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44 マーリカの推測
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これまで自国に起きた事柄について口を閉ざしていたサイファが、全容を語り終えた。
「――ということだ。何か聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてほしい」
真剣な面持ちのユーリスは、サイファに向き直ると深々と頭を下げる。
「サイファール殿下。言いにくいことも多々あったでしょう。ご協力いただき誠に感謝致します」
サイファはユーリスの肩に手を置くと、すぐに起こした。
「いや……我が国があの双子を舐めていたのが原因だ。都合の悪いことを黙っているのが国の方針ならば、そんな国家は近い内に滅びへの道を歩むだろう」
確かにそうだろう、とマーリカは頷いた。黒竜が落ちてきたことは、偶然で済ませられた。だが今回のメイテール領への襲撃は、明らかに意図的に引き起こされている。
サイファが実害を受けているメイテール領の子息に対し真実を告げた以上、ゴルゴア王国も、指示していた帝国メグダボルの双子皇子も、言い逃れが出来ないところまで来てしまったのだ。
ユーリスは顔を上げると、厳しい顔つきで一同を見渡す。
「何故我が領に突然巨大な魔物が大量に出現したのか、原因が判明したのは大きい。今暴れている魔物を退治したとしても、次々に魔泉から魔物が湧いて出る……ということですね?」
サイファは、重苦しい表情で頷いた。
キラは眉間に皺を寄せつつ、腕を組んで唸る。
「だがそうすると、魔物を食い止めながら、魔泉を封じる手立てを考えないといけないぞ」
キラと同じ様に、ユーリスも腕を組んで唸った。そうして並んでいると、顔はちっとも似ていないのに、雰囲気がよく似ている。やはりユーリスとキラは兄弟なのだ、とマーリカは今更ながらに思った。ユーリスはとっくに気付いていた様だし、ムーンシュタイナー卿に至ってはキラの正体をそもそも知っていた節があるが。
もしかして何も気付いていなかったのは自分だけだったのでは。鈍感だと時折言われることはあったが、マーリカは自分が鈍感だとは思っていなかった。だが、これは鈍感であるという証明になるのかもしれない。……自分は「鈍感かもしれない」という認識に少しだけ格上げしよう、とマーリカはひっそりと思った。それが格上げかどうかは別の問題として。
「国王に直談判してみるしかないが……それだけの規模の魔泉だと、封印出来る魔導士の数も少ないだろう」
「メイテール領の有事の報告は、当然もういってますよね?」
ムーンシュタイナー卿が相変わらずゆったりとした雰囲気で尋ねると、ユーリスは厳しい表情で頷いた。
「ああ。だが、国王は国軍は派兵したくないと仰ってな。騎士団は王都を守れと仰せだ」
「は……?」
ムーンシュタイナー卿が、ぱっかりと口を開ける。ウィスロー王国で言う国軍は、騎士団のことを指す。騎士団員が各兵団の長と定められており、各兵団の兵を含めて国軍と定義されていた。つまり、騎士団が王都を守るという意味は、国軍をメイテール領に派兵しないということだ。
「国王は何を言ってるんだい……?」
本来ならば不敬にあたる言葉だが、誰もムーンシュタイナー卿を責めはしなかった。口に出さないだけで、この場にいる全員が同じことを思っていたからだ。
国の有事に国軍を派兵しない。あり得ない内容に、ユーリスは悲しそうに首を振った。
「各領の地方軍に協力は要請するとは約束して下さったが、あくまで有志なので期待は出来ないだろうな。誰も勅命でない限り、自領の人間を戦いで失いたくはないのだから」
だが、とユーリスは続ける。
「辛うじて俺の軍だけは連れて行くことを許可いただいた。それと、物資の支給も約束いただいた」
「おい、たったそれだけで化け物と戦うつもりなのか!? いくらなんでも無謀だぞ!」
他国の人間である筈のサイファが、ユーリスに掴みかかった。だが、ユーリスは覚悟を決めているのか、サイファを真っ直ぐに見返す。
「分かっている。だが、もうこれで手を打つしかなかった。なので、妻には離縁状を書いて渡してきた」
「え……おい、嘘だろ」
驚愕の表情を浮かべたキラも、ユーリスに詰め寄った。
「アリアを守るんじゃなかったのかよ!」
「守る為だ!」
ユーリスが怒鳴り返す。
「アリアの後見は騎士団長に頼んできた。あの方なら、公爵の様なアホに嫁がせる様な真似はしないだろうからな」
「待て……待て、何故死ぬ覚悟をしている!」
「俺とて死にたくはない!」
ギリ、とユーリスの奥歯が音を立てた。
