人しく投降するっすよー。
俺このあと用事あるんで煩わせないで欲しいっす。」


言うには言ってみたが、案の定血の気の多い賊たちは一斉に襲いかかってくる。





「俺こう見えても副団長っすよ?
丸腰でもそこらの賊なんかに負けないっすよ」

最後の一人を伸したところでそうゴチるが、全員意識を失っているため聞いていないだろう。


「ポーラール様っ、わたし……私怖かった。」

ミーシャは、通常なら加護欲をそそるであろう怯えた顔でぽろぽろ涙を溢した。
震える腕でポーラールの胸に縋りついてくる。


「そっすか。もう大丈夫っすよ。
応援が来るはずなんで、もう少しここで待っててください。」


愛想よく笑いつつも、それとなくミーシャを引き剥がす。
時計を確認すると約束の時間をだいぶ過ぎていた。
制圧するのに思ったより時間がかかってしまったようだ。




(いつになったら、応援来るんだよ!)

あれから、2時間も経っている。
なのに応援が来る気配が一切ない。

外はもうすっかり暗くなってしまった。

今日のここらの見回りは犬獣人が何人かいたはずだ。

あの男に聞いて現場にさえ来れば匂いで辿ってこれるはずなのになぜ来ないのか。

イライラと部屋中歩き回りながら、度々起きる賊どもを殴りつけ再び眠らせる。


(どうするか……)

賊の数が多いためポーラール1人では運びきれない。
縛り上げるためのロープも見当たらない。

殺すわけにもいかないし、ポーラールがこの場を離れている間に賊たちが目を覚ましたら逃げられてしまう。

シーナを待たせているというのに無駄に時間が過ぎて行く。
剥がしても剥がしてもベッタリくっついてくるミーシャも煩わしくて堪らない。


「ミーシャさん、くっつくのやめてもらっていっすか。
ウザいんで。」


「なっ!?」

ミーシャは、いつでも笑顔で優しいポーラールしか知らない。
今聞いた言葉が信じられない様子だった。

「わっ、私はついさっき襲われたばかりなのよ!?
怖がって当たり前じゃない!!
そんなこと言うなんて酷いわ!!」

「いやいや、あの小道は賊が出やすいって知ってたっすよね?
普通なら、多少遠回りでも大通りのほうから行きますよ。
護衛も付けずにあんなとこ通るなんてバカじゃないっすか?」

ポーラールはイライラと感情のまま言葉をぶつけた。
ミーシャは口をパクパクと……声も出ないようだ。

普段なら絶対言わない。
女性に対しては象の皮膚並みに面の皮が厚い、とリオーネに言わしめたポーラールだがイラつきと焦りで取り繕うのすら煩わしい。

律儀なシーナは暗いなか紫陽花畑で待っているかもしれない。
初夏と言えども夜はまだ少し肌寒いのだ。


(早く行かねえと……)


だがそんな思いとは裏腹に、応援が来たのはなんと3時間も後のことだった。
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