生意気従者とマグナム令嬢

ミドリ

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1 ムーンシュタイナー領没落

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 悪いことは重なるとは、よく言ったものだ。

 ウィスロー王国ムーンシュタイナー領にここ数日の間に起きたことは、正にそれだった。

 元々、大した産業のない土地だった。王都からは近くも遠くもないという何の売りもない場所で、あるのは牧地と農地。だけど気候は比較的穏やかだった為、どうにかこうにか領主と領民力を合わせて質素なりに幸せに暮らしていた。

 そんな中突如として領地上空に現れたのは、黒竜だ。

 黒竜は飛べなくなったのか、農地に砂煙を立てて墜落すると、血を流しながら炎を吐きまくった。

 竜に対抗出来るのなんて、賢者や勇者級の人間だけだ。そんな人間は、当然ながらこんな田舎な領地にいる訳がない。

 そして、ムーンシュタイナー領は見事に焼けた。

 そこへ魔導書片手に黒竜の前に現れたのは、ムーンシュタイナー領領主のひとり娘、マーリカ・グロリア・ナダス・ムーンシュタイナーだ。

 マーリカは、目下魔法の勉強中だった。なので、ためらいもせず水魔法を唱えた。

 マーリカの放った水魔法は、黒竜の魔力で暴走し、辺り一面を湖に変えた。

 湖に浮かんだ黒竜の死体から、鱗が剥がれては魔魚へと変化していく。

 そしてひと晩の内に、ムーンシュタイナー領は魔魚が泳ぐ湖へと変わってしまったのだった。
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