僕のフェロモンでアルファが和んでしまいます

さねうずる

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翌朝の賢者タイム

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正気を取り戻したのは、次の日の朝だ。
ヒートが始まってからこんなに爽快な朝は初めてである。
体がやけに軽くて気分もすこぶるいい。

窓から差し込む光がキラキラしていて、世界がこの上なくより良いものに作り替えられたかのような錯覚さえ起こす。

隣で眠っている王太子様を見つけるまでの話だが。

すやすや眠っている王太子様を見つけた時、ハルは思わず洩れそうになった悲鳴を飲み込んだ。


昨日の出来事が夢物語から一気に現実味を帯びる。
意識した途端、顔に熱を帯びるのが分かった。

僕、王太子様とあんなこと・・・・


それにしても王太子様は全然起きない。

朝日に照らされる寝顔を見るのは初めてだ。なぜだろう、いつもより神々しく感じる。
王族特有の褐色の肌に瞳と同じ黄金色の髪の毛がさらりと顔にかかってキラキラと光っていた。


結局王太子様が起きたのはお昼も過ぎようかという時刻だ。



「・・・・んー、よく寝た。」

王太子様は起き抜けに大きなあくびを一つと伸びをする。
まだ寝ぼけているのか……部屋を見渡し首を捻った。

「…………ここ、どこ?」

少し前に湯を浴びて戻ってきたハルの姿を確認すると、途端に目を見開く。


「ハルっ?そうか……。ごめんっ!!体は大丈夫!?俺、昨日は理性が飛んじゃってハルに酷いことを……。あっ!首は!?噛んでない!?」

ハルを見つけるなり、すっ飛んできた王太子様はハルの体をペタペタ触り具合を調べる。

「ぼ、僕は大丈夫です。」

「そうか……。首も噛んでないな、よかった。
ごめん、途中からあんまり記憶がなくて……。」

ホッとしたように息を吐く王太子様に胸がツキリと痛む。
やっぱり……あれはハルのヒートに当てられてつい言ってしまっただけなのだ。
じゃなきゃ、ハルの首を噛みたいなんて言うはずがない。


あの時断って本当によかった。

番ってから覚えてないなんて言われたら絶望でしかない。
それは王太子様も一緒だろう。
今の国王夫妻は王族では珍しい恋愛結婚だと聞いた。
それはそれは仲睦まじいらしく、王太子様もご両親のように心から愛する人と番いたいと前言っていたのだ。

その相手はハルじゃない。

王太子様の夢を壊さなくて済んだ。


「その……王太子様はなぜここに?」

「あ、あぁ……イヴァンからオメガ用の抑制剤を預かってきたんだ。試しに使ってみるといいと言っていたよ。

ごめん。ヒート中一人だと聞いて心配だったのとハルのフェロモンでまさかラットを起こすとは思わなかったから俺が届けると安易に言ってしまったんだ……。」

王太子様はベッドの下に落ちていた上着のポケットから薬の入った包紙を取り出した。

「そうでしたか……。」

二人して口を閉ざしたので気まずい空気が流れる。

「と、取り敢えず元気そうで安心した。今日のところは帰るよ。またヒートが終わったら改めて話をしよう。」

「……はい。」

王太子様は自分の服をかき集めて、おざなりに身に纏うと「それじゃあ……」とどこかバツが悪そうに帰って行った。


ハルのヒートはその日からすっかり落ち着いていたが、王太子様達にそれを報告する気にもなれず、きっかり1ヶ月間仕事を休んだ。
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