透明少女と檻の中

さねうずる

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16 俺はこうして透明を治療させました。

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「カヤンバ、参上致しましたー。」
暫く待つと、カヤンバを連れたラムダがムスッとした表情で帰ってきた。
それに引き換え、カヤンバはやけに嬉しそうである。

「カヤンバ、力を貸してくれ。お前の魔法は人の魔力を吸い取るだろ。こいつの魔力を吸い取ってほしい。」

いちいち説明がめんどくさいので、腕を引っ張り直接触らせる。
「うわっ!!」
カヤンバは大袈裟に驚き、後ろに転げた。
「何これ!?何すか!?」
「透明になった人間だ。お前の魔法で見えるようにしてくれ。」

「えー、一応やってみますけど、できっかな?」

珍しく自信なさげなカヤンバだが、再度ベッドに近づく。
透明を触っても、カヤンバは見えたままだ。
その上、カヤンバが触っている箇所だけだが透明の腕も見えている。
その場にいる全員思わず、「おおっ!」と歓喜の声を上げた。

「うわっ、ダメだ!!この子魔力量半端なくて吸いきれないっス。触った場所だけ一時的に見えるようにはできますけど。」

「それでやってみよう。矢傷の部分だけ見えるようにしてくれればいい。」

カヤンバは両手の親指と人差し指をそれぞれ合わせて、両手で輪を作り、矢をその輪に入れるようにして、透明の背中に触れた。
すると、カヤンバの指の輪の中の矢と矢傷の部分が視認できるようになる。

リュカが急いで矢を抜き、手当てをすると手早く縫合をする。その上から青い花の液を塗り付け、ガーゼで覆った。

「っ、はっ!!マジでヤバい。魔力はち切れるかと思ったッス。」

処置が終わり、カヤンバは透明から手を離すと魔力を散らすかのように両手をぶんぶんと振った。

「この子の魔力どうなってんすか。こんなすげえ量の魔力初めてっすよ。」

リュカの見立てだと血も止まって、呼吸も正常、取り敢えず命に別状はないとのことだった。

そして、ひょろ男の話が本当なら、透明は10歳の頃から何年もの間、365日24時間ずっと透明化していることになる。並みの魔力量でないのは確かだろう。


「ミーちゃんをこの後どうするつもりだ。」

不意に口を開いたひょろ男の方を見ると、先ほどまでの情けない顔ではなく強い眼差しをこちらに向けている。

「どうしようと俺の勝手だ。今更お前が兄貴面して首を突っ込んでも遅い。すでにこの国自体、落ちているしな。」

俺が小馬鹿にしたように笑うと、ひょろ男は奥歯を噛み締め憎々しげに俺を睨みつけてきたが、次の瞬間には諦めたように目を伏せた。

「頼む。この子は関係ないんだ。逃してやってほしい。俺のことは殺して構わないから・・・・頼む。」

「妹一人助けられない意気地なしにしては大層な発言だな。」

ラムダが鼻で笑い、一蹴する。

「・・・・・・・・そうだ。昔の俺はミーちゃんのこと見捨てたも同然だ。でも今度は間違えない。ミーちゃんは俺が守る。ミーちゃんがそうしてくれたように・・・・」

そう言った時のひょろ男の目は何かを決意した時の強い男の眼だった。


そして、ひょろ男はその夜・・・・透明を連れて姿を消した。
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