「自分の子の顔も見ずに死ねるか! だが、だが……っ! お前のことすら巻き込まなければならないほど、メイテールは追い詰められているのだ……!」
ここまでマーリカは、ずっと無言を通してきた。気圧されたのではない。必死で考えていたのだ。打破出来る方法がないかと。
そして。
「――あっ」
ぽん、と手を叩いた。あった。絶対とは言えないし、やってみて駄目だったという可能性もある。だが、やってみる価値はあるのではないか。
「……お嬢?」
キラが不審げな表情でマーリカを振り返った。「こいつまた変なことを思いついたな」と思っている顔であることは、これまでの経験から知っている。これくらいは、マーリカだって読めるのだ。
「私が作った【マグナム】は魔物によく効くのよね?」
「……まああの大蛇が一撃だったからな」
サイファが頷く。
「ということは、【マグナム】を大量に提供すれば今いる魔物は退治出来ます」
「ふむ」
マーリカの言葉に、ユーリスは顎に手をあてた。
「ちょっと待てお嬢、何考えて……」
キラがすかさず止めに入ったが、ここで止められたらマーリカの目的は達成出来ない。マーリカはキラの言葉を遮り、先を続けた。
「次の問題は、魔泉です。出来れば封印を施してもらうのが一番いいでしょう。だけど、もし広がった魔泉を縮小出来るとしたら、持ち堪えられる可能性が高くなるのではないでしょうか」
「縮小? しかし一体どうやって」
ユーリスが片眉を上げる。
「私は、ずっと考えていたのです」
マーリカは、胸の前で拳をふたつ握り締めた。男四人の視線を一身に受けながら、おっとりとした顔をきりりとさせる。
「何故魔泉が出来てしまったのかを。サイファの話では、あの黒竜は火の属性を付与した枷を付けられた核を持つ魔物ということです」
「あ、ああ……?」
マーリカの話が見えないのか、サイファは首を傾げる。
「私の考えが正しければ、反対の属性魔法が核まで届いた時に、そこに無属性の地場か何かが発生してしまったのではないでしょうか。それが魔界への接点となってしまったのでは」
「なるほど、一理あるな」
ユーリスが頷いた。
「もしかしたら、最初の魔泉はごく小さなよくある物だったのかもしれません。普段そこらにいる魔物も魔泉から発生しているのならば、魔物退治の際に反対の属性をぶつけ合うと魔泉の子供が生まれるのではないかと。ですが、作られた後に闇属性を足されないが為に大きくならない」
「ふむ。続けてくれ」
ユーリスが段々と前のめりになってくる。サイファとキラも完全にマーリカに向き直ると、マーリカを真剣な目で見た。
「たまたま繋がったりして大きくなった物から、魔物が出てくる。そう考えると、今回黒竜が沈んだ所に大きな魔泉が出来た理由は、私の魔力に付いている特性――爆発の所為だったのではないかと思います」
「何でも爆発させるもんなあ」
サイファが小さく笑う。マーリカは小さく頷いて見せた。
「双子の皇子がやったことは、小さな魔泉を人為的に発生させて、闇の魔具を使って広げることなのでは。そこで、一度作り出した魔泉が闇属性で広がるのならば、『聖』の属性で閉じることが出来るのでは? と考えました」
「あ……なるほど!」
ユーリスの顔に、少しずつ色味が戻ってくる。
「それがもし本当ならば、大型の魔物が通れる様な大きな魔泉を小さくするには、大量の聖属性の魔法をぶつけなければなりません。つまり――爆発する聖属性の魔具を使えばいいのでは」
「……確かに、やってみる価値はある。だが、それは無理だろう」
ユーリスの言葉に、マーリカは首を傾げた。
「あら、何故ですの?」
「何故なら、それが出来るのは現状貴女だけだからだ。そんな場所に貴女を連れていける訳が……!」
「あら、私は最初から一緒に行く気ですけど」
「……は? お嬢、ちょっと待って」
キラが唖然とした顔になる。マーリカはにっこりと微笑んだ。
「国王様は物資を支給することを約束したのでしょう? でしたら【マグナム】と魔魚の鱗製の盾と鎧を買っていただければ、ムーンシュタイナー領の再建問題も一気に片付きますしね!」
「おい、この人とんでもねえこと言ってるぞ……」
サイファが思わずといった風に漏らすと、マーリカの肩に手を乗せたムーンシュタイナー卿も、にっこりと笑った。
「瓶詰めもついでに売りつけてくるよ。国王との交渉は僕に任せてくれ、僕のマーリカ」
「ムーンシュタイナー卿……?」
ユーリスが、ぽかんとしてムーンシュタイナー卿を見る。
「うちの領を追い詰めて逃げた奴のやり方には、そろそろ我慢の限界がきていたところなんだよね。この僕に真っ向勝負して勝ち目がないからって、本当意気地なしなんだからなあ」
「え、お父様?」
