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第40話 計画が頓挫する
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タロウさんの話は一旦置いておき、ひとまず食事に集中することにする。
正確には、シスが次々に私の口に料理を詰め込むから、喋られなかっただけだけど。
私が口を開けると、シスは何だかほっとした微笑みを浮かべながらどんどん口の中に料理を放り込んできた。口が空になって話の催促をしようとタロウさんの方を向こうとすると、すぐに泣きそうな顔になってしまう。
シスがしつこい性格なのは理解したつもりでいたけど、まさかこんなにしつこくいじけ続けるなんて、一体誰が想像しただろう。シスのことは嫌いじゃないって散々言っても、恥を忍んで抱きついてやっても事あるごとにいじけるし、いい加減にしてほしい。
それに、うら若き乙女である私が胡座の上に乗せられながら亜人に「あーん」されるなんていう羞恥罰ゲームみたいな状態を必死で堪えてるっていうのに、当の本人はニコニコしながら人が咀嚼するところを見ているし。なんなの、今日のコイツは。
「小町、美味いかー? 次はどれを食いたい?」
窓から吹き込んでくる柔らかい風が、シスの青い癖っ毛を優しく撫でる。近くで見ると、金色の瞳の上にスッと生えた長いまつ毛も青くて、ヒトにはない色だから物珍しくて、つい見入ってしまった。
べ、別に、これは私がシスに見惚れてるとかじゃないし。シスが私から視線を逸らさないから、それで仕方なくこうして見つめ合ってる感じになってるだけだし。
向かい側に座っているサーシャさんとタロウさんが、こちらを見ながら小声でクスクスと内緒話をしている。物凄く気になる。まさか私とシスのこと……だよね、この感じは。ああ、もう嫌。恥ずかしすぎる!
「シ、シス、お腹一杯だからもういいよ」
休む間もなく詰め込まれて、美味しいけど掻っ込んだ感が半端ない。久々のまともな料理なんだから、もう少し味わいたいというのが本音だった。言ったらまた泣きそうだから言わないでおいてあげるけど。
そんな私の本心なんてつゆ知らず、シスが困った様な笑みを浮かべる。
「小町は少食過ぎるぞー。もっと食わないと。な?」
子供に注意するみたいに注意されても、入らないものは入らない。
「そんなこと言われても、もうお腹一杯なの!」
まだ人の口に料理を押し付けようとするシスの腕を、ぐいっと押し返した。人差し指を立てて、シスに向ける。
「それより、あんたまだひと口も食べてないじゃないの! シスこそ食べなさいよ!」
すぐに不機嫌になるのは、お腹が空いている所為は絶対ある。常に腹減り亜人、それがシス。なんせ食べ物が大好きだから、多分お腹一杯になれば、私が多少突き放してもきっとさっきほどおかしな態度を取ることはないんじゃないか。
よし、この作戦でいこう、と私は料理のひとつを指差した。
「ほらシス、あれなんか美味しかったよ。食べなよ」
「あれじゃ分からない」
面倒くさい。
「あれだってば! 魚っぽいやつ! 指差してるんだから分かるでしょ!?」
ぎりぎりまで人差し指の先端を近付けても、シスは首を横に振った。目がちょっと楽しそうなのはどういうことだ。
「あれじゃ分からない。小町、食べさせてくれよ」
「は……」
あんぐりと口を開けた私の手に、シスはギュッと持っていた箸を握らせた。え? 私の初あーんの相手、まさかの亜人?
一応私の計画では、マッチングをした将来の旦那様と初めてのお料理をキッチンで並んで作って、「これ味どうかな?」なんて言ってあーんしてあげる筈だったのに。
――このアホな亜人の所為で、私の計画がどんどん崩れていく……。
そんなシスは、にっこにこの眩い笑顔で尋ねた。
「小町、どれが美味しかったんだー?」
小首を傾げて微笑まないでほしい。眩しすぎる!
「腹減ったぞー」
「……!」
さっと向かいの二人を見ると、二人とも私と目が合った瞬間に目を伏せた。口元を押さえて肩を震わせてるところを見ると、助け舟を出す気は一切ないみたいだ。
「小町……」
スリ、と鼻先を私の首に擦りつけ始めたシス。スン、と鼻を小さく鳴らした後に肩に触れた柔らかいものは――く、唇!?
「腹減ったぞ……」
このままだと私が食べられかねない。勿論、誰も助けてくれはしない。
私は必死で考えた。いや待てよ、これは逆にチャンスなんじゃないかと。
咄嗟にこんなことを思いつくなんて、私ってやっぱり天才かもしれない。
私の肩に唇を付けたままのシスを、振り返った。
「じゃ、じゃあ、食べさせてあげる代わりに、あげにくいから降りるけどいい!?」
「……」
膨れるな。
「じゃあ自分で食べ……」
「分かった」
不服そうな口調だったけど、シスが渋々頷いたので、私はようやく結構座ってみたかったクッションの上に這いながら移動する。
シスは前屈みになると、胡座の上に肘を付き、頬杖をついて私を振り向いた。向かいの二人なんて見やしない。端正な顔をにっこにこにして、口を半分開ける。
「あーん。早く」
「わ! 分かってるし!」
急いで魚っぽい料理を箸に取ると、私を凝視しているシスの口に運んだ。形のいい薄めの唇の中に料理が消えていき、シスは嬉しそうに、相変わらず私を見つめ続けながら咀嚼する。
空になった口を開けると、また「あーん」と言うシス。……ちょっと待って、もしかして食べさせている間、ずっとこうして見られてるの?
「ちょ、ちょっと! 普通に前を向きなさいよ!」
「やだ。小町を見ながら食べた方が美味しい」
でた。やっぱり私を食べ物としてしか見てない発言。失礼にもほどがあるけど、私はヒト、シスは亜人だから、考え方がそもそも違うのは分かる。
……だけど。
目の前でイチャイチャしながら楽しそうに食事をしている亜人のサーシャとヒトのタロウさんを見ていると、ちょっと虚しくなった。
シスは亜人だし、この二人みたいにどうこうなりたいとも思わないけど、せめて女子として扱ってほしいのが本音だ。シスの態度は、どう考えたって、シスにとって私は喋るペット。そんなだから、平気で抱きつくし素っ裸を見せてもあっけらかんとしてるんだろう。
家族以外の男に裸を見られたのは、正真正銘さっきのシスのが初めてだったのに。抱き締められるのだって、お姫様抱っこされるのだって、亜人から守ってもらうのだって、全部ぜんぶシスが初めてだったのに、シスは最初から私を女子扱いなんてしてくれない。
眼中にないのがありありと分かるからこそ、振り回され気味の自分が嫌になった。
「小町、あーん」
「……はいはい」
シスに期待なんかしちゃ駄目だ。した分だけ、がっかりして悲しくなるだけだから。
次の料理を取ると、シスの口に運ぶ。もうこの際、シスの口へ食べ物を運ぶ係に徹底しよう。
それに、これでようやく話の続きも聞ける。
次の大きめな塊をシスの口の中に詰め込むと、タロウさんに向かって言った。
「すみません、話の続きをお願い出来ますか?」
正確には、シスが次々に私の口に料理を詰め込むから、喋られなかっただけだけど。
私が口を開けると、シスは何だかほっとした微笑みを浮かべながらどんどん口の中に料理を放り込んできた。口が空になって話の催促をしようとタロウさんの方を向こうとすると、すぐに泣きそうな顔になってしまう。
シスがしつこい性格なのは理解したつもりでいたけど、まさかこんなにしつこくいじけ続けるなんて、一体誰が想像しただろう。シスのことは嫌いじゃないって散々言っても、恥を忍んで抱きついてやっても事あるごとにいじけるし、いい加減にしてほしい。
それに、うら若き乙女である私が胡座の上に乗せられながら亜人に「あーん」されるなんていう羞恥罰ゲームみたいな状態を必死で堪えてるっていうのに、当の本人はニコニコしながら人が咀嚼するところを見ているし。なんなの、今日のコイツは。
「小町、美味いかー? 次はどれを食いたい?」
窓から吹き込んでくる柔らかい風が、シスの青い癖っ毛を優しく撫でる。近くで見ると、金色の瞳の上にスッと生えた長いまつ毛も青くて、ヒトにはない色だから物珍しくて、つい見入ってしまった。
べ、別に、これは私がシスに見惚れてるとかじゃないし。シスが私から視線を逸らさないから、それで仕方なくこうして見つめ合ってる感じになってるだけだし。
向かい側に座っているサーシャさんとタロウさんが、こちらを見ながら小声でクスクスと内緒話をしている。物凄く気になる。まさか私とシスのこと……だよね、この感じは。ああ、もう嫌。恥ずかしすぎる!
