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45 絶対許さない
しおりを挟む出産後はそのままこの病院の個室に入院させてもらった。
たくさん寝て少し回復した僕、
割り当てられた無駄に豪勢な個室には、今、僕、一ノ瀬さん、顔をパンパンに腫らせた勇士くんがいる。
めちゃくちゃ痛そうで男前が台無しだ。
そして、赤ちゃんはナースセンターで預かってもらっている。
「おい、言うことあるだろ。」
冷たい声で一ノ瀬さんが勇士くんを小突くと、小さな小さな声で「・・・・ごめん。」と言った。
「やだ。許さない。今のところ異常はないみたいだけど、妊娠中に変な薬使うなんて許せない。僕だけならまだしも赤ちゃんに何かあったらどうするの⁉︎」
「・・・・ほんとに悪かった。」
勇士くんは飲み物に薬を混ぜて僕に定期的に摂取させてたらしい。
彼のしたこと、絶対絶対許せない。
「蘭丸が倒れた時も、救急車を呼んで病院に運んでもらうはずが、そのまま救急車ごと蘭丸が行方不明になった。
勇士、お前が仕組んだことだろ?」
そうなの⁉︎⁉︎
・・・・知らなかった。
一ノ瀬さんは恵に夢中で僕のことなんか気に留めてないんだとばかり思ってた。
でも本当はあの後すぐに車で追いかけてきてくれたそうだ。
「ふん。蘭丸が倒れるようなことしたお前が悪いんだ。」
全然反省してない勇士くんが悪びれず言う。
「あれだってお前が仕組んだことだろーが。」
ん?どういうこと?
さっきから自分の知らないことばかりで戸惑う。
「なーんだ。バレてたか。そうだよ、擬似的に運命の番だと錯覚させる薬を使った。」
「今までの蘭丸の相手もお前がやったんだな?」
な、何が起こってるの?
擬似的に運命の番だと錯覚させる・・・・?
今までの相手って、飛鳥くんとかも人工的に運命の番と出会ったって錯覚させられてたってこと?
「俺の蘭丸に近づくからだ。
蘭丸が絶望しきったところで颯爽と現れる予定だったのに、お前のせいで全部台無しだ。」
勇士くんが今言った話が本当だとするなら、、、僕の今までのトラウマとか、運命の番に怯えて暮らしてた日々は、勇士くんの手によって作られた紛い物だということだ。
ピキッ
自分の中で何かが割れた。
自制とか理性とか、そういう感情を抑えるなんかだ。
中から出てきたのは、、、怒りの感情を振り切った憤怒の自分だった。
「・・・・けんなよ。」
「蘭丸・・・・?」
「てめぇ、ふざけんなよ⁉︎」
低く、唸るような声が出た。
怒りで視界が赤い気さえする。
起こりすぎてブルブルと体が震える経験をするのは初めてだった。
「今までどんな気持ちで・・・・僕が・・・・てめぇ、クソすぎんだろ。てめぇみてぇなクソを一時期でも好きだったとか、人生の汚点だわ。クソは肥溜めに帰れ、ボケッ‼︎」
最後に放った言葉と共に、顎に一発拳をぶち込む。
面白いようにアーチを描いてすっ飛んでいった勇士くんは気絶したようで、そのまま床に倒れて立ち上がらなかった。
その光景を口をあんぐり開けて、一ノ瀬さんが呆然と見ていた。
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