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45 それぞれのやるべきことへ
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ユーリス率いる兵団は、明日王都を出てメイテール領に向けて出発することになっている。その為ユーリスは一旦は王都に戻り、ムーンシュタイナー卿と共に再度国王に謁見を求めることになった。
「はたして国王は、お会いしてくれるだろうか」
不安そうに呟いたユーリスに、ムーンシュタイナー卿はアハハと笑ってみせる。
「なあに、会う気がなくとも会わずにはいられない様にするまでだよ」
「何故そんなことが断言出来る? ――貴殿は一体何者だ?」
ユーリスが思わず尋ねてしまったのも、無理はないだろう。一介の男爵と国王など、大した接点があるとも思えない。
ムーンシュタイナー卿は、あくまで優しげな笑みを浮かべた。
「いやいや、僕はしがない男爵に過ぎませんよ。ただ、たまたま寄宿学校時代に今の国王と学年が一緒で、未来の僕の愛しい妻に、婚約者がある身で言い寄っておられた殿下がやらかしたアレコレを知っているだけで」
「アレコレってなんですか」
呆れ顔で尋ねたキラに、ムーンシュタイナー卿は清々しい笑顔で答える。
「んー? 僕を肥溜めにはめようとして自分がはまっちゃって僕に泣いて助けを求めたこととか?」
「うわ……」
サイファの顔が歪んだ。
「ああ、当時はもう少し魔法も実践的な試験があってね、その試験で魔物がいる森に遠征に行った時、現れた魔物に襲われてちびっちゃって、でもよく見たらスライムだったとか?」
それを僕の未来の妻に見られちゃってねえ、と嬉しそうに笑うムーンシュタイナー卿を見て、ユーリスの顔色が青白くなる。
「ま、待ってくれムーンシュタイナー卿。まさかそれを謁見の際本人に言うつもりではないだろうな?」
「いやあ、僕は善良な国民のひとりだから、まさかそんなことは臣下の人たちの前じゃあ言わないって!」
「だ、だよな」
ユーリスはほっと胸を撫で下ろしたが、これで終わりではなかった。
「実はね、僕と妻が結婚した後も、妾になれってしっつこい恋文を送ってきてたんだよね! 自分はとっくに結婚して王妃様もいるっていうのにねえ」
「え……」
ユーリスの顔色がまた白くなった。
「それがさ、毎回あまりにも自分勝手でお花畑な詩になっていてね。しかも誤字脱字だらけで、こりゃあ酷いってことで、妻が返した素っ気なさすぎる返信の写しと一緒に保管してあるんだよね」
「……」
キラの呆れ顔が、更に呆れたものへと変わる。対照的に、ムーンシュタイナー卿はすごく楽しそうだ。おそらくは、本気で楽しんでいるのだろう。自分の父親がそういう人なのは、マーリカはよく知っていた。
「だから本当に首が回らなくなっていよいよってなった時は、全く噛み合ってない温度差の激しい手紙のやり取りを一冊の暴露本にして資金にしようかなあなんて思ってねえ。出版社への持ち込み用にその出だしの部分の写しを作ってる最中だったから、国王に見せたらどういう反応するのかなって」
「いっつもこっそり何か書いてると思ったら、そんなことしてたんですか」
キラが溜息混じりに問いかけると、ムーンシュタイナー卿はにっこりと笑った。
「備えあれば憂いなしっていうじゃないか。今回、十分に役立ちそうだし」
「この人本気か」
キラの呆れたツッコミには、ムーンシュタイナー卿は一切反応を示さなかった。都合の悪いことは聞こえなかったことに出来る、素晴らしい耳の持ち主なのだ。
ムーンシュタイナー卿は、キラに向き直ると穏やかな笑みを浮かべる。
「キラ、任せたよ」
何を、までは言わなかった。キラもあえて聞かず、静かに頭を下げる。
「必ずや」
「命が一番大事だからね。逃げるのは卑怯なことじゃないから、それだけ忘れない様に」
「ムーンシュタイナー卿……」
ムーンシュタイナーは、次にマーリカに向き直った。
「……ま、君が止まる訳ないよね」
「お父様に似ましたの」
しれっと答えるマーリカを、ムーンシュタイナー卿はそっと抱き寄せる。
「……本当は行かせたくないんだよ」
「ええ、分かってます」
マーリカの頭を撫でる手は、間違いなく父親の手だった。日頃どんなにふざけていても、怠けていても、ムーンシュタイナー卿は長年この領地を守ってきた立派な領主なのだ。
ムーンシュタイナー卿が、こっそりと耳打ちする。
「マーリカ。時間が出来たら、『条件』とは何かをキラに聞いてみるといい」
「え」
そういえば、この前も条件がどうのとムーンシュタイナー卿とキラが話していたかもしれない。仕事に関する話かと思っていたが違うのか、とマーリカが思っていると、ムーンシュタイナー卿は更に続けた。
