【完結】本気だと相手にされないのでビッチを演じることにした

たっこ

文字の大きさ
上 下
91 / 154
冬磨編

19 キスがしたい ※

しおりを挟む
 好きだと自覚したら、気持ちがあふれて止まらなくなった。
 もう限界だ。今すぐ天音がほしい。

「天音の笑顔でもうずっとバキバキなんだけど……。な、もういい?」

 いつもはもっと天音がトロトロにとろけるくらいに時間をかけるが、今日は本当にもう限界。
 今すぐ天音の中に入りたい……。

「今日も前からな?」
「……やだ」
「慣れだって。何度もやれば慣れるだろ? あとで後ろもやってやるから」

 と、頬にキスをしながらゴムに手を伸ばす。
 天音はそれ以上抵抗しなかった。きっと諦めてるんだろう。そんな顔をしてる。でも、絶対に痛みはなかったはずだし、少しづつでも慣れてくれたらいい。
 今日は絶対イライラしない。天音が安心して目を開いてくれるのを俺は待つ。

「入れるよ」
「……うん」

 天音がまたぎゅっと強く目を閉じる。
 これはこれで……よく見ると可愛いな。
 もう、天音の何もかもが可愛く見える。
 優しく頭を撫でるとふるっと震える天音に、愛しさでいっぱいになった。

 好きだよ……天音。
 俺は、お前が愛しくてたまらないよ。

 天音の頬にキスをして、ゆっくりと天音の中に沈んでいく。

「……ぁ……っ、ぁ……」

 自然と漏れる天音のかすかな喘ぎ声に嬉しくなった。

「うん、いつもの天音の声だ。よかった」
「……ん……っ……」

 天音を好きだと自覚して初めて身体を繋げた。高揚感が半端ない。不覚にも涙がにじんだ。
 マジか……。繋がっただけでこれじゃ先が思いやられる。
 奥まで沈み込み、馴染んだところでゆっくりと腰を動かした。
 天音が怖がらないように、安心させてやりたいという気持ちを込めて優しくゆっくりと中を動く。

「天音、気持ちいか?」

 と、天音の頬をそっと親指で撫でた。
 
「……ん、……きもち……いぃ……っ、……ぁぁっ……」

 天音が背中を仰け反らせてぎゅっと中が締まり、全身に快感が走って身体が震えた。
 やばい……すげぇきもちい……。

「そっか、よかった。目は? 今日も閉じたままか? 開けてくれよ。天音のが見たい」

 そう懇願しながらも、諦めの気持ちが半分。
 ところが、天音の目がゆっくりゆっくり開いて俺を見つめた。
 トロンとして熱のこもった瞳が、俺をまっすぐ見つめてくる。
 その瞬間、ドクドクと心臓が暴れて壊れそうになった。

「天音、やっと見れた……お前の瞳」

 最高に可愛い……天音。
 お前……すげぇ俺が好きじゃね……?
 お前の瞳、すげぇ好きって言ってんじゃん……。違うのかよ……。
 性欲が強いから? それは気持ちいいって瞳なのか?
 マジやばい……俺すげぇ勘違いしちゃいそう……。
 心臓の音がうるさいほど全身に鳴り響く。心臓……痛ぇ……。
 でも、そんなわけないよな……。これはきっとベッドの上だけだ。終わればきっとまた、興味もないって瞳で俺を見るんだろう。
 この瞳が、俺が好きって瞳ならいいのに……。

「……と……ま……っ、ぁ……っぁ……」

 その熱い瞳で名前を呼ばれてゾクゾクと全身が感じた。
 やばい……もう余裕ねぇ……。気持ち良すぎ……マジでやばい。
 俺が奥を突くたびに、かすかな喘ぎ声を上げながら身体を仰け反らせ、ぎゅっと俺に抱きついてくる。
 そしてトロトロにとろけきった顔で熱っぽく俺を見る。
 もう今すぐにでも天音の中で果ててしまいそうなほど余裕がなかった。

 天音……好きだよ……。

 口から出かかって慌てて呑み込む。
 この瞳が、本当に俺を見てくれればいいのに。
 セフレとしてじゃなく……俺を見ろよ……。
 
 そのとき、天音の瞳にみるみる涙が浮かんで、ハッとして動きを止めた。
 全身をビクビク震わせ怯えた天音の表情。恐怖を貼り付けたような天音の顔。
 トラウマのせいか?
 もしかして、これを見せたくないから前が嫌だったのか?
 だからあんなかたくなに後ろにこだわってたのか……。

「天音……」

 ごめんな、天音。気づいてやれなくてごめん。
 身体の震えだけじゃなかったんだな。こんな表情になるほどつらかったのか。何も分かってやれてなくてごめん……天音。
 天音が怯えきった顔で俺を見つめ、あふれた涙が目尻からこぼれた。
 だからいつも、うつ伏せて枕に顔をうずめてたんだな。ずっと弱い自分を隠して強がってたんだ。
 天音の強気な口調も、もしかしてそうなのか?
 弱い自分を隠すよろいだったのか?
 ますます可愛い……天音。
 天音の頬に手を添えて涙を拭った。
 ……キスがしたい。
 無性にそう思って、思わず顔を近づけた。

「と……とぉ……」

 怯えた表情で目をわずかに見開く天音に気づき、すぐに正気に戻る。
 慌てて軌道修正をして、天音の目尻にキスをした。
 やべぇ……本気でキスするとこだった。

「ん……、と……ま……」
「天音……」

 キスの代わりに、天音の唇を親指で撫でた。
 キスをして慰めたかった。
 もう怯えるな。俺はお前を傷つけないよと、優しくキスをしたかった。
 自分でキスは無しって言っておいて何やってんだ。天音もキスはしない主義だ。マジでやばかった。キスで切られたらシャレにならない……。
 目尻にキスを繰り返し指で唇を撫で続け、天音の唇にキスをした気分になる。マジで俺……イタすぎる。

「天音……大丈夫か?」

 また顔を見たら本気でキスをしてしまいそうで、怖くて顔を上げられなかった。

「……うん。大丈夫」
「じゃあ、動くよ?」
「ん……」

 再び天音の中をゆっくりと出入りする。
 ああ……やばい。もたないかも……。

「ぁ……っ、ン、……と……ま……っ……」

 俺にぎゅっとしがみつき、耳元で端ぐ天音の声はマジでやばい。
 こんなに気持ちいいのは初めてだ。
 いままでも天音を抱いて何度もそう思ったけど、前からはマジでやばい。
 顔を見ればとろけた顔に視覚がやられ、顔を首元にうずめれば可愛い喘ぎ声が直接耳に届いて聴覚がやられる。

「……天音……っ」
「あっ……」

 一度ズンッと最奥を突き動きを止め、天音を抱きしめた。
 ほんとやばい……マジでもっていかれそう。
 ゆっくりを顔を上げ天音を見つめた。

「顔が見たいからってわがまま言ったのに……見なかったらだめじゃんな?」

 と、俺は優しく天音に微笑んだ。

「……別に……無理……して見なくていい。嫌なら後ろから――――」
「違うって。そうじゃねぇよ。天音とは……もうずっと前からがいいわ。でも俺……」

 お前の顔見てると……もたねぇんだよ。
 そう思ったら自分でおかしくて吹き出した。

「早漏になっちゃうかも」

 笑いが止まらないまま、俺は再び腰を動かした。
 
しおりを挟む
◆よろしければ読んでみてください◆

マスターの日常 短編集
冬磨×天音のおまけ♡LINE風会話
感想 171

あなたにおすすめの小説

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...