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ピローなトークで作戦会議

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「それで聖女って具体的になにすればいいの?」

お互い裸のままシーツに包まり、アッくんの腕枕から顔を起こして尋ねる。
これを世間一般的にピロートークと呼ぶ。


「セックス。」

「…………は?ちょっとよく聞こえなかった。」

「セックスすればいい。」

「聞き間違いかと思ってたけど合ってたわ。
なんでセックス⁉︎
聖なる女と書いて聖女なのに⁉︎」

「聖女と情を交わすと力を授かるんだと。」

「えー?嘘じゃないw?だってアッくん別に変わらないじゃん。それかあたしがやっぱ聖女じゃないとか?」


あたしが聖女とかやっぱ有り得ないよね。
聖なる感じ皆無だし。
それ言ったらあの子もあたしとどっこいどっこいだと思うけど、見た目だけなら確かに10:0で向こうのほうが聖女っぽくはある。


「いや、変わった。魔力が異常に増えたし、今まで腹ん中で渦巻いてるって感じだった魔力が全身に隈なく流れて正確にコントロールできるようになった。」


「ん?ちょっと待って、ちょっと待って、聞き捨てならないワードがあったけど、魔力ってなに??
えっ?この世界ってそんなメルヘン要素あったの?
シルエットがペガサスの般若馬が限界だと思ってたよ。」

アッくんのみならず知り合い全員、思い出しても魔法を使ってる素振りは皆無である。

魔法の世界ならもっとなんかこう……あるよね?


「この腕輪で普段は魔力を使えないようになってる。
危ないからな。
使っていいのは魔物を相手にする騎士だけだ。」



「何それ、そんな設定あったの?聞いてない。
言われてみれば確かに皆その腕輪してるよね。
全然気にしてなかったけど……ただ流行ってんのかと思ってた。

それで……その、話戻すけど……あたしと……その、そういうことすると……アッくんの魔力が増える?みたいな感じでいいのかな……//」

さっきまでヤってたんだけど、口にするとめっちゃ恥ずい。
ファンタジーっていうよりエロゲっぽいし。

「まぁ、そうだな。
手を繋いだり、抱き合ったり、キスするだけでもかなり増えるが、セックスは比じゃないくらい魔力が増加する。

だから、もし他の奴に知られたら狙われる可能性が高い。
そうじゃなくても、この国の男は女好きが多いからな。
お前が聖女だって分かった途端、蛆のように湧いてくるぞ。」


……それはわかる。
ここに来てから、犬も歩けば――じゃないけど、ちょっと出掛けるだけでもすぐ声を掛けられる。
モテ期到来と思って最初はちょっとだけ喜んじゃったけど、あたし以外でも声掛けられてる人はざらにいるし、彼らにとったら多分女の子に対する礼儀のひとつ?てか女の子見掛けたらしなくちゃいけないルールぐらいの認識なんじゃないかな。


「まぁ、魔力目的の人が寄ってくる可能性はあるね、確かに。気をつけよ。」

「騎士の中でも聖女と情を交わして英雄に選ばれたい奴はごまんといるからな。」

「うん?また新たなワード出てきたけど、英雄ってなに?
なんで聖女とその……エッチなことすると英雄になれるわけ?」

アッくんはよく、あたしの言ってること分かんないって言うから、最近は言葉選びを気を付けるようにしてたけど、今現在アッくんの言葉のが遥かに分かんない。

頭の中ハテナだらけのあたしのためにアッくんはこの間の会議で聞いたことを掻い摘んで教えてくれた。

氷河竜のこと……300年前の聖女のこと……あと10人の英雄のこと……。


「や、嫌だよ。アッくん以外となんてできない。」 

まじで血の気が引いた。
さっきまでなんだかんだ言って他人事のような気がしていたけど、もし無理やりそんなことをさせられると想像したら怖くて体が震える。

「大丈夫だ。俺が何とかする。氷河竜の被害を抑えるぐらいの魔力は十分に溜まっているはずだ。

お前を他の奴になんか絶対渡さねぇ。」


俺が何とかするという言葉を聞いて、さっきまで自分のことしか考えられなかった頭に、別の不安が入り込む。
…………アッくん一人で氷河竜に立ち向かうなんてどう考えても危ない。もしかしたら死んじゃうかも……。
それに失敗したら怪我する人とかもいるだろうし、アッくんが責任取らされてなんてことになったら……。

自分のことしか考えてなかったけど、あたしが少し我慢すればアッくん以外にも氷河竜に対抗できる人を用意できる。

アッくんとこの国の人を危ない目に合わせるくらいなら…………。


「何考えてるか知らんが、俺はお前を別の男に抱かせる気はない。」

俯いて黙り込んだあたしが何を考えてるかなんてアッくんには全部お見通しだ。

「……でも、アッくんがもし死んじゃったりしたら、あたし……。」

「俺が死ぬわけねえだろ。余計な心配すんな。」

それから長い時間押し問答を繰り返したけど、アッくんは「抱かせない」の一点張りで、全然折れてくれない。
嬉しい反面……不安で不安で堪らなくなる。

なんか他に対策たてられれば……。


「あっ‼︎じゃあ、こういうのはどう……?」
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