上 下
221 / 731
第二章 中級編開始

第220話 OLサツキの中級編三日目、スライム伸びる

しおりを挟む
 サツキは、サツキが借りたドレスと靴とラムが借りたドレスを袋に詰めると、目を輝かせながら本棚を眺めていたユラに声を掛けた。

「お待たせ、行こうか」
「お、了解」

 ユラは今日も法衣を着ておらず、爽やかな白のシャツを颯爽と着ている。普段は法衣は着ないのだろうか?

「ユラの私服ってなんか新鮮」
「ありゃまあ身分証明みたいなもんだからな。それにさすがに今日は洗濯中」
「あ、私が使っちゃったから?」

 すると、ユラがにやっと笑った。

「まあサツキが素っ裸で一日近くあれにくるまって寝てたしな。それをそのまま着ても、まあいいっちゃいいけど」
「いやよくないね」
「俺も一応倫理的にそう思った訳だ」
「倫理的……」

 外に出てドラちゃんに挨拶をすると、ラムがサツキの手を握ってきた。そしてラムは反対の手でユラの手を握った。おや、昨日で随分と距離が縮まった様だ。するとユラも意外だったらしく、少しキョトンとした顔をした後、またあの少し意地悪そうな笑みを浮かべた。

「はは、俺テイムした奴より懐かれたかも」
「ラムちゃんのことを助けてくれたのはユラだものね」

 本当にあの時ユラがいなかったらと思うと、改めてゾッとした。ラムは実に楽しそうに両手をブンブン振っていたが、急にぴょんぴょん跳ね出した。

「どうしたの?」

 必死に前に注意を向けようとしている。ユラが先に気付いた。

「前? あーあれか」

 前を歩く子供が、両親に手を繋がれた腕を引っ張り上げられてジャンプしてはしゃいでいた。あれをやってもらいたいらしい。

「私はいいけど……」

 ユラをちらっと見ると、ユラが仕方ないな、といった風に苦笑した。

「分かった分かった、一回だけな?」

 ラムが更にぴょんぴょん跳ねた。うーん、可愛さマックス。サツキが言った。

「じゃあ、三、ニ、一、ぴょーんね!」
「分かった」
「さーん、にー、いーち、ぴょーん!」

 ユラとサツキが勢いよくラムの腕を引っ張り上げると、ラムが勢いよく空へと弾んでいき、腕がみょーんと伸びた。そしてそこそこな勢いで戻ってくると、ドン! と着地した。

 サツキとユラが驚いて顔を見合わせる。次いで、ぷっと笑い合った。

「さすがスライム」
「伸びたね!」
「ちょっともう一回、もう少し勢いつけてやってみようぜ」
「腕千切れないかな?」
「お前時々怖いこと言うよな」
「ラムちゃん大丈夫?」

 ラムは楽しそうにうんうん頷いている。大丈夫らしい。

「よし! じゃあ次はもっと勢いよくいくぞ! さーん! にー! いーち! 発射!」

 勢いよく打ち上げられたラムの腕は先程よりも更に伸び、上空を飛んでいた鳥に足が当たった。鳥がよろけながらふらふらと飛び去る。するとバンジーの様にラムが物凄い勢いで戻ってきた。ドン! という着地音と共に土煙が上がった。

「おおー。これ、攻撃に使えたりして」
「弱いモンスターならいけるかも?」
「じゃあ次のダンジョンで試してみようぜ」
「皆驚くね、きっと!」

 ラムを攻撃に使えば、もしかしたらまたレベルが上がるかもしれない。なかなかいい考えかもしれない、と思ったサツキだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...