「もう大体揃った、と僕は見てるから」
「ええと……?」
「君の口からキラに伝えておいてくれるかな?」
ムーンシュタイナー卿はマーリカを離すと、片目を小さく瞑っていたずらがバレた時の様な表情を浮かべる。
「――君に武運があらんことを」
「……お父様も」
マーリカは、今度は自分からムーンシュタイナー卿の細めの胸に抱きついた。
親子の暫しの別れをしんみりとした様子で眺めていたサイファが、ユーリスとキラに顔を向ける。
「俺は一旦国に帰ろうと思っていたが、その前にちょっくら寄り道することにした」
「寄り道、ですか?」
不思議そうな顔のユーリスに、サイファはニカッと笑ってみせた。
「その内合流する。絶対に逃げはしないから、それだけは忘れないでくれ」
「――畏まりました」
深々と頭を垂れたユーリスが次に顔を上げた時には、先程まであった悲壮感は消え失せていた。
一同をぐるりと見渡しながら、キラが言う。
「では兄様、我々も支度します。メイテール領主城にて会いましょう」
「うむ。――さ、ムーンシュタイナー卿、参りましょうか」
「そうですね」
ムーンシュタイナー卿とユーリスは大した準備も必要ない為、国王に買わせる気満々の魔魚製品を見せる為に掻き集めると、先に城を出て行った。マーリカも、自身の支度をする為に一旦自室へと戻る。
「キラ」
サイファが、支度を始めようとしていたキラを呼び止める。
「……なんだ」
相変わらず、キラのサイファを見る目は愛想がない。
サイファはいつになく真剣な表情になった。
「マーリカに怪我させるなよ」
「お前に言われるまでもない」
「お前がいなくなったら、俺がマーリカをもらう」
「……なんだと」
ギロリと睨むと、サイファがにやりと笑う。
「嫌ならせいぜい頑張れよ」
「ちっ……お前もな」
キラの言葉に、サイファは目を大きくした。それを見たキラが、実に嫌そうに顔を歪ませる。
「なんだ。腹が立つぞ、その顔」
「お前、ほんっと口悪いよなあ……」
「素直だと言ってくれ」
キラがツンとしたまま返すと、サイファは破顔してキラの銀髪の天辺をぐしゃぐしゃにしてしまった。
「なにするんだ!」
「武運を祈ってるぞ、キラ」
「……ああ。お前もな」
サイファが拳を突き出すと、キラもそこにゴツンと拳を当てる。互いに目を合わせると、キラは小さく、サイファは大きく笑った。
「さあー! いっちょやるか!」
「なるべく早くやれよ。分かってるな」
「はいはい、分かってるって」
二人は互いに背を向けると、大切なものを守るべく、各々の役目がある場所へと向かうのだった。
「はたして国王は、お会いしてくれるだろうか」
不安そうに呟いたユーリスに、ムーンシュタイナー卿はアハハと笑ってみせる。
「なあに、会う気がなくとも会わずにはいられない様にするまでだよ」
「何故そんなことが断言出来る? ――貴殿は一体何者だ?」
ユーリスが思わず尋ねてしまったのも、無理はないだろう。一介の男爵と国王など、大した接点があるとも思えない。
ムーンシュタイナー卿は、あくまで優しげな笑みを浮かべた。
「いやいや、僕はしがない男爵に過ぎませんよ。ただ、たまたま寄宿学校時代に今の国王と学年が一緒で、未来の僕の愛しい妻に、婚約者がある身で言い寄っておられた殿下がやらかしたアレコレを知っているだけで」
「アレコレってなんですか」
呆れ顔で尋ねたキラに、ムーンシュタイナー卿は清々しい笑顔で答える。
「んー? 僕を肥溜めにはめようとして自分がはまっちゃって僕に泣いて助けを求めたこととか?」
「うわ……」
サイファの顔が歪んだ。
「ああ、当時はもう少し魔法も実践的な試験があってね、その試験で魔物がいる森に遠征に行った時、現れた魔物に襲われてちびっちゃって、でもよく見たらスライムだったとか?」
それを僕の未来の妻に見られちゃってねえ、と嬉しそうに笑うムーンシュタイナー卿を見て、ユーリスの顔色が青白くなる。
「ま、待ってくれムーンシュタイナー卿。まさかそれを謁見の際本人に言うつもりではないだろうな?」
「いやあ、僕は善良な国民のひとりだから、まさかそんなことは臣下の人たちの前じゃあ言わないって!」
「だ、だよな」
ユーリスはほっと胸を撫で下ろしたが、これで終わりではなかった。
「実はね、僕と妻が結婚した後も、妾になれってしっつこい恋文を送ってきてたんだよね! 自分はとっくに結婚して王妃様もいるっていうのにねえ」
「え……」
ユーリスの顔色がまた白くなった。
「それがさ、毎回あまりにも自分勝手でお花畑な詩になっていてね。しかも誤字脱字だらけで、こりゃあ酷いってことで、妻が返した素っ気なさすぎる返信の写しと一緒に保管してあるんだよね」
「……」
