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34 もっと初心に戻ろう *
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ゲイビではどうやってたっけ。必死でぐるぐる考えた。そうだ、唾液とかどっちかが出したやつで後ろを……。
俺は冬磨の上で片足だけ脱いで、ゲイビを思い出しながら唾液を手のひらに落とし、それで後ろを広げ始める。
「……ん……っ……」
「……天音、本気?」
「ほん……き……だけど」
中をいじりながらはちゃんと話せない。
俺は指を入れたまま動きを止めた。
「俺……生は初めてだよ。本当に。フェラだって今のが初めてだった。絶対病気は持ってねぇよ」
「そんなこと、わかってるよ」
冬磨の手が俺の足を優しく撫でる。
「だったらいいじゃん……な、やろ?」
冬磨がいつになく真剣な表情で俺を見つめる。
ドキドキしながら冬磨の返事を待った。
「……だめ。俺、セフレとは生でやらない」
愕然とした。
フェラはよくてもゴムなしはだめなんだ。
「お前もさ。そういうのは、本気で好きになった奴とだけにしな」
俺が本気で好きなのは冬磨だもん……。
「それともさ……」
冬磨が俺の顔をじっと見つめた。
何かを言いかけてやめて、スッと視線をそらされる。
「あー……いや、なんでもない。天音、横になって」
それとも、なに?
なにを言おうとしたの?
冬磨は中に入れていた俺の指を優しく引き抜いてティッシュで拭うと、そっと俺をベッドに寝かせる。
冬磨……なにを言いかけたの?
気になるよ……。
「天音、今日は俺が舐めてやるよ」
「……いい。やんないなら、もういい」
ぷいっと冬磨から視線をはずして横を向く。
舐められたって、後ろはうずいたままだもん。
冬磨と繋がれないなら、もう寝てしまいたい。
「拗ねんなよ、天音」
「別に拗ねてねぇ。てか、やんないなら帰るっつたじゃん」
「わかってる。だから舐めてやるって。な?」
「もういい。寝る」
俺はパンツとズボンをはいて冬磨に背中を向けた。
冬磨……さっきなに言いかけたの……?
もう俺の頭の中はそればかり気になってる。
それともさ……の続きを。
「おやすみ。天音」
俺があんなことをする前は、俺の身体に腕を乗せてくれていたのに、今は乗せてくれない。どうして?
サッと心臓が冷える。
さっきの俺は……冬磨の嫌いな執着する男だったんじゃないか。
ゴムが無いって言ってるのに、それでもやろうとする面倒な奴。どう考えても冬磨の嫌いな人種だ。
それともさ……の続きは『お前、俺が好きなの?』だったんじゃ……。
ドクドクと心臓が壊れそうになった。
冬磨の家に入れてもらえて、キャンプの予約までして、また俺は勘違いした。
フェラはいいんだから、俺は特別だと思い込んだ。生だっていいんだって思い込んだ。
どうしようどうしよう……っ。
冬磨に本気じゃないって、執着してないって証明しないと……っ。
やっぱり敦司にセフレの振りしてもらおう。
あんなばかなこと、しなきゃよかった……っ。
背中に感じる冬磨の視線が怖い。
やっぱり帰るって言えばよかった、と後悔しながら、俺は眠れない夜を過ごした。
◇
「は? だからってその足でウチにきたのかよ」
「だってっ!」
半泣きになりながら敦司の家に転がり込んだ。
朝方少しウトウトした頃、冬磨の起きる気配にビクッとして目が覚めた。
怖い。怖い。冬磨の顔が見られない。
むくっと起き上がってベッドから這い出た。
「……天音? 起きるの早いな。朝メシ、パンでいいか?」
その優しい言葉と声色にホッとしたけれど、冬磨は優しいからわからない。
「もう帰るから。いらない」
「なんで? 朝メシくらい食ってけよ」
「いい。もう帰る」
もっと初心に戻ろう。最近は気がゆるみ過ぎだった。
もっと冬磨に興味なさそうに。もっと無表情に……。
「まだ拗ねてんの? それとも怒ってる?」
「……別に。拗ねてねぇし怒ってねぇ。朝になったから帰るだけ。ただのセフレなんだから普通だろ」
淡々と言葉にしながら服に着替えて玄関に向かう。
追いかけてきた冬磨の顔を、一度だけ振り返って見た。
いつも通りの冬磨だった。さっさと帰ろうとしてる俺に、普通に優しく微笑んだ。
「次からはちゃんと用意しておくから。もう拗ねんなよ?」
「だから。拗ねてねぇっつってんだろ」
「ふは。うん、じゃあまたな」
「……うん」
もっと引き止めてくれるかと思った。止められたって帰るつもりだったのに、そうされないと寂しくて泣きそうになった。
冬磨の家を出て俺は駆け出した。
すぐそこにある敦司の家が、オアシスのように感じる。早く、早くあそこに行きたい。
「敦司ぃー……っ」
「泣くなって。あーもー」
ソファに倒れ込んだ俺に、敦司がティッシュの箱を渡してきた。
俺は冬磨の上で片足だけ脱いで、ゲイビを思い出しながら唾液を手のひらに落とし、それで後ろを広げ始める。
「……ん……っ……」
「……天音、本気?」
「ほん……き……だけど」
中をいじりながらはちゃんと話せない。
俺は指を入れたまま動きを止めた。
「俺……生は初めてだよ。本当に。フェラだって今のが初めてだった。絶対病気は持ってねぇよ」
「そんなこと、わかってるよ」
冬磨の手が俺の足を優しく撫でる。
「だったらいいじゃん……な、やろ?」
冬磨がいつになく真剣な表情で俺を見つめる。
ドキドキしながら冬磨の返事を待った。
「……だめ。俺、セフレとは生でやらない」
愕然とした。
フェラはよくてもゴムなしはだめなんだ。
「お前もさ。そういうのは、本気で好きになった奴とだけにしな」
俺が本気で好きなのは冬磨だもん……。
「それともさ……」
冬磨が俺の顔をじっと見つめた。
何かを言いかけてやめて、スッと視線をそらされる。
「あー……いや、なんでもない。天音、横になって」
それとも、なに?
