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冬磨編

19 キスがしたい ※

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 好きだと自覚したら、気持ちがあふれて止まらなくなった。
 もう限界だ。今すぐ天音がほしい。

「天音の笑顔でもうずっとバキバキなんだけど……。な、もういい?」

 いつもはもっと天音がトロトロにとろけるくらいに時間をかけるが、今日は本当にもう限界。
 今すぐ天音の中に入りたい……。

「今日も前からな?」
「……やだ」
「慣れだって。何度もやれば慣れるだろ? あとで後ろもやってやるから」

 と、頬にキスをしながらゴムに手を伸ばす。
 天音はそれ以上抵抗しなかった。きっと諦めてるんだろう。そんな顔をしてる。でも、絶対に痛みはなかったはずだし、少しづつでも慣れてくれたらいい。
 今日は絶対イライラしない。天音が安心して目を開いてくれるのを俺は待つ。

「入れるよ」
「……うん」

 天音がまたぎゅっと強く目を閉じる。
 これはこれで……よく見ると可愛いな。
 もう、天音の何もかもが可愛く見える。
 優しく頭を撫でるとふるっと震える天音に、愛しさでいっぱいになった。

 好きだよ……天音。
 俺は、お前が愛しくてたまらないよ。

 天音の頬にキスをして、ゆっくりと天音の中に沈んでいく。

「……ぁ……っ、ぁ……」

 自然と漏れる天音のかすかな喘ぎ声に嬉しくなった。

「うん、いつもの天音の声だ。よかった」
「……ん……っ……」

 天音を好きだと自覚して初めて身体を繋げた。高揚感が半端ない。不覚にも涙がにじんだ。
 マジか……。繋がっただけでこれじゃ先が思いやられる。
 奥まで沈み込み、馴染んだところでゆっくりと腰を動かした。
 天音が怖がらないように、安心させてやりたいという気持ちを込めて優しくゆっくりと中を動く。

「天音、気持ちいか?」

 と、天音の頬をそっと親指で撫でた。
 
「……ん、……きもち……いぃ……っ、……ぁぁっ……」

 天音が背中を仰け反らせてぎゅっと中が締まり、全身に快感が走って身体が震えた。
 やばい……すげぇきもちい……。

「そっか、よかった。目は? 今日も閉じたままか? 開けてくれよ。天音のが見たい」

 そう懇願しながらも、諦めの気持ちが半分。
 ところが、天音の目がゆっくりゆっくり開いて俺を見つめた。
 トロンとして熱のこもった瞳が、俺をまっすぐ見つめてくる。
 その瞬間、ドクドクと心臓が暴れて壊れそうになった。

「天音、やっと見れた……お前の瞳」

 最高に可愛い……天音。
 お前……すげぇ俺が好きじゃね……?
 お前の瞳、すげぇ好きって言ってんじゃん……。違うのかよ……。
 性欲が強いから? それは気持ちいいって瞳なのか?
 マジやばい……俺すげぇ勘違いしちゃいそう……。
 心臓の音がうるさいほど全身に鳴り響く。心臓……痛ぇ……。
 でも、そんなわけないよな……。これはきっとベッドの上だけだ。終わればきっとまた、興味もないって瞳で俺を見るんだろう。
 この瞳が、俺が好きって瞳ならいいのに……。

「……と……ま……っ、ぁ……っぁ……」

 その熱い瞳で名前を呼ばれてゾクゾクと全身が感じた。
 やばい……もう余裕ねぇ……。気持ち良すぎ……マジでやばい。
 俺が奥を突くたびに、かすかな喘ぎ声を上げながら身体を仰け反らせ、ぎゅっと俺に抱きついてくる。
 そしてトロトロにとろけきった顔で熱っぽく俺を見る。
 もう今すぐにでも天音の中で果ててしまいそうなほど余裕がなかった。

 天音……好きだよ……。

 口から出かかって慌てて呑み込む。
 この瞳が、本当に俺を見てくれればいいのに。
 セフレとしてじゃなく……俺を見ろよ……。
 
 そのとき、天音の瞳にみるみる涙が浮かんで、ハッとして動きを止めた。
 全身をビクビク震わせ怯えた天音の表情。恐怖を貼り付けたような天音の顔。
 トラウマのせいか?
 もしかして、これを見せたくないから前が嫌だったのか?
 だからあんなかたくなに後ろにこだわってたのか……。

「天音……」

 ごめんな、天音。気づいてやれなくてごめん。
 身体の震えだけじゃなかったんだな。こんな表情になるほどつらかったのか。何も分かってやれてなくてごめん……天音。
 天音が怯えきった顔で俺を見つめ、あふれた涙が目尻からこぼれた。
 だからいつも、うつ伏せて枕に顔をうずめてたんだな。ずっと弱い自分を隠して強がってたんだ。
 天音の強気な口調も、もしかしてそうなのか?
 弱い自分を隠すよろいだったのか?
 ますます可愛い……天音。
 天音の頬に手を添えて涙を拭った。
 ……キスがしたい。
 無性にそう思って、思わず顔を近づけた。

「と……とぉ……」

 怯えた表情で目をわずかに見開く天音に気づき、すぐに正気に戻る。
 慌てて軌道修正をして、天音の目尻にキスをした。
 やべぇ……本気でキスするとこだった。

「ん……、と……ま……」
「天音……」

 キスの代わりに、天音の唇を親指で撫でた。
 キスをして慰めたかった。
 もう怯えるな。俺はお前を傷つけないよと、優しくキスをしたかった。
 自分でキスは無しって言っておいて何やってんだ。天音もキスはしない主義だ。マジでやばかった。キスで切られたらシャレにならない……。
 目尻にキスを繰り返し指で唇を撫で続け、天音の唇にキスをした気分になる。マジで俺……イタすぎる。

「天音……大丈夫か?」

 また顔を見たら本気でキスをしてしまいそうで、怖くて顔を上げられなかった。

「……うん。大丈夫」
「じゃあ、動くよ?」
「ん……」

 再び天音の中をゆっくりと出入りする。
 ああ……やばい。もたないかも……。

「ぁ……っ、ン、……と……ま……っ……」

 俺にぎゅっとしがみつき、耳元で端ぐ天音の声はマジでやばい。
 こんなに気持ちいいのは初めてだ。
 いままでも天音を抱いて何度もそう思ったけど、前からはマジでやばい。
 顔を見ればとろけた顔に視覚がやられ、顔を首元にうずめれば可愛い喘ぎ声が直接耳に届いて聴覚がやられる。

「……天音……っ」
「あっ……」

 一度ズンッと最奥を突き動きを止め、天音を抱きしめた。
 ほんとやばい……マジでもっていかれそう。
 ゆっくりを顔を上げ天音を見つめた。

「顔が見たいからってわがまま言ったのに……見なかったらだめじゃんな?」

 と、俺は優しく天音に微笑んだ。

「……別に……無理……して見なくていい。嫌なら後ろから――――」
「違うって。そうじゃねぇよ。天音とは……もうずっと前からがいいわ。でも俺……」

 お前の顔見てると……もたねぇんだよ。
 そう思ったら自分でおかしくて吹き出した。

「早漏になっちゃうかも」

 笑いが止まらないまま、俺は再び腰を動かした。
 
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