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60 反対属性
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大木の影に隠れて前方の様子を窺いつつ、なるべく音を立てずに咆哮の源へと近付いていく。
青竜と思わしき声は鼓膜が破けそうなほどに大きいが、それでもまだその姿は確認出来なかった。
「移動しているのか?」
隣を行くユーリスが、辺りを見回しながらぼやく。キラが眉間に皺を寄せながら答えた。
「攻撃の音が聞こえなくなりました。【マグナム】が尽きたところで、逃げたのかもしれません」
「この森は移動速度は維持出来るが、見失いやすいという難点もあるからなあ」
移動は楽だが視界は悪い。逃げる方に有利な状況なのか、とマーリカは納得した。
二人がぼやいている間にも、先程とは反対の方面からドオオオオン! という爆音が聞こえてくる。バキバキと木が倒れる音が続いているので、【マグナム】による攻撃ではない様だ。
尻尾で薙ぎ倒したのか、はたまた水撃で倒したのかもしれない。
それにしても、見えない。マーリカの視界は、キラの背中で奪われてしまっている。
マーリカが横から顔を出そうとすると、キラが人の頭を押し戻した。対令嬢とは考えられない所業である。
「ちょっとキラ! 前が見えないわ!」
「危ないですから前に出ちゃダメですよ」
子供に言い聞かせる様な声色で言われ、カチンときた。
「見えない方が危ないわよ!」
「お転婆娘は後ろ下がっててって言ってるんです」
「お転婆娘なんかじゃないわ!」
「……はあー」
小声で言い争いをしていると、生ぬるい横目で二人を眺めていたユーリスが前方に目を向け、ハッと息を呑む。
「なんだあれは……!」
唾を嚥下するごくりという音が、やけにはっきりと響いた。
「まさか、あれが……?」
「え?」
キラがマーリカと共に、ユーリスの元へと駆け寄る。
「あれは……!」
ユーリスが身を隠していた木の先に見えたのは、真っ黒な闇だった。何もない空間に、突如として洞窟の様にも見える闇がぽっかりと口を開けている。
「随分と大きいわね……!」
「あっ、また顔を出して! 危ないでしょ!」
キラの脇から顔を覗かせたマーリカの頭を引っ込めさせようとキラの手が伸びて来たが、マーリカはサッと避けてユーリスの横に移動した。「お嬢!」というキラの言葉は、今は流すことにする。
ユーリスが、そんなマーリカに問いかけた。心なしか、顔が青ざめている様に見える。
「マーリカ嬢。あれが魔泉、なのか?」
初めて見る魔泉の禍々しさに、思わず呑まれてしまったのかもしれない。マーリカもキラも、そういう意味では魔泉は多少見慣れている感があるので、うわあとは思うものの、慄くことはもうなかった。
マーリカはこくりと頷く。
「はい。ムーンシュタイナー領の湖に沈むものと、色も形も同じなのでそうだと思います」
球体の様にも見える闇は、直径が人の背丈の三倍はあろうかという大きさだ。
ようやくマーリカの腕を掴むことに成功したキラが、マーリカの頭を押し下げながら補足する。
「ムーンシュタイナー領の魔泉は、あの半分以下の大きさなんです。こんな馬鹿でかくなるまで穴を広げたなんて、どれだけなんですかね」
ああ、とユーリスが魔泉を見つめ続けたまま言った。
「まあ……悪意がなけりゃ、他国にこんな穴を開けようなんて普通の神経の奴は思わないだろうな」
「本当傍迷惑な奴らですよ」
どうせやるなら自国でやってくれ、とでも言いたいのだろう。
「で……。肝心の青竜はどこだ?」
ユーリスの問いに、魔泉の周辺を警戒していた討伐隊の兵に状況確認していたアーガスが、駆け寄って答えた。
「あちらに逃げ出した模様です。魔具の火属性の攻撃を受けかなり負傷していており、行動に一貫性がなく予測が立てにくいと」
「一貫性がない? どういうことだ」
キラの問いに、「はっ!」とアーガスが畏まりつつ報告を続ける。
「頭は魔泉を向くのですが、身体が魔泉から離れようとしている様にしか見えなかった、と」
