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交際20日目 胃袋はすでに捕まりました
しおりを挟む「えっ、もうあがったんすか?」
まさにカラスの行水。
ポーラールはびしょ濡れのまま椅子に座るわけにもいかず、シャツを絞りながら待っているとほんの5分ほどでシーナが戻ってきた。
「あぁ。
風呂場はそこだ。
ゆっくり入ってくれ。」
シャツを脱いでいたので、ポーラールの鍛え抜かれた逞しい胸筋が剥き出しとなっている。
シーナは戻ってくるなり、あからさまに視線を反らす。
タオルの場所や風呂の使い方を説明しながらもポーラールのほうを見ようとしない。
(まさか照れてんのか?)
騎士なんてやっていると男の裸なんか見たくなくても視界に入ってくる。
シーナだって見慣れているはずだ。
ポーラールはなんとか視線の先に回り込もうとするが、シーナにくるくると体の向きを変えられ、かわされてしまう。
段々意地になってきてシーナの首にかかっているタオルを両手で掴むと、そのままグイッと引き寄せた。
「シーナ団長、ちゃんと髪拭かないと風邪引くっすよ」
シーナのふわふわの髪をタオルでガシガシ拭いていく。
全身びしょ濡れの奴が言うセリフではないが、こちらを向かせるのに何か大義名分が欲しかった。
だがその間、シーナは下を見て顔を上げようとしない。
濡れていつもより強めにウェーブしている髪の隙間から真っ赤に染まった耳が顔を覗かせていた。
(耳真っ赤。どんな顔してんのか見てぇ...)
髪を拭いていた手を頬に伸ばそうとすると、バシッとシーナに手を掴まれる。
そして、そのまま風呂場まで引きずられていったと思いきや、ポーラールを残しシーナはさっさと風呂場を後にした。
ポーラールは少しの間呆然とそこに佇んでいたが、そのまま大人しく風呂に入った。
ポカポカと湯気を立てながら風呂から上がると脱衣場に着替えも用意してある。
身長180㎝のシーナに比べ、30㎝はデカいであろうポーラールが着ても問題のないサイズだ。
リビングに行くと、机の上にホカホカのご飯、芋と肉を煮たもの、焼き色のついた魚など何品も見たことがない料理が並んでいた。
「朝の残りで悪いが、よかったら食べてくれ。」
「風呂も入らせてもらったのに、飯まですんません。」
(うまっ、まじで旨すぎる!)
初めて食べるものばかりだったが、箸が止まらない。
聞けば東の国の料理らしい。
一緒に出してくれた酒も料理によく合っていて、ついつい進んでしまう。
ポーラールも伊達に大家族の長男をしていたわけではないので料理はできる。
母親は家庭的な人間ではなかったし、何人もいた父親たちは誰1人長く家に居着かなかった。
妹が大きくなるまではポーラールが毎日料理を担当していたのだ。
しかし、どちらかといえば質より量重視だ。
基本的に塩やタレでガッと味付けするだけなので、旨いかと言われると「まぁ食べれなくはない」というレベル。
(妹や弟にこれ食わせたら、旨すぎてビビるだろうな。)
夕飯が終わる頃には、酒に強いポーラールもほんのり酔っていた。
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