一体何の話だろうか。マーリカが隣の父親を見上げると、ムーンシュタイナー卿はフフ、と朗らかに笑ったのだった。
「――ということだ。何か聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてほしい」
真剣な面持ちのユーリスは、サイファに向き直ると深々と頭を下げる。
「サイファール殿下。言いにくいことも多々あったでしょう。ご協力いただき誠に感謝致します」
サイファはユーリスの肩に手を置くと、すぐに起こした。
「いや……我が国があの双子を舐めていたのが原因だ。都合の悪いことを黙っているのが国の方針ならば、そんな国家は近い内に滅びへの道を歩むだろう」
確かにそうだろう、とマーリカは頷いた。黒竜が落ちてきたことは、偶然で済ませられた。だが今回のメイテール領への襲撃は、明らかに意図的に引き起こされている。
サイファが実害を受けているメイテール領の子息に対し真実を告げた以上、ゴルゴア王国も、指示していた帝国メグダボルの双子皇子も、言い逃れが出来ないところまで来てしまったのだ。
ユーリスは顔を上げると、厳しい顔つきで一同を見渡す。
「何故我が領に突然巨大な魔物が大量に出現したのか、原因が判明したのは大きい。今暴れている魔物を退治したとしても、次々に魔泉から魔物が湧いて出る……ということですね?」
サイファは、重苦しい表情で頷いた。
キラは眉間に皺を寄せつつ、腕を組んで唸る。
「だがそうすると、魔物を食い止めながら、魔泉を封じる手立てを考えないといけないぞ」
キラと同じ様に、ユーリスも腕を組んで唸った。そうして並んでいると、顔はちっとも似ていないのに、雰囲気がよく似ている。やはりユーリスとキラは兄弟なのだ、とマーリカは今更ながらに思った。ユーリスはとっくに気付いていた様だし、ムーンシュタイナー卿に至ってはキラの正体をそもそも知っていた節があるが。
もしかして何も気付いていなかったのは自分だけだったのでは。鈍感だと時折言われることはあったが、マーリカは自分が鈍感だとは思っていなかった。だが、これは鈍感であるという証明になるのかもしれない。……自分は「鈍感かもしれない」という認識に少しだけ格上げしよう、とマーリカはひっそりと思った。それが格上げかどうかは別の問題として。
「国王に直談判してみるしかないが……それだけの規模の魔泉だと、封印出来る魔導士の数も少ないだろう」
「メイテール領の有事の報告は、当然もういってますよね?」
ムーンシュタイナー卿が相変わらずゆったりとした雰囲気で尋ねると、ユーリスは厳しい表情で頷いた。
「ああ。だが、国王は国軍は派兵したくないと仰ってな。騎士団は王都を守れと仰せだ」
「は……?」
ムーンシュタイナー卿が、ぱっかりと口を開ける。ウィスロー王国で言う国軍は、騎士団のことを指す。騎士団員が各兵団の長と定められており、各兵団の兵を含めて国軍と定義されていた。つまり、騎士団が王都を守るという意味は、国軍をメイテール領に派兵しないということだ。
「国王は何を言ってるんだい……?」
本来ならば不敬にあたる言葉だが、誰もムーンシュタイナー卿を責めはしなかった。口に出さないだけで、この場にいる全員が同じことを思っていたからだ。
国の有事に国軍を派兵しない。あり得ない内容に、ユーリスは悲しそうに首を振った。
「各領の地方軍に協力は要請するとは約束して下さったが、あくまで有志なので期待は出来ないだろうな。誰も勅命でない限り、自領の人間を戦いで失いたくはないのだから」
だが、とユーリスは続ける。
「辛うじて俺の軍だけは連れて行くことを許可いただいた。それと、物資の支給も約束いただいた」
「おい、たったそれだけで化け物と戦うつもりなのか!? いくらなんでも無謀だぞ!」
他国の人間である筈のサイファが、ユーリスに掴みかかった。だが、ユーリスは覚悟を決めているのか、サイファを真っ直ぐに見返す。
「分かっている。だが、もうこれで手を打つしかなかった。なので、妻には離縁状を書いて渡してきた」
「え……おい、嘘だろ」
驚愕の表情を浮かべたキラも、ユーリスに詰め寄った。
「アリアを守るんじゃなかったのかよ!」
「守る為だ!」
ユーリスが怒鳴り返す。
「アリアの後見は騎士団長に頼んできた。あの方なら、公爵の様なアホに嫁がせる様な真似はしないだろうからな」
「待て……待て、何故死ぬ覚悟をしている!」
「俺とて死にたくはない!」
ギリ、とユーリスの奥歯が音を立てた。
「自分の子の顔も見ずに死ねるか! だが、だが……っ! お前のことすら巻き込まなければならないほど、メイテールは追い詰められているのだ……!」
