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10 恋人のルールを決めよう
しおりを挟む「かなり当たりだったな。沖くんが最初教えてくれたから、○○のときの伏線がこっちの映画で回収されたの気付けて鳥肌立ったわ。」
「○○のときは曖昧なまま終わって、ちょっとモヤモヤしましたもんね。」
映画が終わったあと、かなりの良作だったので、二人ともテンションが上がって歩きながらもよく話が弾んだ。
「昼どうする?」
「焼肉とかどうですか?それかローストビーフのお店とか?カレー屋もありますね。」
「焼肉がいいな。」
よしっ、一ノ瀬さんは焼肉って言うと思ってた。
予想が当たって、少しニヤける。
一ノ瀬さんは食堂ではアジフライしか食べないけど、外食ではほぼ肉の人らしい。
この間、カフェで言ってた。
ここら辺で評判のいいお店を事前に調べておいたから、道順もばっちりである。
夜はかなり混むけど昼の開店時はそうでもないらしいので、今の時間帯はドンピシャだろう。
「うまっ!!ここの肉美味いな。」
「ほんとですね!おいし~」
「ハハッ、沖くんはお肉焼くの上手いな。」
自慢じゃないが僕はお肉を焼くのが得意である。
1番目の元カレ勇士くんが大の肉好きで、よくブロック肉を買って来たのでかなり勉強したのだ。
お腹を満たしたあとは車でドライブをして、今の時期は紫陽花が綺麗なので帰りに植物公園にも寄った。
「綺麗ですね」
「そうだなー」
公園内を道順沿って歩くと、色とりどりの紫陽花がそこら中に咲き誇っていた。
今日は運良く梅雨時の晴れ間だったので久々の真っ青な空が気持ちいい。
もう少ししたら汗ばむ季節がやってくるが、夏は夏で好きだなぁ、なんて紫陽花と空の澄んだ青を楽しみながら思った。
「沖くん」
「はい、なんでしょう?」
「改めて付き合うことを承諾してくれてありがとう。」
一ノ瀬さんお得意の爽やかスマイル。
綺麗な景色をバックにすると一層眩しく感じる。
「付き合う際のルールを決めておいたほうがいいと思うんだけどどうかな?」
「・・・・ルールですか?」
まぁ、仮の恋人だから確かに?必要かもしれない。
ルール、、、うん。
「まず、手を繋ぐのはいい?」
「い、いいですよ。」
「キスは?」
「い、一ノ瀬さんにお任せします・・・・」
なんか言葉にされると恥ずかしい。
紅くなった頬を隠すように思わず俯く。
デカいからあんま隠せてないかもだけど。
「じゃあ、セックスは?」
「そ、それもお任せします。」
一ノ瀬さんがあんまり明け透けな言葉を使うので、想像して顔が一気に熱くなった。
紫陽花を見るふりをしてしゃがみ込む。
早く顔の熱を冷まさないと。
「う~ん、そうだなぁ、、、沖くんに好きな人ができたときに俺の匂いがついてるのはよくないから、キスとセックスは取り敢えず無しにしとこうか。
あんまり情が湧きすぎてもいけないしな。」
「そうですよね。形式上の恋人ですしね。了解です。」
・・・・アハハ、
ヤバい、泣きそうかも。。。
さっきまで凄く楽しかったから、今のは心にキました。
お前はただの踏み台って改めて思い知らされた気分。
紫陽花綺麗だなぁ~。うん、すっごく綺麗。
ぐるぐるする思考を振り払うように必死に他のことを考える。
ここで僕が泣いたり、悲しいそぶりでも見せようものなら一ノ瀬さんのことを好きなのがバレてしまうかもしれない。
「僕っ、喉乾いちゃった。飲み物買ってきますね!」
50mほど先に見えている自動販売機に向かって僕は、脱兎の如く駆け出した。
「あー、アハハ、危なかったなぁ。」
楽しすぎてつい忘れちゃうところだったから、今言ってもらってよかった。
うっかり今以上に好きになるところだった。
頬をパンパンっと両手で二度強く叩く。
忘れるな、この恋は期間限定。僕の最後の恋なんだ。
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