白衣とセーラー

霜月美雨

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ふたりの関係

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16歳の女子高生。


性に対する興味は人並み。


未知の世界に馳せる妄想。


本やTVから入ってくる情報。


膨らんでゆく 静かな期待。


異性に対する意識…


意識……


~~~~~~~~~


~~ちゃん。 美雨ちゃん…?」


ハッと顔を上げた。


手には、今度見に行く約束をした


常設展関係の資料。



「美雨ちゃん、大丈夫? 

テスト明けでお疲れかな?」


ぁぁ… えっと…


「大丈夫。 疲れてないよ。 そういうんじゃなくて…」


ー?

私の隣にそっと座って、

Rさんは、さも心配そうに私を覗き込む。


「そうじゃなくて…? 貧血とか…?

戦国甲冑の資料は まだ難しすぎた?」


んんん。。 そうじゃなくて…


「 なんだか…ボーっとしてる…?」


私の額に手を当てる。


Rさんの手の大きさ…


私は子どもみたい。。



「Rさん…」



「ん?」


なんでこんなに 優しく答えるの…



「Rさんからみたら、やっぱり私は子どもかな…?」



「え?」


全く意図しなかった 私の発言に



一瞬フリーズするRさん。



「やっぱり、妹みたいな感じなのかなって… 」


なんだか困ったような顔で 


情けない笑みで見上げた。



「美雨ちゃん… こっち きて。」



膝の上。 って 示される。



素直に お兄さんの膝の上に座る。



Rさんは、うしろから



そのままそっと 私を包んだ。



耳の側で そっと 呟く。



「大事なことだから、ちゃんと言うね。」


私は、覚悟したように ただ 頷く。



「最初に会った頃は、


友達とか 妹みたいに感じてた。


俺も一人っ子だし、


兄弟いたら、こんな感じなのかな…


とか。 


兄弟にしては少し歳離れてるけどね…笑


でも 今は…


ちょっと違う。


正直、少し怖かった。


真っさらな美雨ちゃんを


俺がどうにでもさせられちゃう立場で


手付かずの子なんて、


初めてだから…俺…」




ゆっくりと、でも 迷いのない声に


私はRさんの手をそっと握り返す。



「俺、こう見えて


20代は一頻り遊んできたんだ。


あんまりガツガツしてないでしょ?


でも それは


美雨ちゃんに 魅力を感じないからじゃ


ないんだよ。


美雨ちゃんのこと


大事にしたいと思ったんだ。


女の子にとっての最初って、


きっと 俺らより


大切だと思うから。


だから、美雨ちゃんの希望も


ちゃんと聞かせて欲しいな…。」



…………



私の胸の中で、


色々なものが溢れ出したようだった。


嬉しくて、


やっぱり大人だなって感服して


軽率な私の思いなんかより


何倍も 私の重みを感じてくれて…


こんなに大切にされること 


人生であって いいのかなって


……なにも言葉が出てこなかった。


出てこないけど


精一杯、 ありがとうって 伝えたくて


心からの笑顔で 彼の掌を握る。


溢れた涙を


繋いだままの大きな手で拭ってくれて


そのまま


後ろを向いて 抱きついた。



「……大好き。」



フっ…と笑って、



Rさんは 私の髪を優しく撫でた。


~~~~~~~~


こうやって、シリアスな会話は


彼からされる事が多かった。



バリバリの理系なのに、


私なんかより


ずっと言葉にする事が上手で。



私より繊細な人だった。



でも、


シリアスなままじゃないのが、私たちのスタイルで、


大事な話を終えた後は


こんな事がしてみたいとか、


大いにふざけた話もして、


散々からかわれたり、笑いあったり。


普通のカップルに



体の関係を持つまでの



こういう時間があるものかは


わからないけれど、


なんだか幸せな時間だったな。って


今は すごく 感じる。


Rさんの “今は少し違う" が、


確信に変わるまで、


先輩の家に遊びに行く 


後輩くらいのきもちで


私たちは時間を共にしたのかも知れない。


とても 僅かな 心のバランス。


それを 恋とか 愛とか


言うのかもしれないけれど。


そんな文字すら 浮かばない程、


当時の私は満たされていた。


~~~~~~


……つづく☆
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