ここまでマーリカは、ずっと無言を通してきた。気圧されたのではない。必死で考えていたのだ。打破出来る方法がないかと。
そして。
「――あっ」
ぽん、と手を叩いた。あった。絶対とは言えないし、やってみて駄目だったという可能性もある。だが、やってみる価値はあるのではないか。
「……お嬢?」
キラが不審げな表情でマーリカを振り返った。「こいつまた変なことを思いついたな」と思っている顔であることは、これまでの経験から知っている。これくらいは、マーリカだって読めるのだ。
「私が作った【マグナム】は魔物によく効くのよね?」
「……まああの大蛇が一撃だったからな」
サイファが頷く。
「ということは、【マグナム】を大量に提供すれば今いる魔物は退治出来ます」
「ふむ」
マーリカの言葉に、ユーリスは顎に手をあてた。
「ちょっと待てお嬢、何考えて……」
キラがすかさず止めに入ったが、ここで止められたらマーリカの目的は達成出来ない。マーリカはキラの言葉を遮り、先を続けた。
「次の問題は、魔泉です。出来れば封印を施してもらうのが一番いいでしょう。だけど、もし広がった魔泉を縮小出来るとしたら、持ち堪えられる可能性が高くなるのではないでしょうか」
「縮小? しかし一体どうやって」
ユーリスが片眉を上げる。
「私は、ずっと考えていたのです」
マーリカは、胸の前で拳をふたつ握り締めた。男四人の視線を一身に受けながら、おっとりとした顔をきりりとさせる。
「何故魔泉が出来てしまったのかを。サイファの話では、あの黒竜は火の属性を付与した枷を付けられた核を持つ魔物ということです」
「あ、ああ……?」
マーリカの話が見えないのか、サイファは首を傾げる。
「私の考えが正しければ、反対の属性魔法が核まで届いた時に、そこに無属性の地場か何かが発生してしまったのではないでしょうか。それが魔界への接点となってしまったのでは」
「なるほど、一理あるな」
ユーリスが頷いた。
「もしかしたら、最初の魔泉はごく小さなよくある物だったのかもしれません。普段そこらにいる魔物も魔泉から発生しているのならば、魔物退治の際に反対の属性をぶつけ合うと魔泉の子供が生まれるのではないかと。ですが、作られた後に闇属性を足されないが為に大きくならない」
「ふむ。続けてくれ」
ユーリスが段々と前のめりになってくる。サイファとキラも完全にマーリカに向き直ると、マーリカを真剣な目で見た。
「たまたま繋がったりして大きくなった物から、魔物が出てくる。そう考えると、今回黒竜が沈んだ所に大きな魔泉が出来た理由は、私の魔力に付いている特性――爆発の所為だったのではないかと思います」
「何でも爆発させるもんなあ」
サイファが小さく笑う。マーリカは小さく頷いて見せた。
「双子の皇子がやったことは、小さな魔泉を人為的に発生させて、闇の魔具を使って広げることなのでは。そこで、一度作り出した魔泉が闇属性で広がるのならば、『聖』の属性で閉じることが出来るのでは? と考えました」
「あ……なるほど!」
ユーリスの顔に、少しずつ色味が戻ってくる。
「それがもし本当ならば、大型の魔物が通れる様な大きな魔泉を小さくするには、大量の聖属性の魔法をぶつけなければなりません。つまり――爆発する聖属性の魔具を使えばいいのでは」
「……確かに、やってみる価値はある。だが、それは無理だろう」
ユーリスの言葉に、マーリカは首を傾げた。
「あら、何故ですの?」
「何故なら、それが出来るのは現状貴女だけだからだ。そんな場所に貴女を連れていける訳が……!」
「あら、私は最初から一緒に行く気ですけど」
「……は? お嬢、ちょっと待って」
キラが唖然とした顔になる。マーリカはにっこりと微笑んだ。
「国王様は物資を支給することを約束したのでしょう? でしたら【マグナム】と魔魚の鱗製の盾と鎧を買っていただければ、ムーンシュタイナー領の再建問題も一気に片付きますしね!」
「おい、この人とんでもねえこと言ってるぞ……」
サイファが思わずといった風に漏らすと、マーリカの肩に手を乗せたムーンシュタイナー卿も、にっこりと笑った。
「瓶詰めもついでに売りつけてくるよ。国王との交渉は僕に任せてくれ、僕のマーリカ」
「ムーンシュタイナー卿……?」
ユーリスが、ぽかんとしてムーンシュタイナー卿を見る。
「うちの領を追い詰めて逃げた奴のやり方には、そろそろ我慢の限界がきていたところなんだよね。この僕に真っ向勝負して勝ち目がないからって、本当意気地なしなんだからなあ」
「え、お父様?」
一体何の話だろうか。マーリカが隣の父親を見上げると、ムーンシュタイナー卿はフフ、と朗らかに笑ったのだった。
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