3 / 9
すれ違う日々と恋人の気配
【3】
しおりを挟む
「もう! 帰っていたなら声を掛けてよ!」
「ごめん。寝てたから声を掛けそびれて……昨日は帰れなくてごめんね」
仙斎茶色に染めた今風の短髪に、少し長めの前髪。今時の人気男性声優並のイケメンボイスの持ち主である青年は、可愛らしい熊のイラストが書かれたエプロンを身に纏っていた。
「いつ帰ってきたの?」
「明け方近くかな。片付けと仕込みをしていたら終電に間に合わなくて、店で寝させてもらった」
「タクシーを呼ばなかったの?」
「タクシー? ああ、バスみたいにお金を払うと乗せてくれる車だっけ。歩いて帰ることしか頭に無かったよ」
いつの間にかジェダの足元に擦り寄ってきた小雪の声で我に帰る。
「そうだ。小雪のごはん……」
「俺がやっておいた。もうすぐ俺たちの朝食も完成するから」
「明け方に帰ってきたなら、まだ寝足りないんじゃない? 私が代わるよ」
「あっちの世界では、仕事で寝られない日なんて普通にあったから大丈夫。それより、先に顔を洗っておいで」
ジェダの言葉に甘えて洗面所で洗顔して戻ってくる頃には、リビングのテーブルには朝食が並んで、サラダを狙う小雪をジェダが追い払っているところだった。
「冷めない内に食べて。コーヒーを淹れてくるから」
「それなら私が……」
「いいから、コトは座って」
コーヒーを淹れにジェダがキッチンに向かったのに対して、小雪は日当たりが良い窓際に行くとお腹を見せながら床に寝そべる。
小雪はジェダのことが好きだから、きっとサラダじゃなくてジェダに相手してもらいたかっただけだろうな……。
「そういえば」
小雪を眺めていると、二人分のコーヒーを手に戻ってきたジェダに話しかけられる。
「今年は行かないの? えっと、コミケ? 」
「うん。今年は申し込まなかったの。どうせ売れないし、無駄に在庫を増やすだけだから……」
「コト……」
エプロンを外したジェダが手を止めて見つめてくる。
「ごめん。寝てたから声を掛けそびれて……昨日は帰れなくてごめんね」
仙斎茶色に染めた今風の短髪に、少し長めの前髪。今時の人気男性声優並のイケメンボイスの持ち主である青年は、可愛らしい熊のイラストが書かれたエプロンを身に纏っていた。
「いつ帰ってきたの?」
「明け方近くかな。片付けと仕込みをしていたら終電に間に合わなくて、店で寝させてもらった」
「タクシーを呼ばなかったの?」
「タクシー? ああ、バスみたいにお金を払うと乗せてくれる車だっけ。歩いて帰ることしか頭に無かったよ」
いつの間にかジェダの足元に擦り寄ってきた小雪の声で我に帰る。
「そうだ。小雪のごはん……」
「俺がやっておいた。もうすぐ俺たちの朝食も完成するから」
「明け方に帰ってきたなら、まだ寝足りないんじゃない? 私が代わるよ」
「あっちの世界では、仕事で寝られない日なんて普通にあったから大丈夫。それより、先に顔を洗っておいで」
ジェダの言葉に甘えて洗面所で洗顔して戻ってくる頃には、リビングのテーブルには朝食が並んで、サラダを狙う小雪をジェダが追い払っているところだった。
「冷めない内に食べて。コーヒーを淹れてくるから」
「それなら私が……」
「いいから、コトは座って」
コーヒーを淹れにジェダがキッチンに向かったのに対して、小雪は日当たりが良い窓際に行くとお腹を見せながら床に寝そべる。
小雪はジェダのことが好きだから、きっとサラダじゃなくてジェダに相手してもらいたかっただけだろうな……。
「そういえば」
小雪を眺めていると、二人分のコーヒーを手に戻ってきたジェダに話しかけられる。
「今年は行かないの? えっと、コミケ? 」
「うん。今年は申し込まなかったの。どうせ売れないし、無駄に在庫を増やすだけだから……」
「コト……」
エプロンを外したジェダが手を止めて見つめてくる。
11
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
保健室で授業サボってたら寝子がいた
夕凪渚
恋愛
毎日のように保健室で授業をサボる男――犬山健はその日、保健室で猫耳の生えた少女――小室寝子と出会う。寝子の第一発見者であり、名付け親の養護教諭、小室暁から寝子を保護しろと命令され、一時は拒否するものの、寝子のことを思い保護することになるが......。
バーニャ王国から寝子を連れ戻しに来た者によって、「寝子をこっちの世界に適応させないと連れ戻す」と言われてしまう。そんな事実を健は最初皆に隠し通し、一人で全てやろうとしていたが、最終的にいろいろな人にバレてしまう。そこから寝子の真実を知った者だけが集まり、寝子を世界に適応させるための"適応計画"がスタートしたのだった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【完結】一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
櫻屋かんな
恋愛
元彼の別れの言葉に傷付いた美晴は、ささやかで贅沢なランチに日々の喜びを見出していた。
コンビニ店内でのアクシデントが切っ掛けで出会った健斗と勢いで一夜を共にするが、美晴は自己嫌悪におそわれる。そんな彼女に健斗が提案したのは、「お互いに知り合うところから、やり直しませんか?」
恋に臆病なOLと、そんな彼女を一途に思うワンコ(大型牧羊犬)系リーマンが、ご飯を食べながらゆっくりと距離を縮めていく物語。
****
現代恋愛ほのぼの物。全21話。完結済みを順次up。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる