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冬磨編

33 セフレっぽくないことをしたかったんだ ※

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「お、天音。ちょいちょい」
 
 シャワーから戻った天音に手招きをした。
 後ろのソファに腰を下ろそうとする天音を、俺は立ち上がってパソコンの前に座らせた。
 
「な……なに?」
「天音。富良野に行こう」
「……え?」
「星を見にさ。約束したろ? な、これ見て?」

 天音をまたぐようにソファに座り、後ろから前のめりにパソコンを覗き込む。
 お互いの頬がふれあってドキドキした。
 あー……キスしたい。
 なんで俺、キスは無しなんて天音に言ったんだろう。
 初めて会ったときから、キスの嫌悪感なんて天音には感じてなかったのにな。ほんとバカだな。

 パソコンに表示されたサイトを見せながら、天音をキャンプに誘った。星を見るためのキャンプ場なんだよ、と説明する。

「ち……ちょっと待って。え……? キャンプ……?」

 案の定、天音が驚いて困惑気味だ。
 でも、俺は知らんぷりを決め込む。予約がいっぱいだから有給が取れないかと、まるで普通のことのように説明した。
 ところが、俺の足の間で天音は何も言わずに黙ってる。
 強引にでもキャンプに決めるつもりだったのに、やっぱりチキンな俺は怖くなった。
 天音の顔を覗き込んで「あー……やっぱ有休は難しいか?」とおずおずとたずねると、思いがけず天音が即答した。

「有休なんてまったく使ってねぇから、全然余裕」
「おっ、マジで?」
「うん」

 思わず心の中で、よしっ! とガッツポーズ。
 やべぇどうしよっ。すげぇ嬉しいっ。
 顔がデロデロになりそうで必死で引き締める。天音とキャンプに行ける。初デートがキャンプってすごくね? 
 マジで幸せすぎるだろ。
 予約の空いてる日と天音の予定と相談して、来月の日曜日に予約を取ることにした。
 天音、意識してくんねぇかな。なんて思いながら、天音を抱きしめるみたいに包み込んでパソコンを操作する。
 ベッドの上以外でこんなにくっつくことはなかなかない。さっき天音が抱きしめてくれたみたいに、抱き合う以外でもっと天音に近づきたかった。

「よしっ。予約完了」

 終わっちゃったな。でも、まだ離れがたい。
 そうだ、予約日時を天音に送らなきゃな。予約まで一ヶ月近くある。忘れられたら困るしな。
 俺は天音を抱きしめるよう包み込み、スマホでキャンプの日時をメッセージで打ち込む。いつもよりもゆっくりと。
 でも、それもあっという間に終わってしまった。

「よし。お前にキャンプの日時送っといたから。絶対忘れんなよ?」
「……忘れねぇよ」

 忘れないという天音の言葉で、喜びに心も身体も包まれて胸が高鳴った。
 素っ気ない言葉が返ってくるだろうと思うところに、ふいに嬉しい言葉をくれる天音にどうしても期待してしまう。
 いや違うだろ。天音はただ日時を忘れないと言ってるだけなのに、俺やばいな。
 天音とキャンプの道具なんかの話をして、いろいろ落ち着いてから俺は言った。

「天音」
「……なに」
「寝よっか」
「……うん」

 天音の頬にキスをしながら、パソコンの電源を落としてパタンと閉じた。
 

 寝室に入り、ベッドに横になった天音の隣に俺も横になる。
 腕枕をしたい気持ちをグッと我慢して、天音を抱き寄せるように腕を乗せて目を閉じた。
 
「おやすみ、天音」
「…………え」

 今日はこのまま何もしないで天音と寄り添って眠りたかった。
 たまにはセフレとしてじゃなく天音と一緒に眠りたかった。

「と……冬磨?」
「ん?」
「…………しねぇの?」
「んー。たまにはゆっくり寝よ」

 天音の胸をポンポンと優しくたたいて、俺は目を閉じ続けた。
 天音の視線が痛いほど刺さってくる。戸惑いが伝わってくる。
 ホテルに行けば絶対に抱く流れになるから、せめて俺の家に来た日は、たまにはこうして恋人気分を味わいたい。
 そう思って、今日はゴムもローションも用意していなかった。
 天音がしたいと言っても絶対にできないようにした。
 たまにはいいよな? いいだろ?
 まだ天音の視線を痛いほど感じる。
 天音、今日はこのまま眠ろう? 
 天音の頭を撫でようかと思ったとき、天音が俺の腕を持ち上げ起き上がった。

「ん、天音? どうした?」

 天音は無言で布団をはぎ、俺の上に馬乗りになる。

「あ、天音?」
「なんだよ、ゆっくり寝ようって」
「あま……」
「やるために会ってんだろ? やんねぇなら帰るぞ」 
 
 俺は驚きすぎて固まった。
 天音はいつも強気な口調だけれど、ベッドの上では常に受け身で、こんな天音を想像もしていなかった。
 天音が俺のズボンに指をかけて下にずらし、ボクサーパンツの上からゆっくりと撫で始めた。

「なぁ、天音」
「うっさい。ちょっと黙れ」

 ボクサーパンツも下げられ、慌てて止めようと口を開いた瞬間に天音が俺のものを咥えた。
 フェラをされたのは人生で初めてで、あまりの気持ちよさに思考が停止した。
 やばい……気持ちいい……天音……っ。
 今日は何もしないつもりだったのに決心がゆらぎそうになる。
 いやダメだ。ゴムがない。絶対にダメだ。
 でも、天音のぎこちないフェラが可愛くて気持ちよくて、情けないことに声が漏れた。

「は……っ、天音……っ……」

 やばい……このまま口に出しちゃいそうだ。
 俺はそっと天音の頭を優しく撫でた。

「天音……っ、もういいよ」
「……やら」
「天音」
「うっはいっ」
「ふはっ。……もー、あんま可愛いことすんなって、天音」

 あんなに抵抗のあったフェラを天音がしてくれた。
 絶対に初めてだったはずだ。それでも俺のを舐めてくれた。
 これにはすごく意味がある気がして、期待がむくむくとふくれあがる。
 やっぱり俺、天音に少しは好かれてるかも。じゃなきゃ天音がフェラなんてしないはず。そうだろ? 天音。
 
 
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