キラの呆れ顔が、更に呆れたものへと変わる。対照的に、ムーンシュタイナー卿はすごく楽しそうだ。おそらくは、本気で楽しんでいるのだろう。自分の父親がそういう人なのは、マーリカはよく知っていた。
「だから本当に首が回らなくなっていよいよってなった時は、全く噛み合ってない温度差の激しい手紙のやり取りを一冊の暴露本にして資金にしようかなあなんて思ってねえ。出版社への持ち込み用にその出だしの部分の写しを作ってる最中だったから、国王に見せたらどういう反応するのかなって」
「いっつもこっそり何か書いてると思ったら、そんなことしてたんですか」
キラが溜息混じりに問いかけると、ムーンシュタイナー卿はにっこりと笑った。
「備えあれば憂いなしっていうじゃないか。今回、十分に役立ちそうだし」
「この人本気か」
キラの呆れたツッコミには、ムーンシュタイナー卿は一切反応を示さなかった。都合の悪いことは聞こえなかったことに出来る、素晴らしい耳の持ち主なのだ。
ムーンシュタイナー卿は、キラに向き直ると穏やかな笑みを浮かべる。
「キラ、任せたよ」
何を、までは言わなかった。キラもあえて聞かず、静かに頭を下げる。
「必ずや」
「命が一番大事だからね。逃げるのは卑怯なことじゃないから、それだけ忘れない様に」
「ムーンシュタイナー卿……」
ムーンシュタイナーは、次にマーリカに向き直った。
「……ま、君が止まる訳ないよね」
「お父様に似ましたの」
しれっと答えるマーリカを、ムーンシュタイナー卿はそっと抱き寄せる。
「……本当は行かせたくないんだよ」
「ええ、分かってます」
マーリカの頭を撫でる手は、間違いなく父親の手だった。日頃どんなにふざけていても、怠けていても、ムーンシュタイナー卿は長年この領地を守ってきた立派な領主なのだ。
ムーンシュタイナー卿が、こっそりと耳打ちする。
「マーリカ。時間が出来たら、『条件』とは何かをキラに聞いてみるといい」
「え」
そういえば、この前も条件がどうのとムーンシュタイナー卿とキラが話していたかもしれない。仕事に関する話かと思っていたが違うのか、とマーリカが思っていると、ムーンシュタイナー卿は更に続けた。
「もう大体揃った、と僕は見てるから」
「ええと……?」
「君の口からキラに伝えておいてくれるかな?」
ムーンシュタイナー卿はマーリカを離すと、片目を小さく瞑っていたずらがバレた時の様な表情を浮かべる。
「――君に武運があらんことを」
「……お父様も」
マーリカは、今度は自分からムーンシュタイナー卿の細めの胸に抱きついた。
親子の暫しの別れをしんみりとした様子で眺めていたサイファが、ユーリスとキラに顔を向ける。
「俺は一旦国に帰ろうと思っていたが、その前にちょっくら寄り道することにした」
「寄り道、ですか?」
不思議そうな顔のユーリスに、サイファはニカッと笑ってみせた。
「その内合流する。絶対に逃げはしないから、それだけは忘れないでくれ」
「――畏まりました」
深々と頭を垂れたユーリスが次に顔を上げた時には、先程まであった悲壮感は消え失せていた。
一同をぐるりと見渡しながら、キラが言う。
「では兄様、我々も支度します。メイテール領主城にて会いましょう」
「うむ。――さ、ムーンシュタイナー卿、参りましょうか」
「そうですね」
ムーンシュタイナー卿とユーリスは大した準備も必要ない為、国王に買わせる気満々の魔魚製品を見せる為に掻き集めると、先に城を出て行った。マーリカも、自身の支度をする為に一旦自室へと戻る。
「キラ」
サイファが、支度を始めようとしていたキラを呼び止める。
「……なんだ」
相変わらず、キラのサイファを見る目は愛想がない。
サイファはいつになく真剣な表情になった。
「マーリカに怪我させるなよ」
「お前に言われるまでもない」
「お前がいなくなったら、俺がマーリカをもらう」
「……なんだと」
ギロリと睨むと、サイファがにやりと笑う。
「嫌ならせいぜい頑張れよ」
「ちっ……お前もな」
キラの言葉に、サイファは目を大きくした。それを見たキラが、実に嫌そうに顔を歪ませる。
「なんだ。腹が立つぞ、その顔」
「お前、ほんっと口悪いよなあ……」
「素直だと言ってくれ」
キラがツンとしたまま返すと、サイファは破顔してキラの銀髪の天辺をぐしゃぐしゃにしてしまった。
「なにするんだ!」
「武運を祈ってるぞ、キラ」
「……ああ。お前もな」
サイファが拳を突き出すと、キラもそこにゴツンと拳を当てる。互いに目を合わせると、キラは小さく、サイファは大きく笑った。
「さあー! いっちょやるか!」
「なるべく早くやれよ。分かってるな」
「はいはい、分かってるって」
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