3 / 64
其の三 川遊び
しおりを挟む
十分程歩いて俺の家に着くと、俺達はさっそく水着に着替え始めた。男の水着なんて楽勝だから、ぱっと脱いでぱっと履けばもう完了だ。さすがにバスタオル位はいるだろうと脱衣所の棚の中から取り出しリビングに戻ると、水着に着替えた花が背中を向け、所在なさげに立っていた。
スラリと伸びた褐色の足の上に、突如現れた白い肌。俺は、それに釘付けになった。部活で短パンで走っているからだろう、足の付け根から急に花本来の肌の色に変わり、形のいい尻へと続いている。残念ながらビキニではなくシンプルなピンクの花柄のワンピースの水着だが、背中は大きく開いていて、そこもまた真っ白で艶めかしい。細いが、全然ゴボウなんかじゃなかった。どうやら、育ち盛りの女子高生の成長レベルを舐めていた様だ。
前は一体、どうなっているんだろうか。
「花」
花をこちらに向かせようと、自然な声がけを心がける。決して、興奮した様な声なんか発しちゃいけない。警戒されたら駄目だ。
花が、恥ずかしそうにゆっくりと振り返った。腕で胸の谷間を隠しているが、脇の横の胸の肌はしっかりと見える。水着からぷっくりと押し出されており、眩しい程に白い。思わず口が「お」の形になり、滅茶苦茶つつきたい衝動に駆られた。
「ちょっと、何よその顔。失礼じゃない?」
花は、何かを誤解した様だ。
「いやいや、いいよ」
俺は、素直な感想を口にした。
「え?」
花が、少し頬を赤らめて聞き返してきたので、もう一度はっきりと言うことにした。だって、きちんと見たいじゃないか。
「とってもいいと思うから、その腕をどけてくれ」
だが、どうやら素直に言い過ぎたらしい。
だから、花が俺に口を聞いてくれたのは、俺が謝り倒してそれでも足りなくて土下座までして、半べその花の細い肩を抱きながら裏の川に連れて行ってからだった。
◇
「ねえ太一、魚がいるよ!」
普段は川遊びなど絶対にしない花が、川底に座りながら目を輝かせて俺を振り返った。深さは花の腹程度までしかなく、さすがにこの深さで溺れることはないとようやく安心したらしい。
どれどれ、と花のすぐ横に這って近付く。ついでに、魚に夢中になっている花の谷間を見た。しっかりとそこにある。凄い柔らかそうだが、さっきまでゴボウだの女として見ていないだの思っていた相手の胸をいきなり触る勇気は、さすがになかった。だが、ゴボウだったのは少し前までの話だったことはよく理解した。これは確かに、クラスの男子も目がいってしまうかもしれない。
そう考え、少し苛立ちを覚えた。俺は幼馴染だし花とは家族ぐるみの付き合いだからいい。だが、赤の他人が花をそういう目で見てると思うと、不快感で一杯になった。これはあれだ、女として見てるとかじゃなくて、心配する兄貴の気分に違いない。きっとそうだ。
「太一? 魚見えた?」
「あー見えた見えた」
胸の谷間に釘付けになりながら、答える。次の瞬間、花が振り返ったので、慌てて目線を花の顔に移動した。
わざとらしくならない様に、話題を逸らす。
「なあ花、お前まだ水が怖いのか?」
その質問に、花の表情が曇った。
「プールは大丈夫なんだけど、流れる水が怖いかな、あはは」
無理な笑顔に、心が痛む。
「この夏はさ、俺がこうやって付き合ってやるから、少し慣れようぜ。な?」
「太一、責任感じてない? あれは別に太一の所為じゃないからさ」
「そうじゃねえよ。その内友達と海に行ったりとかもするだろ? そういう時に困るかなって思ってさ」
何でもないことの様に言ったが、内心はドキッとしていた。正にその通りだったからだ。
俺と宗二と花の三人でよく遊んでいた頃、こことは別の川に遊びに行ったことがあった。そこで、中に入るのを躊躇っていた花が突然足を滑らせ、川に落ちてしまったのだ。宗二が慌てて追いかけ花を助けあげたが、代わりに宗二が溺れてしまった。
たまたま近くを通りかかったおじさんが助けてくれなければ、宗二はどうなっていたか分からない。
結局その割とすぐ後、失踪してしまったが。
「ていうか責任てなんだよ。俺はただ見てただけだし」
「……そうだったっけ」
あは、と花が小さく笑う。そう、俺はその時、花が落ちる前に乗っていた岩の上でただ突っ立っていただけだ。何もしていない。
何だか変な間が出来てしまった。すると、ゴロゴロ、と少し遠くから雷の音が聞こえ始める。空を見上げつつ立ち上がると、花に手を貸して立ち上がらせた。
「戻ろう」
「……うん」
花は何かを言いたそうにしていたが、結局何も言わずにただ微笑んだだけだった。
スラリと伸びた褐色の足の上に、突如現れた白い肌。俺は、それに釘付けになった。部活で短パンで走っているからだろう、足の付け根から急に花本来の肌の色に変わり、形のいい尻へと続いている。残念ながらビキニではなくシンプルなピンクの花柄のワンピースの水着だが、背中は大きく開いていて、そこもまた真っ白で艶めかしい。細いが、全然ゴボウなんかじゃなかった。どうやら、育ち盛りの女子高生の成長レベルを舐めていた様だ。
前は一体、どうなっているんだろうか。
「花」
花をこちらに向かせようと、自然な声がけを心がける。決して、興奮した様な声なんか発しちゃいけない。警戒されたら駄目だ。
花が、恥ずかしそうにゆっくりと振り返った。腕で胸の谷間を隠しているが、脇の横の胸の肌はしっかりと見える。水着からぷっくりと押し出されており、眩しい程に白い。思わず口が「お」の形になり、滅茶苦茶つつきたい衝動に駆られた。
