20 / 88
ニューヨークと三年振りに会う夫
20
しおりを挟む
噂には聞いていたが、セントラルパークは日本にある自然公園が比ではないくらい、とにかく広かった。
時折、散策する人やジョギングする人達とすれ違い、遠くからは子供達が遊んでいるのか、楽しそうな笑い声が聞こえてきたのだった。
(大都会の真ん中に、こんな自然に溢れた場所があるなんて……)
上を見上げれば、近くに林立する高層ビル群が立ち並び、僅かながらここが大都市の中に位置しているのだと感じられる。
スーツケースを引きずって遊歩道を歩いていると、しばらくして空いていたベンチを見つけたので座ったのだった。
「疲れた……」
はあと大きく息を吐いて、肩の力を抜く。
ここまでそれなりに重量のあるスーツケースを引きずっていたので腕が痛かった。
少し時間を潰すつもりで入っただけのセントラルパークが、こんなに広いとは思わなかった。
(本当、見かけだけじゃ、分からないよね……)
飛行機に乗っている時もそうだった。
地図上で見ると、日本とアメリカはとても近い様に感じられるが、実際は飛行機で半日以上も時間が掛かった。
セントラルパークも地図で見る限りは日本にもよくある自然公園。美術館や動物園などが併設しているが、それは日本でも見かけるのであまり物珍しさを感じず、少し広めの公園としか考えていなかった。それが実際に来てみれば、自然公園ではなく森では無いかと疑いたくなる広さで、公園内を一周するには一日では足りないと思ったのだった。
(人と同じで、モノだって見かけに寄らないっていう事かも)
何気なくスマートフォンに目を落とすと、ニューヨークの空港に着くまでほぼフルで残っていたはずの充電が半分を切っていた。おそらく、地図アプリを使っていたから減ってしまったのだろう。予備のモバイルバッテリーは持って来ているが、これから何が起こるか分からない以上、あまり使いたくはなかった。
(チェックイン開始の時間まで、旅行本でも読もう)
幸いにして、今日のニューヨークは快晴で、長時間、外にいても過ごしやすい気候だった。スーツケースの中から飛行機の中で途中まで読んでいた旅行本を取り出したところで、スマートフォンがメッセージの着信を告げた。
一人でニューヨークに行った私を心配した両親か友人からのメッセージかと思いながらスマートフォンの画面を見ると、メッセージを送って来たのは若佐先生だった。
(若佐先生からメッセージなんて珍しい……。どうしたんだろう……?)
生活費の振り込みにはまだ早い。何かあったのかとメッセージを読むと、そこには絵文字も何もなく、ただ簡潔に一言だけ書かれていた。
『今、どこにいますか?』
時折、散策する人やジョギングする人達とすれ違い、遠くからは子供達が遊んでいるのか、楽しそうな笑い声が聞こえてきたのだった。
(大都会の真ん中に、こんな自然に溢れた場所があるなんて……)
上を見上げれば、近くに林立する高層ビル群が立ち並び、僅かながらここが大都市の中に位置しているのだと感じられる。
スーツケースを引きずって遊歩道を歩いていると、しばらくして空いていたベンチを見つけたので座ったのだった。
「疲れた……」
はあと大きく息を吐いて、肩の力を抜く。
ここまでそれなりに重量のあるスーツケースを引きずっていたので腕が痛かった。
少し時間を潰すつもりで入っただけのセントラルパークが、こんなに広いとは思わなかった。
(本当、見かけだけじゃ、分からないよね……)
飛行機に乗っている時もそうだった。
地図上で見ると、日本とアメリカはとても近い様に感じられるが、実際は飛行機で半日以上も時間が掛かった。
セントラルパークも地図で見る限りは日本にもよくある自然公園。美術館や動物園などが併設しているが、それは日本でも見かけるのであまり物珍しさを感じず、少し広めの公園としか考えていなかった。それが実際に来てみれば、自然公園ではなく森では無いかと疑いたくなる広さで、公園内を一周するには一日では足りないと思ったのだった。
(人と同じで、モノだって見かけに寄らないっていう事かも)
何気なくスマートフォンに目を落とすと、ニューヨークの空港に着くまでほぼフルで残っていたはずの充電が半分を切っていた。おそらく、地図アプリを使っていたから減ってしまったのだろう。予備のモバイルバッテリーは持って来ているが、これから何が起こるか分からない以上、あまり使いたくはなかった。
(チェックイン開始の時間まで、旅行本でも読もう)
幸いにして、今日のニューヨークは快晴で、長時間、外にいても過ごしやすい気候だった。スーツケースの中から飛行機の中で途中まで読んでいた旅行本を取り出したところで、スマートフォンがメッセージの着信を告げた。
一人でニューヨークに行った私を心配した両親か友人からのメッセージかと思いながらスマートフォンの画面を見ると、メッセージを送って来たのは若佐先生だった。
(若佐先生からメッセージなんて珍しい……。どうしたんだろう……?)
生活費の振り込みにはまだ早い。何かあったのかとメッセージを読むと、そこには絵文字も何もなく、ただ簡潔に一言だけ書かれていた。
『今、どこにいますか?』
1
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完結)余りもの同士、仲よくしましょう
オリハルコン陸
恋愛
婚約者に振られた。
「運命の人」に出会ってしまったのだと。
正式な書状により婚約は解消された…。
婚約者に振られた女が、同じく婚約者に振られた男と婚約して幸せになるお話。
◇ ◇ ◇
(ほとんど本編に出てこない)登場人物名
ミシュリア(ミシュ): 主人公
ジェイソン・オーキッド(ジェイ): 主人公の新しい婚約者
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。
大森 樹
恋愛
「君だけを愛している」
「サム、もちろん私も愛しているわ」
伯爵令嬢のリリー・スティアートは八年前からずっと恋焦がれていた騎士サムの甘い言葉を聞いていた。そう……『私でない女性』に対して言っているのを。
告白もしていないのに振られた私は、ショックで泣いていると喧嘩ばかりしている大嫌いな幼馴染の魔法使いアイザックに見つかってしまう。
泣いていることを揶揄われると思いきや、なんだか急に優しくなって気持ち悪い。
リリーとアイザックの関係はどう変わっていくのか?そしてなにやら、リリーは誰かに狙われているようで……一体それは誰なのか?なぜ狙われなければならないのか。
どんな形であれハッピーエンド+完結保証します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる