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第86話 人狼一族の今後
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私とシスは、ドクター橋本にお暇を告げると、ロウが転がされている管制塔前広場に向かった。
衰弱してだらんと地面に身体を横たわらせたロウの上空には、見張りの無人小型航空機が無数旋回している。シスの言いつけ通り、ちゃんと見張ってくれていたらしい。
ロウは重そうに狼の頭を私たちに向けると、苦笑いした。
「はは……すげえ匂い。小町の全身からシスの匂いがする」
シスに対する復讐が叶わなかったからだろうか。ロウからはこれまでの覇気は消え失せ、倦怠感にも似た諦観が漂う。そんなロウの顔の横にしゃがみ込んだシスが、冷めた声色で牽制の言葉を吐いた。
「小町は俺の番で妻だからな。次に手を出そうとしたら、全ての吸血鬼がお前の一族を滅ぼしに行く。滅ぼされたくなければ二度と手を出すな」
あまりにも直接的な脅しの言葉に、ロウは力なく笑い返す。
「はは……何だよ、全ての吸血鬼って大袈裟な」
「吸血鬼一族の次期宗主が人狼如きに番を奪われたとなったら、お前の一族だけでなく人狼全てが滅びるかもな」
「は……?」
ロウはその可能性を全く想像だにしていなかったのか、急に目を泳がせ始めた。それが、縋り付く様に私を捉える。あそこまでした癖に、それでも私に助けを求めるんだもんなあ。
ロウは小狡いけど、嫌い切れない部分があるのは事実だった。目的はどうあれ、シスに血を吸われた時は言う通りちゃんとシスを止めてくれたし、私をネクロポリスまで抱えて走り続けてくれたのも確かだから。
ふう、と息を吐きつつシスの隣に寄り添う様にしゃがむと、ロウを上から覗き込んだ。
「私もさっき聞いたばっかなんだよね」
私の言葉に、ロウの瞳がじわじわと涙で濡れていく。
「ちょっとおっ! そういう大事なことは、最初に言ってくれよなあ!」
「私もそれは同感だなー」
横目でシスを見ると、シスが肩を竦めた。
「勝負に肩書はいらないだろ。勝負は力と力のぶつかり合いだって親父がいつも言ってるし」
まさかの宗主発言。
ロウが、今度こそ泣いた。
「忖度くらいさせてくれよお!」
分かる。ロウの気持ちはよく分かった。だったら初めから手を出さなかったのにってことだろう。
あ、でも、とロウが思いついた様に呟く。
「勝負の相手が吸血鬼一族の宗主の息子だったって分かれば、俺も一族に戻れるかもしれないぞ……!」
わざと負けたことにすればいいしな、と少し元気を取り戻し始めている。そういうことを本人を目の前にして言っちゃうあたりが足りない部分なんだよなあ、とロウを見て思った。
そもそもロウの目的は、勝負に負けて追い出された一族に再び跡目として返り咲くことだ。私を手篭めにしようとしたのは、手段にしか過ぎなかったんだろう。最初から目的はぶれていないし、帰りたくて必死だったというのも分からなくはない。やり方はアレだけど。
「あ、それなんだがな」
シスが続けた言葉に、ロウは目を見開いた。
◇
「サーシャの家はどこだー?」
「前に教えてもらった情報だとこの辺りなんだけど」
私とシスは、現在亜人街を彷徨いていた。目的地はサーシャさんとタロウさんが住んでいる家だ。大きな家が並んでいるけど、表札らしきものがないのでどの家がサーシャさんの家なのか分からなくて、道々尋ねながら目的地に向かっている最中だ。
ふと、三日前に別れたロウのことを思い出した。
「ロウの足だと、全速力でどれくらいかかるんだろうね?」
「んー? 俺たちがのんびり歩いて半月だっただろー? 人狼が必死で走り続ければ三日もあれば着くんじゃないかー?」
なら、もうそろそろ着いている頃かな。全速力だとシスの方がロウより早いと思ったけど、ロウ曰くシスは吸血鬼の宗主の血を受け継いでいるからかとんでもなく規格外らしい。普通の吸血鬼と競争したら負けないよ! と誇らしげに言っていたロウは、憑き物が落ちたかの様にスッキリとした顔をして旅立っていった。
「ちゃんと説得してくれるかな?」
「できなかったら、人狼一族はあの地から追われるだけだ。嫌なら必死で説得するだろー」
そう。あれからシスは、ロウに自分の配下となる様持ちかけたのだ。吸血鬼一族が管轄する一帯で配下となっていないのは人狼一族とその他新参者の亜人くらいだそうで、人狼が配下に加われば、実質地方はほぼ掌握という状態になるらしい。なんでそんな凄い亜人が地面に転がっていたんだろう。偶然って凄い。
勿論シスは、ちゃんと取引条件を持ち出した。健脚で移動能力が高い人狼は、各地への伝令として非常に役立つ。また、今後ヒトと亜人をマッチングさせる際、移動中にヒトが他の亜人に攫われない為の護衛が必要となる。
その役割を優先的に人狼に割り振ることで、他の亜人よりも宗主に近いと思わせることが出来る。これまで狩りが主な食料調達方法だった人狼一族は、あまり豊かな生活を送っているとは言えなかったそうだ。今後ヒトと亜人が暮らせる新たな街を切り拓く際に様々な優先権を与えることで、一族の生活向上を図れる。シスの提案は雑ではあったけど、理にかなったものに思えた。
勿論、こんな大事なことはロウの一存では決められないだろう。その為、シスが紙に一筆したためた。ロウはすでに自分の配下にあること、吸血鬼一族に忠誠を誓うのであれば優遇措置を用意すると書いた。シスのサイン付きで。
意外なほどに綺麗な字を書いたので、驚いてしまった。一見野性味溢れた野生児だけど、きちんと教育されているらしい。シスって本当に読めないよなあと思ったエピソードだ。
「ここを出たら、次はいよいよシスの実家か……緊張するなあ。本当にヒトでも大丈夫なの?」
シスは、私の腰を引き寄せながら歩くのが最近のお気に入りらしい。てんでお子ちゃまだと思っていたシスが隙あらばあちこち触ってこようとするので、これまで本当に我慢してたんだなあと改めて済まなく思った。でも、乙女はいつでもどこでも触っていいものじゃない。
胸にそろりと伸びてきた手をペシンと叩くと、シスが悲しそうな顔をした。
「小町、冷たい……」
「よく言うよ……あれだけ毎晩触っておいて」
「あんなんじゃ全然足りないぞー」
「嘘でしょ」
正式な番となってから、シスは一切遠慮なく私に触れてくる様になった。昨日までは野宿だったのに外でもお構いなしなものだから、さすがに宿屋に着いて即風呂に入らせてもらったのが今朝の話だ。前回利用したのと同じ宿屋に一室を借りられたけど、私たちを目にした瞬間ヤギ亜人の店主の鼻が動くのを見逃さなかった。シスは乙女に羞恥心があるのをそろそろ学んだ方がいいと思う。
ちなみに、その後は当然の様にくまなく匂い付けされてしまったので、あまりお風呂に入った効果があったとは思えない。昼間は明るいし止めようと言ったら、金色の瞳を潤ませてしまったのは本当に参った。見られるだけじゃなく、シスのだってよく見える。どうしたって恥ずかしく思っていたら、「小町は夜目が利かないんだもんなー?」と言われ、夜だろうがかなり詳細まで見られていたことが判明した。……うう。
暫くして立ち直ったシスが、明るくほざく。
「今夜はようやくベッドだな! 楽しみだなー小町!」
さっきもベッドだったのはもう忘れたのかとか、白昼堂々と夜が楽しみだとか言うのはやっぱりデリカシーがないよなあと思いながらも、ワクワクしているシスを見ればつい笑ってしまう私は相当シスに狂ってるんだろう。
「……――小町ちゃん!」
バサ、と翼が羽ばたく音が上空から聞こえてきて、青い空を見上げた。大きな家の二階の窓から飛んできているのは、驚いた顔のサーシャさんだ。窓からは、タロウさんが微笑みながら私たちに手を振っている。
「無事だったのね! よかった!」
私の前に降り立つと、サーシャさんは私を抱き寄せた。そしてスン、と鼻を鳴らすと、嫌そうな顔をして私の腰から手を離そうとしないシスを見る。
「……すっごい匂いなんだけど」
「俺たちは番だからな、当然だろー?」
しれっと言ったシスの言葉に、サーシャさんは堪らなくなったのか、ぷぷっと吹き出したのだった。
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「はは……すげえ匂い。小町の全身からシスの匂いがする」
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あまりにも直接的な脅しの言葉に、ロウは力なく笑い返す。
「はは……何だよ、全ての吸血鬼って大袈裟な」
「吸血鬼一族の次期宗主が人狼如きに番を奪われたとなったら、お前の一族だけでなく人狼全てが滅びるかもな」
「は……?」
ロウはその可能性を全く想像だにしていなかったのか、急に目を泳がせ始めた。それが、縋り付く様に私を捉える。あそこまでした癖に、それでも私に助けを求めるんだもんなあ。
ロウは小狡いけど、嫌い切れない部分があるのは事実だった。目的はどうあれ、シスに血を吸われた時は言う通りちゃんとシスを止めてくれたし、私をネクロポリスまで抱えて走り続けてくれたのも確かだから。
ふう、と息を吐きつつシスの隣に寄り添う様にしゃがむと、ロウを上から覗き込んだ。
「私もさっき聞いたばっかなんだよね」
私の言葉に、ロウの瞳がじわじわと涙で濡れていく。
「ちょっとおっ! そういう大事なことは、最初に言ってくれよなあ!」
「私もそれは同感だなー」
横目でシスを見ると、シスが肩を竦めた。
「勝負に肩書はいらないだろ。勝負は力と力のぶつかり合いだって親父がいつも言ってるし」
まさかの宗主発言。
ロウが、今度こそ泣いた。
「忖度くらいさせてくれよお!」
分かる。ロウの気持ちはよく分かった。だったら初めから手を出さなかったのにってことだろう。
あ、でも、とロウが思いついた様に呟く。
「勝負の相手が吸血鬼一族の宗主の息子だったって分かれば、俺も一族に戻れるかもしれないぞ……!」
わざと負けたことにすればいいしな、と少し元気を取り戻し始めている。そういうことを本人を目の前にして言っちゃうあたりが足りない部分なんだよなあ、とロウを見て思った。
そもそもロウの目的は、勝負に負けて追い出された一族に再び跡目として返り咲くことだ。私を手篭めにしようとしたのは、手段にしか過ぎなかったんだろう。最初から目的はぶれていないし、帰りたくて必死だったというのも分からなくはない。やり方はアレだけど。
「あ、それなんだがな」
シスが続けた言葉に、ロウは目を見開いた。
◇
「サーシャの家はどこだー?」
「前に教えてもらった情報だとこの辺りなんだけど」
私とシスは、現在亜人街を彷徨いていた。目的地はサーシャさんとタロウさんが住んでいる家だ。大きな家が並んでいるけど、表札らしきものがないのでどの家がサーシャさんの家なのか分からなくて、道々尋ねながら目的地に向かっている最中だ。
ふと、三日前に別れたロウのことを思い出した。
「ロウの足だと、全速力でどれくらいかかるんだろうね?」
「んー? 俺たちがのんびり歩いて半月だっただろー? 人狼が必死で走り続ければ三日もあれば着くんじゃないかー?」
なら、もうそろそろ着いている頃かな。全速力だとシスの方がロウより早いと思ったけど、ロウ曰くシスは吸血鬼の宗主の血を受け継いでいるからかとんでもなく規格外らしい。普通の吸血鬼と競争したら負けないよ! と誇らしげに言っていたロウは、憑き物が落ちたかの様にスッキリとした顔をして旅立っていった。
「ちゃんと説得してくれるかな?」
「できなかったら、人狼一族はあの地から追われるだけだ。嫌なら必死で説得するだろー」
そう。あれからシスは、ロウに自分の配下となる様持ちかけたのだ。吸血鬼一族が管轄する一帯で配下となっていないのは人狼一族とその他新参者の亜人くらいだそうで、人狼が配下に加われば、実質地方はほぼ掌握という状態になるらしい。なんでそんな凄い亜人が地面に転がっていたんだろう。偶然って凄い。
勿論シスは、ちゃんと取引条件を持ち出した。健脚で移動能力が高い人狼は、各地への伝令として非常に役立つ。また、今後ヒトと亜人をマッチングさせる際、移動中にヒトが他の亜人に攫われない為の護衛が必要となる。
その役割を優先的に人狼に割り振ることで、他の亜人よりも宗主に近いと思わせることが出来る。これまで狩りが主な食料調達方法だった人狼一族は、あまり豊かな生活を送っているとは言えなかったそうだ。今後ヒトと亜人が暮らせる新たな街を切り拓く際に様々な優先権を与えることで、一族の生活向上を図れる。シスの提案は雑ではあったけど、理にかなったものに思えた。
勿論、こんな大事なことはロウの一存では決められないだろう。その為、シスが紙に一筆したためた。ロウはすでに自分の配下にあること、吸血鬼一族に忠誠を誓うのであれば優遇措置を用意すると書いた。シスのサイン付きで。
意外なほどに綺麗な字を書いたので、驚いてしまった。一見野性味溢れた野生児だけど、きちんと教育されているらしい。シスって本当に読めないよなあと思ったエピソードだ。
「ここを出たら、次はいよいよシスの実家か……緊張するなあ。本当にヒトでも大丈夫なの?」
シスは、私の腰を引き寄せながら歩くのが最近のお気に入りらしい。てんでお子ちゃまだと思っていたシスが隙あらばあちこち触ってこようとするので、これまで本当に我慢してたんだなあと改めて済まなく思った。でも、乙女はいつでもどこでも触っていいものじゃない。
胸にそろりと伸びてきた手をペシンと叩くと、シスが悲しそうな顔をした。
「小町、冷たい……」
「よく言うよ……あれだけ毎晩触っておいて」
「あんなんじゃ全然足りないぞー」
「嘘でしょ」
正式な番となってから、シスは一切遠慮なく私に触れてくる様になった。昨日までは野宿だったのに外でもお構いなしなものだから、さすがに宿屋に着いて即風呂に入らせてもらったのが今朝の話だ。前回利用したのと同じ宿屋に一室を借りられたけど、私たちを目にした瞬間ヤギ亜人の店主の鼻が動くのを見逃さなかった。シスは乙女に羞恥心があるのをそろそろ学んだ方がいいと思う。
ちなみに、その後は当然の様にくまなく匂い付けされてしまったので、あまりお風呂に入った効果があったとは思えない。昼間は明るいし止めようと言ったら、金色の瞳を潤ませてしまったのは本当に参った。見られるだけじゃなく、シスのだってよく見える。どうしたって恥ずかしく思っていたら、「小町は夜目が利かないんだもんなー?」と言われ、夜だろうがかなり詳細まで見られていたことが判明した。……うう。
暫くして立ち直ったシスが、明るくほざく。
「今夜はようやくベッドだな! 楽しみだなー小町!」
さっきもベッドだったのはもう忘れたのかとか、白昼堂々と夜が楽しみだとか言うのはやっぱりデリカシーがないよなあと思いながらも、ワクワクしているシスを見ればつい笑ってしまう私は相当シスに狂ってるんだろう。
「……――小町ちゃん!」
バサ、と翼が羽ばたく音が上空から聞こえてきて、青い空を見上げた。大きな家の二階の窓から飛んできているのは、驚いた顔のサーシャさんだ。窓からは、タロウさんが微笑みながら私たちに手を振っている。
「無事だったのね! よかった!」
私の前に降り立つと、サーシャさんは私を抱き寄せた。そしてスン、と鼻を鳴らすと、嫌そうな顔をして私の腰から手を離そうとしないシスを見る。
「……すっごい匂いなんだけど」
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