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日常、それは変わらない日々
君は、一番近くにいたはずだった
しおりを挟む何がおかしいのか、未だ笑う明里。
「ほら明里、そんなに笑ってないでそろそろ帰るぞ。時間もヤバイことだし」
「あーおかしかったー。それじゃあハチ、明日遅刻しないでよね」
「うっせー」
「それじゃあまたね、ハチ」
「おう。またな、中村・山田」
「あぁ、また明日学校で会おうな、鉢須」
鉢須と別れて少し…。
自転車をこいでいると満月が綺麗で、その美しさに思わず足を止めると、明里も足を止めた。
「どうしたの? ユウ。帰らないの?」
「いや、月がキレイだなーって思って。明里もそう思うだろう?」
「それはどっちの意味で?」
「普通の意味で」
「まぁ、それはそうかもね…」
しばらく俺達は足を止め、キレイな月に酔いしれた。
「ねぇヤマ。ウチね、嘘ついちゃった」
「嘘?」
「うん…。ウチね、本当に好きなのは志村なんだ」
その瞬間、なぜか胸が締め付けられた。
なぜこんな気持ちになるのかも分からず、俺は片手で胸を抑えた。
「志村ね、すっごく優しいの。この間ね、重い荷物を持ってたら手伝ってくれたの。なんにも言わずウチから荷物取って、一緒に運んでくれたの。後ね――」
明里が嬉しそうに話す顔を、俺はどんな顔をして聞いていたのだろう?
嬉しそうに話すたび、胸が締め付けられる。初めてのことに、俺は正直戸惑った。
学生から付き合っていて結婚した人達なんて滅多にいない。どうせ別れる。その時間が無駄だ。
いつだってそうだった。そうやって教えられてきたんだ。なのに…。
「良いよねー。ああいう人の恋人になれたら」
なぜ、こんなにも胸が痛いのだろうか?
「ユウ?どうしたの?」
「あ、少し驚いただけだよ。明里はずっと青木が好きだと聞いてたからさ」
「えぇ? だって青木はユウが好きだから。好きにはならないよ」
「青木が? 俺を?」
「うん。見てれば分かるよ。青木は、いつだってユウの前でしかあんな顔はしないから…」
「あんな顔?」
「うん…。だって青木、ユウの前だとすっごく嬉しそうに話すんだよ」
「何言ってるんだ。青木はいつだってそうだろう? 俺だけじゃない。誰の前でもあんな感じじゃないか」
「そうじゃないよ。そうじゃ、ないんだ…」
明里が、なぜそんなことを言うのか分からなかった。俺達は幼馴染で、隠し事なんか一切なかった。
なのに、どんどん距離が出来て…。幼馴染なのに、知らないことが多すぎる。
今だって、明里の気持ちが全く分からない。一番近くにいた、幼馴染のはずなのに…。
「ほら、ユウ。帰るよ。これ以上遅くなったら、ママに怒られちゃうよ」
「そうだな。早く帰るか」
それからまた自転車をこいで、明里と他愛もない話をした。
違うのは、恋愛話をしなくなったことだけ。たったそれだけのことなのに、随分遠くなった気がする。
胸の痛みも、相変わらずだ。どうして痛いのか、その答えは今も出せていない。
不安が募るだけで、痛みは消えなないまま。
「ねぇユウ、拓也もこうだったのかな?」
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