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15 ひょろ男はこうして懺悔しました。
しおりを挟む「ミーちゃんは僕の妹だ。彼女は10歳の時、突然透明人間になった・・・・。」
ひょろ男がぽつりと話し出す。
「何かきっかけとかあったんじゃないのか?
普通の人間が突然透明化するなんて聞いたことないぞ」
聞いた途端、ひょろ男は苦しそうに顔を歪める。
「正確には分からない・・・・けど、僕はこれがきっかけなんじゃないかな。とずっと考えていたことがある。」
「じれったいぞ、お前!とっとと話せ!」
ひょろ男の確信をつかない言葉にせっかちなラムダは苛々を隠さない。
早く続きを話せとせっつく。
「うちは侯爵家なんだ。古くからある家格の高い家柄で、男性優位という思想が強い。
ミーちゃんが産まれた時も父上は失望を隠す様子もなかった。
・・・・それにサッチェル侯爵家は代々、エメラルドの髪と瞳の子供が生まれる。母親である女性がどんな髪や瞳の色だろうと、生まれるのは全員エメラルドの色を持つ子供だけだ。けど、ミーちゃんは・・・・」
「女な上、違う色だったと。だが、それがどう関係する?」
「父上はミーちゃんが自分の子供じゃないのでは、と常に疑っていたし、母上は父上に疑われるような容姿で生まれたミーちゃんを憎んでいた。
自分が不貞を疑われるのは、ミーちゃんがこんな姿で生まれてきたからだ、って事あるごとにミーちゃんに辛く当たった。
僕もミーちゃんと話すと母上に叩かれるから、それが怖くて・・・・両親の前ではミーちゃんのこと無視してた。裏では、『味方だよ』なんて言って、あの子が本当に助けて欲しい時には見捨ててたんだ。」
後悔してるんだろう。辛そうに顔を歪め、爪が食い込むほど手を強く握っている。
だが、どんなに後悔しても時間は巻き戻せない。
「この国は10歳になると魔力判定が義務付けられてる。ミーちゃんも例に漏れず判定を受けた。
・・・・でも、ミーちゃんには魔力がなかったんだ。
煙が出なかった。
ミーちゃんが透明になったのはその日の夜だよ。
夕飯の時、両親が言ったんだ。
『魔力もない役立たず。お前なんかいる意味がない。むしろいないほうがましだ』って。僕はそれを黙って聞いてた。庇うこともせず、ただ・・・・黙って聞いてたんだ。そのすぐ後にミーちゃんは透明になった。」
「・・・・・・・・。」
「両親は透明になったミーちゃんを見せ物小屋に売ろうとした。だから僕が屋敷から逃したんだ、『危ないから戻ってきたらダメ』って10歳の女の子を一人で外にほっぽり出した。」
「お前の親、最悪だな。」
ラムダが吐き捨てる様に言う。
こいつも元は孤児だから、その時の透明に感情移入してしまうのだろう。
「・・・・・それで?
精神的なことが原因ってことか?」
ひょろ男が悲しげに眉を下げて頷く。
「多分・・・・だけどミーちゃんは魔力がないんじゃなくて透明な魔力を持ってるんだ。だから魔力判定の時も煙が透明で誰も気が付かなかった。
両親の言葉がきっかけで無意識に魔法を発動させてる……んだと思う。」
・・・・なるほど。筋は通ってる。
あれが魔法の類ならどうにかやりようはある。
「分かった。試してみよう。ラムダ、カヤンバを呼んでこい。」
「えっ?カヤンバですか・・・・?」
「そうだ。今日連れてきてるはずだろ。」
「まぁ・・・・はい。後方支援にあたらせてますが。」
「今すぐ呼んでこい。」
「分かりました・・・・。」
カヤンバは最近入った新人だ。
カヤンバの親が外交大臣なので、ごりごりのコネ入団である。
真面目なラムダはそれが気に入らない。
それに人を食ったような態度のカヤンバとはそもそも反りが合っていない。
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