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交際30日目 紫陽花が好きですか
しおりを挟むあの次の日から、シーナの家によく誘われる。
毎回旨い飯をごちそうになり、次の日の弁当を作ってもらう。
弁当箱を返しに行けば、また飯に誘われる。
その繰り返しだ。
飯を食べ終われば特になにをするでもない。
ポーラールは腹一杯でウトウトしているし、シーナは隣で本を読む。
それが心地いい。
静かで穏やかな空間だ。
ただそれだけなのに最高に満たされた気持ちになる。
ポーラールがシーナのことを好ましく思っていることは確かだ。
しかし、自分と同じものがついた男を抱けるかどうかはまだ自信がない。
一度だけ……二人でカウチに座ってまったりしているときに手が触れあったので、そのまま軽く握ってみた。
特に抵抗されることもなかったのでその日は帰るまでずっと手を重ねていたが、それ以上のことは起きていない。
シーナは今も変わらずよく分からない。
聞けば好きだと答えるが自分からは言ってこない。
触ってもこない。
ポーラールに愛情も求めない。
ただポーラールの世話を焼き、共に同じ時間を過ごす。それだけだ。
「明日、リリの丘にある紫陽花畑に行きたいんだが、ポーラール殿も同行してくれないか?」
夕食後、いつも通りカウチで二人それぞれの時間を過ごしているとシーナが手元の本から顔を上げポーラールにそう言った。
「いっすよ。明日は日勤なんで、夕方のいつもの時間で大丈夫っすか?」
リリの丘は騎士団詰所からシーナの家までと、だいたい同じ距離だ。
いつも仕事終わりにシーナの家に寄るぐらいの時間で到着できるだろう。
「あぁ、それで構わない。」
「シーナ団長は紫陽花好きなんすね。
本のしおりも紫陽花だし。」
「.......あぁ、俺の世界で一番大切な花だ。」
シーナは心なしか少し憂いたような、それでいて愛しむようにしおりをひと撫でした。
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