「シ、シス、お腹一杯だからもういいよ」
休む間もなく詰め込まれて、美味しいけど掻っ込んだ感が半端ない。久々のまともな料理なんだから、もう少し味わいたいというのが本音だった。言ったらまた泣きそうだから言わないでおいてあげるけど。
そんな私の本心なんてつゆ知らず、シスが困った様な笑みを浮かべる。
「小町は少食過ぎるぞー。もっと食わないと。な?」
子供に注意するみたいに注意されても、入らないものは入らない。
「そんなこと言われても、もうお腹一杯なの!」
まだ人の口に料理を押し付けようとするシスの腕を、ぐいっと押し返した。人差し指を立てて、シスに向ける。
「それより、あんたまだひと口も食べてないじゃないの! シスこそ食べなさいよ!」
すぐに不機嫌になるのは、お腹が空いている所為は絶対ある。常に腹減り亜人、それがシス。なんせ食べ物が大好きだから、多分お腹一杯になれば、私が多少突き放してもきっとさっきほどおかしな態度を取ることはないんじゃないか。
よし、この作戦でいこう、と私は料理のひとつを指差した。
「ほらシス、あれなんか美味しかったよ。食べなよ」
「あれじゃ分からない」
面倒くさい。
「あれだってば! 魚っぽいやつ! 指差してるんだから分かるでしょ!?」
ぎりぎりまで人差し指の先端を近付けても、シスは首を横に振った。目がちょっと楽しそうなのはどういうことだ。
「あれじゃ分からない。小町、食べさせてくれよ」
「は……」
あんぐりと口を開けた私の手に、シスはギュッと持っていた箸を握らせた。え? 私の初あーんの相手、まさかの亜人?
一応私の計画では、マッチングをした将来の旦那様と初めてのお料理をキッチンで並んで作って、「これ味どうかな?」なんて言ってあーんしてあげる筈だったのに。
――このアホな亜人の所為で、私の計画がどんどん崩れていく……。
そんなシスは、にっこにこの眩い笑顔で尋ねた。
「小町、どれが美味しかったんだー?」
小首を傾げて微笑まないでほしい。眩しすぎる!
「腹減ったぞー」
「……!」
さっと向かいの二人を見ると、二人とも私と目が合った瞬間に目を伏せた。口元を押さえて肩を震わせてるところを見ると、助け舟を出す気は一切ないみたいだ。
「小町……」
スリ、と鼻先を私の首に擦りつけ始めたシス。スン、と鼻を小さく鳴らした後に肩に触れた柔らかいものは――く、唇!?
「腹減ったぞ……」
このままだと私が食べられかねない。勿論、誰も助けてくれはしない。
私は必死で考えた。いや待てよ、これは逆にチャンスなんじゃないかと。
咄嗟にこんなことを思いつくなんて、私ってやっぱり天才かもしれない。
私の肩に唇を付けたままのシスを、振り返った。
「じゃ、じゃあ、食べさせてあげる代わりに、あげにくいから降りるけどいい!?」
「……」
膨れるな。
「じゃあ自分で食べ……」
「分かった」
不服そうな口調だったけど、シスが渋々頷いたので、私はようやく結構座ってみたかったクッションの上に這いながら移動する。
シスは前屈みになると、胡座の上に肘を付き、頬杖をついて私を振り向いた。向かいの二人なんて見やしない。端正な顔をにっこにこにして、口を半分開ける。
「あーん。早く」
「わ! 分かってるし!」
急いで魚っぽい料理を箸に取ると、私を凝視しているシスの口に運んだ。形のいい薄めの唇の中に料理が消えていき、シスは嬉しそうに、相変わらず私を見つめ続けながら咀嚼する。
空になった口を開けると、また「あーん」と言うシス。……ちょっと待って、もしかして食べさせている間、ずっとこうして見られてるの?
「ちょ、ちょっと! 普通に前を向きなさいよ!」
「やだ。小町を見ながら食べた方が美味しい」
でた。やっぱり私を食べ物としてしか見てない発言。失礼にもほどがあるけど、私はヒト、シスは亜人だから、考え方がそもそも違うのは分かる。
……だけど。
目の前でイチャイチャしながら楽しそうに食事をしている亜人のサーシャとヒトのタロウさんを見ていると、ちょっと虚しくなった。
シスは亜人だし、この二人みたいにどうこうなりたいとも思わないけど、せめて女子として扱ってほしいのが本音だ。シスの態度は、どう考えたって、シスにとって私は喋るペット。そんなだから、平気で抱きつくし素っ裸を見せてもあっけらかんとしてるんだろう。
家族以外の男に裸を見られたのは、正真正銘さっきのシスのが初めてだったのに。抱き締められるのだって、お姫様抱っこされるのだって、亜人から守ってもらうのだって、全部ぜんぶシスが初めてだったのに、シスは最初から私を女子扱いなんてしてくれない。
眼中にないのがありありと分かるからこそ、振り回され気味の自分が嫌になった。
「小町、あーん」
「……はいはい」
シスに期待なんかしちゃ駄目だ。した分だけ、がっかりして悲しくなるだけだから。
次の料理を取ると、シスの口に運ぶ。もうこの際、シスの口へ食べ物を運ぶ係に徹底しよう。
それに、これでようやく話の続きも聞ける。
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