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真実と想い
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「そんな事ないわ。コハルと結婚してから、カエデは変わったわ! 表情も言葉も性格も、何もかも変わったの。前まではどこか周囲を冷めた様に見ていたに、コハルと出会ってから、周囲と関わる様になって、よく笑う様になった。雰囲気も柔らかくなって、仕事にも積極的になったわ!」
「そうなの……?」
「コハルはカエデの両親が亡くなった理由を知ってる?」
そういえば、初めて楓さんと出会った時に、楓さんの両親が亡くなっているのは聞いたけど、亡くなった理由までは聞いていなかった様な気がした。
私が首を振ると、ジェニファーは「やっばり話してないのね」と呆れた顔をしたのだった。
「カエデの両親はね、カエデが四歳の時に交通事故で亡くなったの。飲酒運転をしたトラックとカエデの両親が乗っていた車がぶつかったって」
「そうだったんだ……」
「カエデはカエデのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに預けられていたから無事だったの。でも両親がいない事で苦労したって言っていたわ。
自分と同じ思いをする人を少しでも減らしたいから、お祖父ちゃんやお父さんと同じ法律の道を目指したとも。交通事故に関する裁判を担当しているのもきっと両親が亡くなった事故がきっかけだと思うの」
ジェニファーは紅茶に口を付けて一息吐くと、話を続ける。
「ニューヨークにやって来たカエデを見た時に驚いたわ。カエデはね、交通事故を担当する弁護士になった時にもう夢が叶った様なものなの。
それが今度は新しい目的が出来たからってここに来たのよ。守りたいのに守れなかった。助けたいのに助けられなかった人がいるんだって。その人に逃げずに向き合える様に、心から笑ってもらえる様に、もう一度、一からやり直したいんだって」
「新しい目的って……?」
「日本で待っている大切な人を守って、今度こそ何があっても自分が助けるんだって。自分の事を『素敵な弁護士』だって褒めてくれた人に。……それって、コハルの事でしょう?」
昔、まだ日本で楓さんと暮らしていた頃、毎晩遅くに帰宅する楓さんの為に料理を用意した際、そんな事をメモに書いて料理と一緒に冷蔵庫に仕舞っていた時期があった。まともに読まれないだろうと思いつつも、どうにかして楓さんに心配していると、すれ違っていても大切に想っているという気持ちを伝えられないかと悩みながら書いた。――もしかしたら返事があるかもしれないと、淡い期待さえ抱いて。
返事が無かったから、読まれずに捨てられたものだとずっと思っていたけれども……。
「私、なのかな……。でも楓さんはイケメンだから、もしかしたら他の女性に言われたのかも。私なんて、日本の方が安全だからって、日本に置いてけぼりにされたし」
ようやくザッハトルテをフォークで切り分けると口に運ぶ。口中に広がるチョコレートの甘さとチョコレート味の生地に舌鼓を打っていると、「それはそうよ」とジェニファーは苦笑する。
「そうなの……?」
「コハルはカエデの両親が亡くなった理由を知ってる?」
そういえば、初めて楓さんと出会った時に、楓さんの両親が亡くなっているのは聞いたけど、亡くなった理由までは聞いていなかった様な気がした。
私が首を振ると、ジェニファーは「やっばり話してないのね」と呆れた顔をしたのだった。
「カエデの両親はね、カエデが四歳の時に交通事故で亡くなったの。飲酒運転をしたトラックとカエデの両親が乗っていた車がぶつかったって」
「そうだったんだ……」
「カエデはカエデのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに預けられていたから無事だったの。でも両親がいない事で苦労したって言っていたわ。
自分と同じ思いをする人を少しでも減らしたいから、お祖父ちゃんやお父さんと同じ法律の道を目指したとも。交通事故に関する裁判を担当しているのもきっと両親が亡くなった事故がきっかけだと思うの」
ジェニファーは紅茶に口を付けて一息吐くと、話を続ける。
「ニューヨークにやって来たカエデを見た時に驚いたわ。カエデはね、交通事故を担当する弁護士になった時にもう夢が叶った様なものなの。
それが今度は新しい目的が出来たからってここに来たのよ。守りたいのに守れなかった。助けたいのに助けられなかった人がいるんだって。その人に逃げずに向き合える様に、心から笑ってもらえる様に、もう一度、一からやり直したいんだって」
「新しい目的って……?」
「日本で待っている大切な人を守って、今度こそ何があっても自分が助けるんだって。自分の事を『素敵な弁護士』だって褒めてくれた人に。……それって、コハルの事でしょう?」
昔、まだ日本で楓さんと暮らしていた頃、毎晩遅くに帰宅する楓さんの為に料理を用意した際、そんな事をメモに書いて料理と一緒に冷蔵庫に仕舞っていた時期があった。まともに読まれないだろうと思いつつも、どうにかして楓さんに心配していると、すれ違っていても大切に想っているという気持ちを伝えられないかと悩みながら書いた。――もしかしたら返事があるかもしれないと、淡い期待さえ抱いて。
返事が無かったから、読まれずに捨てられたものだとずっと思っていたけれども……。
「私、なのかな……。でも楓さんはイケメンだから、もしかしたら他の女性に言われたのかも。私なんて、日本の方が安全だからって、日本に置いてけぼりにされたし」
ようやくザッハトルテをフォークで切り分けると口に運ぶ。口中に広がるチョコレートの甘さとチョコレート味の生地に舌鼓を打っていると、「それはそうよ」とジェニファーは苦笑する。
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