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10 俺の大切な人が消えました。
しおりを挟むこいつは王都の道に詳しいらしく、人気のない細い入り組んだ道を迷いもせずにすいすいと進む。
程なくしてサリーの酒場に到着した。
入り口には『close』の看板。
「その看板の文字を『solce』の順番でなぞってくれ。」
トンッ
返事の後、すぐに看板が見えなくなる。
見えないということは、言った通りなぞってくれてるのだろう。
「色が変わったら、赤く光ってる文字を押してくれ。」
トンッ
「押し終わったか?」
トンッ
「よし、じゃあ、扉を開けてくれ。」
途端に扉が消えてなくなる。
その途端、中の奴らが驚いたようにこちらを見ているのが見えた。
「な、なに!?なんなの!?」
「扉はどこにいった!?」
「敵襲か!?」
中にいた3人は困惑しながらも瞬時に武器を取り出す。
腕から温もりが消えると、3人の視線は一斉に俺へと注がれた。
「「ロー様!?」」
「うえーーん、ルシエルさまぁぁあー」
二人の男は驚きで目を白黒させているし、一人の女は、勢いよく抱きついてきて、わんわん泣いている。
3人とも以前からこの国に送り込んでおいた俺の部下だ。
「よくぞご無事でっ!!」
「ルシエル様生きてたぁー、よかったぁー」
「でも、ロー様はどうやってここに?」
三者三様の対応に思わず苦笑いしてしまう。
ラムダは涙目だし、エマナは抱き着いて離れない。
リードは未だに幽霊でも見ているかのように唖然としている。
「心配かけて悪かったな。第二王子達も皆無事だ。」
「っ、すみません。ロー様のことお助けしたかったのですが、我ら3人ではどうにもならず・・・・」
ラムダが悔しそうに唇を咬む。
「いや、それでいい。失敗すると分かってる作戦を無理に決行するのは愚者のすることだ。正しい判断だった。」
「よく我慢したな。」とラムダに笑い掛けると、目に溜まっていた涙がとうとう零れた。
「ふっ、不甲斐なくて、ずみま゛ぜん。」
他の二人もボロボロ泣くので困ってしまう。
「まだ敵陣の中だ、泣くなよ。緊急用の通路を使って脱出するぞ。
手枷が外れないから、もし戦闘になったら3人で対処してくれ。」
「「「はい!!」」」
「おい、透明、お前も一緒に・・・・・・・・・・・・透明?」
辺りを見回しても何の音もしない。
いつの間にか扉も閉まっている。
嫌な汗が流れた。
あいつは透明だから・・・・離れてしまえばきっともう見つからない。
未だ貼り付いているエマナに離れてもらい、部屋中隈無(くまな)く歩き回ってみるが・・・・どこにもいない。
「誰を探してるんです?」
「ロー様は最初からお一人でしたが??」
「早く国に帰りましょうよー、エマナここ嫌いです。」
「…………。」
呆然と、閉まったままの扉を見つめる。
いつからいなかった?
なんでいなくなった?
まだ何も伝えてないし、この手で触れることさえできていない。
ふと扉の脇、下の方に目を向けるとよれよれの小さい肩掛けバッグが落ちていた。薄汚れていて随分年季が入っている。
リードに頼んで拾ってもらうと、中身を確かめる。
バッグの中にはピンク色の花と青色の花が一輪ずつ。
角の方には炊いたグラを葉で包んだ携帯食が入れられていた。
「・・・・透明。」
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