何かに藻掻き苦しむ様に首や身体をくねらせ、口から水撃を放っていたという。丁度【マグナム】が切れたこともあり、深追いはせず付かず離れずの距離を保っているらしかった。
それを聞いて、マーリカは思わず手で口を押さえた。青竜が人には不可解な行動を取った意味が、恐らくだが分かってしまったからだ。
キラも同様に気付いたのだろう。憐れむ様な眼差しで魔泉を見た後、手を乗せたままだったマーリカの頭を自分に引き寄せた。
憐れみを含んだ声を出す。
「……帰りたがっているんですね」
「枷の所為で、帰れないんだわ……!」
「やはりそうみたいですね。酷いことをするものだ」
本来、竜はそこまで無差別に人を襲う様な魔物ではない。そもそも脆弱な人を敵と認識していない可能性もあったが、元々はもっと自由で超越した生き物なのだ。
それを、核に枷を付けることで操っている。竜としての尊厳があるかも不明だが、彼らにとって心地よい状況とはとてもではないが言えないだろう。
そもそも、青竜に人間と戦う意志があるかすら怪しい。
マーリカの脳裏に、ムーンシュタイナー領に落ち、悲鳴に近い炎を吐きながら朽ちていった黒竜の姿が浮かび上がった。
いやだ、もういやだ。そう言っている様に思えた、黒竜の咆哮。あんなものは、もう二度と聞きたくなかった。
苦しんでのたうち回る黒竜を、そのままにすることは当然出来なかった。ムーンシュタイナー領を、家族や仲間を守ろうと必死だった。
だが、あの後味の悪さはマーリカの胸にずっと残っていたのだ。
あの黒竜はもう存在せず、鱗は魔魚となりムーンシュタイナー領を潤してくれている。恩恵に預かっている以上、倒したくなかったなどという甘えた考えは捨てるべきだと、マーリカは今も思っている。
だけど。
「……帰してあげたいの」
「お嬢……」
不思議そうに見下ろすユーリスと、何かを察したかの様なキラを見上げた。
「青竜は、沢山の人を傷付けたかもしれないわ。でも――」
マーリカが次の言葉を紡ぐ前に、キラがマーリカの頭に口を付けて言う。
「ええ、帰してあげましょ」
「……っ! ありがとう、キラ……っ」
目を潤ませながらマーリカがキラを見上げると、キラが仕方ないなあといった様に苦笑した。
「ただ、出来るという保証は出来ないですよ。危険過ぎる場合は、人命を優先します」
マーリカにだって、優先順位は分かる。一番重要なのは、自領を侵されたメイテールに平穏を取り戻すことだ。当然人命が最優先だし、その為なら帰してあげたいという希望も捨てざるを得ない。
「となると、やはり枷を外すのが一番手っ取り早そうですね」
「そうね、そうするしかないと思うわ」
だが、枷とは一体どんなものなのか。それが分からないことには、対処のしようもなかった。
キラが、ギリ、と奥歯を噛む。
「……進みましょう」
キラは詰まった様な息を吐くと、背後で待機していた兵たちに無言で合図を送った。キラの合図と共に、歩兵がなるべく音を立てない様に静かに青竜が暴れている場所へと向かう。
キラとユーリスの背中に庇われる様にして暫く進むと、やがて幹の途中から折れて倒れた木々に道を阻まれる様になってきた。土と落ち葉の絨毯となっている地面は所々がぬかるんでおり、小川の様な流れがある箇所もある。
互いに目で合図を送り歩を進めていると、すぐ近くから「グオオオ……ッ」というやや苦しそうな獣の声が聞こえてきた。もうすぐそこにいるのだ。
緊張を隠せないまま、マーリカはキラに手を引かれ、倒れた大木の合間を通り抜けていく。
「……あれは……っ」
円形に倒れた大木の中心に大きな水たまりが出来ていた。その中心に、横たわり苦しそうに首を振る青竜がいる。
身体は荷馬車三台分程度といったところで、ムーンシュタイナー領にやってきた黒龍に比べると、遥かに小さい。まだ子供の個体なのかもしれなかった。
「そういうことか……!」
キラが忌々しげに呟く。マーリカも同じことを思っていた。
青龍の心臓付近には、赤く輝く紋様が浮き上がっていたのだ。あれが枷だろう。
かはあ、と青竜が苦しそうに口から水を吐く。吹き出された水からは、熱そうな湯気が立ち昇っていた。
「反対属性……!」