「ちょっと、何よその顔。失礼じゃない?」
花は、何かを誤解した様だ。
「いやいや、いいよ」
俺は、素直な感想を口にした。
「え?」
花が、少し頬を赤らめて聞き返してきたので、もう一度はっきりと言うことにした。だって、きちんと見たいじゃないか。
「とってもいいと思うから、その腕をどけてくれ」
だが、どうやら素直に言い過ぎたらしい。
だから、花が俺に口を聞いてくれたのは、俺が謝り倒してそれでも足りなくて土下座までして、半べその花の細い肩を抱きながら裏の川に連れて行ってからだった。
◇
「ねえ太一、魚がいるよ!」
普段は川遊びなど絶対にしない花が、川底に座りながら目を輝かせて俺を振り返った。深さは花の腹程度までしかなく、さすがにこの深さで溺れることはないとようやく安心したらしい。
どれどれ、と花のすぐ横に這って近付く。ついでに、魚に夢中になっている花の谷間を見た。しっかりとそこにある。凄い柔らかそうだが、さっきまでゴボウだの女として見ていないだの思っていた相手の胸をいきなり触る勇気は、さすがになかった。だが、ゴボウだったのは少し前までの話だったことはよく理解した。これは確かに、クラスの男子も目がいってしまうかもしれない。
そう考え、少し苛立ちを覚えた。俺は幼馴染だし花とは家族ぐるみの付き合いだからいい。だが、赤の他人が花をそういう目で見てると思うと、不快感で一杯になった。これはあれだ、女として見てるとかじゃなくて、心配する兄貴の気分に違いない。きっとそうだ。
「太一? 魚見えた?」
「あー見えた見えた」
胸の谷間に釘付けになりながら、答える。次の瞬間、花が振り返ったので、慌てて目線を花の顔に移動した。
わざとらしくならない様に、話題を逸らす。
「なあ花、お前まだ水が怖いのか?」
その質問に、花の表情が曇った。
「プールは大丈夫なんだけど、流れる水が怖いかな、あはは」
無理な笑顔に、心が痛む。
「この夏はさ、俺がこうやって付き合ってやるから、少し慣れようぜ。な?」
「太一、責任感じてない? あれは別に太一の所為じゃないからさ」
「そうじゃねえよ。その内友達と海に行ったりとかもするだろ? そういう時に困るかなって思ってさ」
何でもないことの様に言ったが、内心はドキッとしていた。正にその通りだったからだ。
俺と宗二と花の三人でよく遊んでいた頃、こことは別の川に遊びに行ったことがあった。そこで、中に入るのを躊躇っていた花が突然足を滑らせ、川に落ちてしまったのだ。宗二が慌てて追いかけ花を助けあげたが、代わりに宗二が溺れてしまった。
たまたま近くを通りかかったおじさんが助けてくれなければ、宗二はどうなっていたか分からない。
結局その割とすぐ後、失踪してしまったが。
「ていうか責任てなんだよ。俺はただ見てただけだし」
「……そうだったっけ」
あは、と花が小さく笑う。そう、俺はその時、花が落ちる前に乗っていた岩の上でただ突っ立っていただけだ。何もしていない。
何だか変な間が出来てしまった。すると、ゴロゴロ、と少し遠くから雷の音が聞こえ始める。空を見上げつつ立ち上がると、花に手を貸して立ち上がらせた。
「戻ろう」
「……うん」
花は何かを言いたそうにしていたが、結局何も言わずにただ微笑んだだけだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
厄師
ドヴニール
ホラー
1990年代にインターネットが台頭してから幾許かの時が流れ、SNSが普及し始めた。
そこから人々は様々な情報に触れやすくなっていった訳だが、その中でもとりわけ、根も葉もない様なゴシップやら噂やらは瞬く間に、まるでヒレを得た魚のようにネットの大海に拡散されていくのがお決まりとなりつつあった。
◯◯みたいだよ
◯◯らしい
人はどう進化しようが噂好きというものは無くならないようだ。
そんな"しょうもない噂"に紛れて一つ、最近どこから流れ出たか、囁かれ出したものがあった。
「金を払えば相手に厄(わざわい)を降り掛からせる事ができる"らしい"」
「厄師(やくし)なんて怪異がある"みたい"」
そんな噂が、静かに広がっている。
幸福の印
神無創耶
ホラー
親友の劇作家に、イタリアのナポリで行われる演劇に招待された探偵、長尾 黄呀(ながお こうが)。
行方不明者捜索の依頼を終えてちょうど暇になったのを契機にイタリアへと翔ぶ。
しかし、いった先で不穏な雰囲気に包まれたイタリアにて事件に巻き込まれる
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甘いマスクは、イチゴジャムがお好き
猫宮乾
ホラー
人間の顔面にはり付いて、その者に成り代わる〝マスク〟という存在を、見つけて排除するのが仕事の特殊捜査局の、梓藤冬親の日常です。※サクサク人が死にます。【完結済】
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
溺れ、溶ける
始動甘言
ホラー
すごく怖い夢を見た。
頭では分かっているのに身体が自然と水の中にゆっくりゆっくりと入っていく夢だ。
それを最近思い出し、その場所にいずれ行くのかなと日に日に考えるようになった。
仕事に支障はないけど、どうしても気になる。いずれ解決するといいな。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる