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27 体で分からせるタイプ
しおりを挟む「でも、勇士の奴、沖くんのストーカーしてると思う。だから、家に帰るのは危険だよ。」
「はい?」
勇士くんが僕のストーカー?
あり得ない。勇士くんから復縁を迫られたことなんてないし、会ったのだって7年ぶりなんだから。
そもそも勇士くんには運命の番がいるのに、僕のストーカーなんてするはずがない。
「絶対にそれはない。」と一ノ瀬さんに自信たっぷりに言うと、彼はなぜか呆れたように大きなため息を吐いた。
「勇士のやつ、沖くんが勇士のあとに付き合った人についてもやけに詳しかったし、俺たちが形式上の恋人だっていうのも何故か知ってた。
多分だけど、沖くんの家に盗聴器かなんか仕掛けてあるんだと思う。」
いやいやいや、まさか、そんな、、、ね?
脳裏にあの手紙のことが浮かぶ。
いやいや、えっ?あれも勇士くんってこと?
いや、勇士くんのほうから僕を捨てたのにストーカーする意味ある?
それに僕の知ってる勇士くんはそんなことはしない。
やんちゃで男勝りな彼が僕の家のポストにコソコソ手紙入れて、盗聴なんかするかな?
「なんか心当たりある?」
一人脳内会議してるところに話しかけられて思わず、肩が震えた。
それで、一ノ瀬さんは僕に心当たりがあると確信したらしい。
渋る僕を引きずって、一ノ瀬さんは僕の家で証拠探しをすることに決めたらしい。
ラジオを使って探せるらしく、一ノ瀬さんは部屋中歩き回って何やらやっていた。
「盗聴器あった。」
「えっ?うそ!?」
本当にあると思っていなかったからかなり驚いた。
しかも4つも!!
ボールペン、マウス、コンセント、ぬいぐるみ
予期せぬことに呆然としてしまう。
「この手紙は?」
一ノ瀬さんが盗聴器のついでに見つけたらしい、手紙の束。
差出人不明の例のやつだ。
「・・・・えっ、あっ、、、数ヶ月前から届くようになって・・・・。」
「なんで俺に言わなかった?」
「えっ、だって手紙だけで特に実害もなかったし・・・・」
僕がそう言うと、ドンッという衝撃と共に視界が反転、、、気づけば一ノ瀬さんを見上げていた。
どうやら床に押し倒されたらしい。
両手を床に縫い付けられ、腹の上に乗られているため身動きが取れない。
というか状況がよく分からなくて、動いていいのかも分からない。
ポカンと一ノ瀬さんを見つめていると、冷たい目をした一ノ瀬さんが僕を見下ろす。
・・・・えっ、、、なんか怒ってる?
「あの・・・・」
「抵抗してみな。」
僕の言葉に被せるように一ノ瀬さんがそう言う。
初めて聞く冷たい声だった。
一ノ瀬さんの声はいつも柔らかくて優しいから。
怖い・・・・。
鋭い視線が僕に向けられる。
怖い、、、なんで怒ってるの?
いつもの一ノ瀬さんじゃないみたい。
腕に力を入れてみてもピクリとも動かせない。
手首はがっちりと一ノ瀬さんに固められていた。
「離してください。」
「・・・・・・・・。」
・・・・なんでっ
足は足先は動かせるのに、膝を曲げることができない。
一生懸命つま先で床を蹴るが滑るばかりで意味がない。
「やだっ!冗談はやめてください。離してっ!!」
まともに動かせるのは首だけという状況でイヤイヤと頭を振るが、一ノ瀬さんの押さえつける力は弛まなかった。
「ヒッ、なんでっ・・・・」
何にも言ってくれない一ノ瀬さんが怖くて、自由にならない体が怖くて、涙が目に溜まる。
一ノ瀬さんの冷たい視線から逃れるように、顔を逸らして目を瞑ると、頬に「チュッ」と柔らかい感触が落ちた。
「これで分かった?」
「・・・・・・・・えっ?」
目を開けて見上げた先には、緩く微笑む一ノ瀬さん。
その優しい表情に先程までの恐怖はどこかに飛んでいく。
「沖くんは本気を出したアルファには力で勝てない。
実害があってからじゃ遅いんだ。
だから、これからは俺に何でも言って?」
「・・・・はい。」
「ん。いい子」
手首から手が外され、代わりに頭を撫でられる。
ホッと安心したからか、撫でられる頭がやけに気持ちいい。
どっちかというと付き合う人たちには甘えられることが多かったので、こうやって甘やかされるのってあんまり経験ない。
怖がらせたのも一ノ瀬さんなのに、その恐怖を取っ払ってくれるのも一ノ瀬さんだ。
撫でられるのが気持ちよくて、思わず縋りつきたくなった。
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