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もう一度、やり直したいんです
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「一緒にいるだけなら、結婚しているかどうかは関係ないと思いますが」
「でも、結婚していないのに側にいたら、今後、若佐先生が結婚される時に困りますよね。結婚相手にも迷惑がかかりますし」
もしかしたら、離婚しても若佐先生の友人や仕事関係者として関係は続けられるかもしれないが、それでも若佐先生が今後別の女性と結婚する時、私の存在が邪魔になってしまうかもしれない。それは何としても避けたいところだった。
「貴女がそんな心配をする必要はありませんが……。意地の悪い事を聞きました。すみません」
「いえ……」
そこでお互いに黙ると、食事を再開する。皿が空になり、食後にお茶を飲んでいると、若佐先生は尋ねてきたのだった。
「以前から気になっていましたが、どうして私の事を先生と呼ぶんですか?」
「それは……テレビで弁護士を先生と呼んでいますし、それに若佐先生は私の裁判を担当して頂きましたし……」
よくテレビ番組で出演者がご意見番の弁護士の事を「先生」と呼んでいるので、弁護士には「先生」とつけるものだと思っていた。
すると、若佐先生は小さく溜め息を吐いたのだった。
「確かにそうかもしれませんが……いえ、せっかく夫婦らしく過ごすんです。まずはお互いに気になるところから改善しましょう。小春さん、私の事は名前で呼んで下さい」
「名前って、楓先生とか?」
「楓で結構です。私達は夫婦なんです。それなのに『先生』はおかしいでしょう。これからは名前で呼んで下さい」
「楓……さん、でいいですか?」
名前を呼んだ時、若佐先生が――楓さんがわざとらしく眼鏡を直した。何か気に障ったのだろうか。ちょっとだけ気になる。
ただせっかくなので、私もおずおずと申し出たのだった。
「あの……私からもいいですか」
「なんでしょうか?」
「その……もう少し柔らかく、気楽に話せませんか。他人行儀だし、なんだか尋問されているみたいで、その……怖いです」
キリッとした毅然とした話し方、語調も強く、かっこよくはあるが、怒っているように聞こえなくもないので、怖くて近寄りがたい時がある。特に普段の楓さんは、怒る時は静かに怒るので、怒っているのか、そうじゃないのか、分からない時が多々ある。
それが分からないので、気軽に話しかけられず、距離ばかり取ってしまう。
私が怖いと言ったからだろうか、楓さんは苦々しい顔をしたのだった。
「分かりました……いや、分かった。俺も小春を困らせていた事に気付かなかった。これからはこんな話し方をする。ほら、これでどうだ?」
今までの堅苦しくもない話し方が急にフランクな話し方に変わり、最初こそ呆気に取られてしまったが、やがて小さく笑ってしまう。
「本当はそんな話し方をされていたんですね。全く気付かなかったです」
「……なかなか、明かす機会が無かったからな」
唇を尖らせて、目を逸らす楓さんに、また笑ってしまう。
ようやく夫婦としての一歩を踏み出せたような、そんな気がしたのだった。
「でも、結婚していないのに側にいたら、今後、若佐先生が結婚される時に困りますよね。結婚相手にも迷惑がかかりますし」
もしかしたら、離婚しても若佐先生の友人や仕事関係者として関係は続けられるかもしれないが、それでも若佐先生が今後別の女性と結婚する時、私の存在が邪魔になってしまうかもしれない。それは何としても避けたいところだった。
「貴女がそんな心配をする必要はありませんが……。意地の悪い事を聞きました。すみません」
「いえ……」
そこでお互いに黙ると、食事を再開する。皿が空になり、食後にお茶を飲んでいると、若佐先生は尋ねてきたのだった。
「以前から気になっていましたが、どうして私の事を先生と呼ぶんですか?」
「それは……テレビで弁護士を先生と呼んでいますし、それに若佐先生は私の裁判を担当して頂きましたし……」
よくテレビ番組で出演者がご意見番の弁護士の事を「先生」と呼んでいるので、弁護士には「先生」とつけるものだと思っていた。
すると、若佐先生は小さく溜め息を吐いたのだった。
「確かにそうかもしれませんが……いえ、せっかく夫婦らしく過ごすんです。まずはお互いに気になるところから改善しましょう。小春さん、私の事は名前で呼んで下さい」
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ただせっかくなので、私もおずおずと申し出たのだった。
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「その……もう少し柔らかく、気楽に話せませんか。他人行儀だし、なんだか尋問されているみたいで、その……怖いです」
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それが分からないので、気軽に話しかけられず、距離ばかり取ってしまう。
私が怖いと言ったからだろうか、楓さんは苦々しい顔をしたのだった。
「分かりました……いや、分かった。俺も小春を困らせていた事に気付かなかった。これからはこんな話し方をする。ほら、これでどうだ?」
今までの堅苦しくもない話し方が急にフランクな話し方に変わり、最初こそ呆気に取られてしまったが、やがて小さく笑ってしまう。
「本当はそんな話し方をされていたんですね。全く気付かなかったです」
「……なかなか、明かす機会が無かったからな」
唇を尖らせて、目を逸らす楓さんに、また笑ってしまう。
ようやく夫婦としての一歩を踏み出せたような、そんな気がしたのだった。
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