魔物の核に付けられた枷。それは、対象物の反対属性が組み込まれた魔法陣で核を支配するものだった。
青竜と思わしき声は鼓膜が破けそうなほどに大きいが、それでもまだその姿は確認出来なかった。
「移動しているのか?」
隣を行くユーリスが、辺りを見回しながらぼやく。キラが眉間に皺を寄せながら答えた。
「攻撃の音が聞こえなくなりました。【マグナム】が尽きたところで、逃げたのかもしれません」
「この森は移動速度は維持出来るが、見失いやすいという難点もあるからなあ」
移動は楽だが視界は悪い。逃げる方に有利な状況なのか、とマーリカは納得した。
二人がぼやいている間にも、先程とは反対の方面からドオオオオン! という爆音が聞こえてくる。バキバキと木が倒れる音が続いているので、【マグナム】による攻撃ではない様だ。
尻尾で薙ぎ倒したのか、はたまた水撃で倒したのかもしれない。
それにしても、見えない。マーリカの視界は、キラの背中で奪われてしまっている。
マーリカが横から顔を出そうとすると、キラが人の頭を押し戻した。対令嬢とは考えられない所業である。
「ちょっとキラ! 前が見えないわ!」
「危ないですから前に出ちゃダメですよ」
子供に言い聞かせる様な声色で言われ、カチンときた。
「見えない方が危ないわよ!」
「お転婆娘は後ろ下がっててって言ってるんです」
「お転婆娘なんかじゃないわ!」
「……はあー」
小声で言い争いをしていると、生ぬるい横目で二人を眺めていたユーリスが前方に目を向け、ハッと息を呑む。
「なんだあれは……!」
唾を嚥下するごくりという音が、やけにはっきりと響いた。
「まさか、あれが……?」
「え?」
キラがマーリカと共に、ユーリスの元へと駆け寄る。
「あれは……!」
ユーリスが身を隠していた木の先に見えたのは、真っ黒な闇だった。何もない空間に、突如として洞窟の様にも見える闇がぽっかりと口を開けている。
「随分と大きいわね……!」
「あっ、また顔を出して! 危ないでしょ!」
キラの脇から顔を覗かせたマーリカの頭を引っ込めさせようとキラの手が伸びて来たが、マーリカはサッと避けてユーリスの横に移動した。「お嬢!」というキラの言葉は、今は流すことにする。
ユーリスが、そんなマーリカに問いかけた。心なしか、顔が青ざめている様に見える。
「マーリカ嬢。あれが魔泉、なのか?」
初めて見る魔泉の禍々しさに、思わず呑まれてしまったのかもしれない。マーリカもキラも、そういう意味では魔泉は多少見慣れている感があるので、うわあとは思うものの、慄くことはもうなかった。
マーリカはこくりと頷く。
「はい。ムーンシュタイナー領の湖に沈むものと、色も形も同じなのでそうだと思います」
球体の様にも見える闇は、直径が人の背丈の三倍はあろうかという大きさだ。
ようやくマーリカの腕を掴むことに成功したキラが、マーリカの頭を押し下げながら補足する。
「ムーンシュタイナー領の魔泉は、あの半分以下の大きさなんです。こんな馬鹿でかくなるまで穴を広げたなんて、どれだけなんですかね」
ああ、とユーリスが魔泉を見つめ続けたまま言った。
「まあ……悪意がなけりゃ、他国にこんな穴を開けようなんて普通の神経の奴は思わないだろうな」
「本当傍迷惑な奴らですよ」
どうせやるなら自国でやってくれ、とでも言いたいのだろう。
「で……。肝心の青竜はどこだ?」
ユーリスの問いに、魔泉の周辺を警戒していた討伐隊の兵に状況確認していたアーガスが、駆け寄って答えた。
「あちらに逃げ出した模様です。魔具の火属性の攻撃を受けかなり負傷していており、行動に一貫性がなく予測が立てにくいと」
「一貫性がない? どういうことだ」
キラの問いに、「はっ!」とアーガスが畏まりつつ報告を続ける。
「頭は魔泉を向くのですが、身体が魔泉から離れようとしている様にしか見えなかった、と」
何かに藻掻き苦しむ様に首や身体をくねらせ、口から水撃を放っていたという。丁度【マグナム】が切れたこともあり、深追いはせず付かず離れずの距離を保っているらしかった。
