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In the Sky
しおりを挟むヨーロッパ某国へ向かう機内。
10時間以上のフライト、夜便。
人混みと閉所嫌いなMちゃんが、私の隣でワイングラスを傾けている。
Mちゃんは同じ学科の女性。
入学式の日に、
誰とも馴れ合わないオーラを放っていた私の元に駆け寄ってきて、
「お友達になって下さい!」と直々にお声がけ頂いた。
彼女のセンサーに私の何が引っかかったのかは分からないけれど。
美人でスタイルが良く、
華やかな裏に毒がありそうな雰囲気が魅力的な人だ。
その美貌故か、学科が違う男子からも想いを寄せられていた。
プライドの高い彼女の前に、普通の告白など門前払いだった。
最初から結果を知りながらも、
私は何故か、彼女に心を寄せる勇者達から相談を受け、振られた男子のアフターケアまでしていた。
(…断る気持ちはわかるけど、
少しはお手柔らかに頼むよ……Mちゃん。。)
………
その彼女が、私の隣で柄にもない姿で屁べれけになっている。。
「…………。」
私は眠れもしない狭い席で、いつものように
考えを巡らせ、遠くを見つめて黙っていた。
(ぁ。またお代わり頼んでる…)
「ね~ 美雨さん。聞いてくださいよぉ~」
あのプライドが高いMちゃんが、
聞き分けのない猫のようになっている。
「…………?」
ザルだって知ってるのに。
私は無表情のまま彼女を見やった。
「………聞くくらいしかできないよ?」
明らかにただ事ではない様子だった。
聞いて済むと言うよりは、支えが必要というか。。
「十分です~!」
彼女は私の方になだれ込んでくると、
「昨日ね…」
と話し始めた。
Mちゃんはバイセクシャルだった。
私は言われなくても知っていたけど。
どうやら同棲していた彼女に彼氏ができて、
出て行ってしまったらしい。
「わたしも人生色々あったほうですけど~
今回ばっかりは 辛すぎて……
このタイミングですよ~?」
運ばれてきた赤ワインを 彼女の代わりに受け取る。
私たちはこの便で欧州のカレッジ留学に向かっていた。
「…………それは辛いね。やり切れない…」
「でしょー?」
彼女は私からグラスを受け取り、
水のように飲んだ。
人の苦しみに、同じ立場にいない自分には
かけられる言葉が、そう多くない事を知っていた。
「…………。」
肩に手を回して、Mちゃんの肩をポンポンと宥めた。
「うー美雨さん……。」
普段の気迫からは感じ取れない
華奢な肩のライン…
「………向こうで美味しいワイン、
呑み直しなよ。。」
これくらいしか言えない…
スン…と 鼻から息を抜いた。
「お酒は 美味しく嗜むもの……
なんじゃないの。
Mちゃんは、こんな飲み方してたら勿体ない。」
酔いと悲しみに潤んだ瞳を愛おしく見つめた。
「~~~~~…」
彼女は 狐につままれたような表情を見せた
「…………? 大丈夫?」
Mちゃんは 少し頷くように視線を落とした。
「……美雨さん。肩…借りてもいいですか……?」
フッと笑いが漏れる。
「どうぞ。 私なんかの肩でよければ……」
「ありがとう……」
Mちゃんは私の肩にもたれると、瞳を閉じた。
(……強い子は好きだけど……
少しお手柔らかに頼むよ…。)
~~~~fin
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