上 下
14 / 48

14 ドキドキのおうちデート その3

しおりを挟む

ビールを飲みながら、
「あー、幸せ。」
なんて溢す一ノ瀬さんをこっそり見つめる。

幸せならずっと僕の恋人でいればいいのに。
心で叫んで、口では「そうですねぇ」なんて無難な返事をした。


「沖くんが運命の番の人は最高だろうな。」


一ノ瀬さんは時折こうして残酷なことを言う。
いや、本人からしたら褒めてるのかもしれないけど、僕からしたらちょっと傷つく言葉だ。
彼は僕が自分のことを好きなんてカケラも気付いていないからしょうがないのかもしれないけど。

「はは、そうですかね?可愛くないってガッカリするんじゃないかな。」

「それはない。沖くん可愛いし。」

~~このニブチン男めっ。
愛しさ余ってちょっと憎たらしくなってきたぞ。

ひとしきりお酒を飲むと、二人して床についた。
僕がベッドで、一ノ瀬さんが布団。
客用の布団を用意しておいてつくづくよかったと思う。
なぜなら一ノ瀬さんは僕に手を出す気ゼロだから。
同じ布団でカケラも意識してもらえないのは、オメガとしてちょっと悲しい。


「一ノ瀬さん、お休みなさい。」
「お休み、沖くん。」



・・・・・・・・ダメだ、眠れない。
強かに酔ってはいたが、昼寝のせいで全く眠くない。
何度も何度も寝返りを打ち、しっくりくる体勢を探るが眠れない。
薄暗い天井をボーっと眺めて眠気が訪れるのを待っていると、、、

「沖くん起きてる?」
「・・・・起きてます。」

一ノ瀬さんも起きてたようだ。
僕が何度も寝返りを打っていたため寝られないのがバレたのだろう。

「眠れそう?」「あんまり・・・・」
「ハハッ、俺も。」

真っ暗な部屋の中、ベッドの下の一ノ瀬さんの姿は見えない。
いつもはあのカッコいい顔にちょっと緊張してしまってる自分がいるけど、声だけだと落ち着いて話ができる気がした。

「聞いてもいいですか?」「おー、いいよ。」
「一ノ瀬さんの叔父さんって運命の番と結婚したんですよね?どんな人なんですか?」

一ノ瀬さんが憧れる運命の番との結婚っていうのがどんな感じなのか知りたかった。
僕は運命の番にあんまりいいイメージがないから。

「優しい人だよ。俺の両親はさ、恋愛結婚なのに俺が中学上がる前には口も聞かないほど仲悪くて、お互い愛人の家から帰って来ないから叔父さん達が俺のこと育ててくれたようなもんなんだよ。

父親なんかは俺の顔見るたび『母親に似て生意気そうな目』とか言ってくるし、母親は母親で『その偉そうな態度が父親そっくり』とか言ってくるし。
ある意味似たもの夫婦だったけどな。笑」

「・・・・そうだったんですか。」

「そう。叔父さんの番はマサフミさんつってオメガの男性なんだけど、二人が初めて会った時、嗅いだことないようないい匂いがしてすぐ運命の番って分かったらしい。叔父さんもマサフミさんも結婚して20年以上経つのに未だに愛し合ってて、すげえ憧れる。」

「素敵なご夫夫なんですね。」


・・・・そうだよな。
本来、運命の番って祝福される素晴らしいことであって、、、僕がそう思えないだけで、憧れて当然なんだよな。

「・・・・一ノ瀬さんの運命の番も早く現れるといいですね。」

「おう!沖くん、ありがとう。」

一ノ瀬さんはその後ちゃんと寝られたみたいだけど僕はほとんど寝付けなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓
BL
『誰が君のことをこの世からいらないって言っても、俺には君が必要だよーー』 スパダリ系社会人×自己肯定感ゼロ大学生。 溺愛されてじわじわ攻略されていくお話です。完結しました。 8章まで→R18ページ少なめ。タイトル末尾に「*」を付けるので苦手な方は目印にしてください。 飛ばしてもストーリーに支障なくお読みいただけます。 9章から→予告なくいちゃつきます。

ふつつかものですが鬼上司に溺愛されてます

松本尚生
BL
「お早うございます!」 「何だ、その斬新な髪型は!」 翔太の席の向こうから鋭い声が飛んできた。係長の西川行人だ。 慌てん坊でうっかりミスの多い「俺」は、今日も時間ギリギリに職場に滑り込むと、寝グセが跳ねているのを鬼上司に厳しく叱責されてーー。新人営業をビシビシしごき倒す係長は、ひと足先に事務所を出ると、俺の部屋で飯を作って俺の帰りを待っている。鬼上司に甘々に溺愛される日々。「俺」は幸せになれるのか!? 俺―翔太と、鬼上司―ユキさんと、彼らを取り巻くクセの強い面々。斜陽企業の生き残りを賭けて駆け回る、「俺」たちの働きぶりにも注目してください。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

茨の王子は嫌われ魔法使いの夢を見るか

渡辺 佐倉
BL
「俺に呪いをくれてありがとう」 呪われた王子様×嫌われものの魔法使いが書きたかった。 ファンタジーですがそこまで中世ヨーロッパは意識していません。おとぎ話の世界。 茨姫が好きです。という気持ちでプロットをばーっと作りました。

真柴さんちの野菜は美味い

晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。 そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。 オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。 ※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。 ※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。

魔女家の公子は暴君に「義兄と恋愛しろ」と命令されています。

浅草ゆうひ
BL
「エーテル坊ちゃん、怖れることはありませんぞ。魔女家の領地は世界で一番安全なのですから」 「けれど僕、それがフラグに思えて仕方ない。嫌な予感がするんだ」 魔術の名家【魔女家】の公子エーテルは、記憶喪失中。 義兄ノウファムは優しい。 でも、何かを隠している。 平穏な日常の中、暴君(狂王子)と呼ばれる第二王子カジャがやってくる。 カジャは別の者が選ばれる予定だった王族の番役にエーテルを選ぶよう圧力をかけ、ノウファムとエーテル二人にどんな命令にも抗えぬ【臣従の指輪】をはめてしまう。 ――二人に様々な命令が下される。 まるで暇つぶしのように二人を弄ぶ暴君カジャにも、やはり何か秘密がある様子。 しかもこの世界、もうすぐ滅びてしまう……? 義兄X義弟、主人公総受け総愛され風味//独自設定ゆるオメガバあり ●苦手な方へのご注意要素は「攻め以外とブロマンスや未挿入軽☆話あり」「オメガバじゃない世界だけど主人公だけ薬で中途半端にオメガバのオメガっぽく体質を変えられてしまう」「シリアスだけどおふざけしたり軽いノリありなライトファンタジー」 ☆がついてる話はえっち☆ 1章(オープニング)だけ子供時代です。 表紙ははりねず版男子メーカーで作成しました。

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

処理中です...