それを聞いて、マーリカは思わず手で口を押さえた。青竜が人には不可解な行動を取った意味が、恐らくだが分かってしまったからだ。
キラも同様に気付いたのだろう。憐れむ様な眼差しで魔泉を見た後、手を乗せたままだったマーリカの頭を自分に引き寄せた。
憐れみを含んだ声を出す。
「……帰りたがっているんですね」
「枷の所為で、帰れないんだわ……!」
「やはりそうみたいですね。酷いことをするものだ」
本来、竜はそこまで無差別に人を襲う様な魔物ではない。そもそも脆弱な人を敵と認識していない可能性もあったが、元々はもっと自由で超越した生き物なのだ。
それを、核に枷を付けることで操っている。竜としての尊厳があるかも不明だが、彼らにとって心地よい状況とはとてもではないが言えないだろう。
そもそも、青竜に人間と戦う意志があるかすら怪しい。
マーリカの脳裏に、ムーンシュタイナー領に落ち、悲鳴に近い炎を吐きながら朽ちていった黒竜の姿が浮かび上がった。
いやだ、もういやだ。そう言っている様に思えた、黒竜の咆哮。あんなものは、もう二度と聞きたくなかった。
苦しんでのたうち回る黒竜を、そのままにすることは当然出来なかった。ムーンシュタイナー領を、家族や仲間を守ろうと必死だった。
だが、あの後味の悪さはマーリカの胸にずっと残っていたのだ。
あの黒竜はもう存在せず、鱗は魔魚となりムーンシュタイナー領を潤してくれている。恩恵に預かっている以上、倒したくなかったなどという甘えた考えは捨てるべきだと、マーリカは今も思っている。
だけど。
「……帰してあげたいの」
「お嬢……」
不思議そうに見下ろすユーリスと、何かを察したかの様なキラを見上げた。
「青竜は、沢山の人を傷付けたかもしれないわ。でも――」
マーリカが次の言葉を紡ぐ前に、キラがマーリカの頭に口を付けて言う。
「ええ、帰してあげましょ」
「……っ! ありがとう、キラ……っ」
目を潤ませながらマーリカがキラを見上げると、キラが仕方ないなあといった様に苦笑した。
「ただ、出来るという保証は出来ないですよ。危険過ぎる場合は、人命を優先します」
マーリカにだって、優先順位は分かる。一番重要なのは、自領を侵されたメイテールに平穏を取り戻すことだ。当然人命が最優先だし、その為なら帰してあげたいという希望も捨てざるを得ない。
「となると、やはり枷を外すのが一番手っ取り早そうですね」
「そうね、そうするしかないと思うわ」
だが、枷とは一体どんなものなのか。それが分からないことには、対処のしようもなかった。
キラが、ギリ、と奥歯を噛む。
「……進みましょう」
キラは詰まった様な息を吐くと、背後で待機していた兵たちに無言で合図を送った。キラの合図と共に、歩兵がなるべく音を立てない様に静かに青竜が暴れている場所へと向かう。
キラとユーリスの背中に庇われる様にして暫く進むと、やがて幹の途中から折れて倒れた木々に道を阻まれる様になってきた。土と落ち葉の絨毯となっている地面は所々がぬかるんでおり、小川の様な流れがある箇所もある。
互いに目で合図を送り歩を進めていると、すぐ近くから「グオオオ……ッ」というやや苦しそうな獣の声が聞こえてきた。もうすぐそこにいるのだ。
緊張を隠せないまま、マーリカはキラに手を引かれ、倒れた大木の合間を通り抜けていく。
「……あれは……っ」
円形に倒れた大木の中心に大きな水たまりが出来ていた。その中心に、横たわり苦しそうに首を振る青竜がいる。
身体は荷馬車三台分程度といったところで、ムーンシュタイナー領にやってきた黒龍に比べると、遥かに小さい。まだ子供の個体なのかもしれなかった。
「そういうことか……!」
キラが忌々しげに呟く。マーリカも同じことを思っていた。
青龍の心臓付近には、赤く輝く紋様が浮き上がっていたのだ。あれが枷だろう。
かはあ、と青竜が苦しそうに口から水を吐く。吹き出された水からは、熱そうな湯気が立ち昇っていた。
「反対属性……!」
魔物の核に付けられた枷。それは、対象物の反対属性が組み込まれた魔法陣で核を支配するものだった。
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