なにを言おうとしたの?
冬磨は中に入れていた俺の指を優しく引き抜いてティッシュで拭うと、そっと俺をベッドに寝かせる。
冬磨……なにを言いかけたの?
気になるよ……。
「天音、今日は俺が舐めてやるよ」
「……いい。やんないなら、もういい」
ぷいっと冬磨から視線をはずして横を向く。
舐められたって、後ろはうずいたままだもん。
冬磨と繋がれないなら、もう寝てしまいたい。
「拗ねんなよ、天音」
「別に拗ねてねぇ。てか、やんないなら帰るっつたじゃん」
「わかってる。だから舐めてやるって。な?」
「もういい。寝る」
俺はパンツとズボンをはいて冬磨に背中を向けた。
冬磨……さっきなに言いかけたの……?
もう俺の頭の中はそればかり気になってる。
それともさ……の続きを。
「おやすみ。天音」
俺があんなことをする前は、俺の身体に腕を乗せてくれていたのに、今は乗せてくれない。どうして?
サッと心臓が冷える。
さっきの俺は……冬磨の嫌いな執着する男だったんじゃないか。
ゴムが無いって言ってるのに、それでもやろうとする面倒な奴。どう考えても冬磨の嫌いな人種だ。
それともさ……の続きは『お前、俺が好きなの?』だったんじゃ……。
ドクドクと心臓が壊れそうになった。
冬磨の家に入れてもらえて、キャンプの予約までして、また俺は勘違いした。
フェラはいいんだから、俺は特別だと思い込んだ。生だっていいんだって思い込んだ。
どうしようどうしよう……っ。
冬磨に本気じゃないって、執着してないって証明しないと……っ。
やっぱり敦司にセフレの振りしてもらおう。
あんなばかなこと、しなきゃよかった……っ。
背中に感じる冬磨の視線が怖い。
やっぱり帰るって言えばよかった、と後悔しながら、俺は眠れない夜を過ごした。
◇
「は? だからってその足でウチにきたのかよ」
「だってっ!」
半泣きになりながら敦司の家に転がり込んだ。
朝方少しウトウトした頃、冬磨の起きる気配にビクッとして目が覚めた。
怖い。怖い。冬磨の顔が見られない。
むくっと起き上がってベッドから這い出た。
「……天音? 起きるの早いな。朝メシ、パンでいいか?」
その優しい言葉と声色にホッとしたけれど、冬磨は優しいからわからない。
「もう帰るから。いらない」
「なんで? 朝メシくらい食ってけよ」
「いい。もう帰る」
もっと初心に戻ろう。最近は気がゆるみ過ぎだった。
もっと冬磨に興味なさそうに。もっと無表情に……。
「まだ拗ねてんの? それとも怒ってる?」
「……別に。拗ねてねぇし怒ってねぇ。朝になったから帰るだけ。ただのセフレなんだから普通だろ」
淡々と言葉にしながら服に着替えて玄関に向かう。
追いかけてきた冬磨の顔を、一度だけ振り返って見た。
いつも通りの冬磨だった。さっさと帰ろうとしてる俺に、普通に優しく微笑んだ。
「次からはちゃんと用意しておくから。もう拗ねんなよ?」
「だから。拗ねてねぇっつってんだろ」
「ふは。うん、じゃあまたな」
「……うん」
もっと引き止めてくれるかと思った。止められたって帰るつもりだったのに、そうされないと寂しくて泣きそうになった。
冬磨の家を出て俺は駆け出した。
すぐそこにある敦司の家が、オアシスのように感じる。早く、早くあそこに行きたい。
「敦司ぃー……っ」
「泣くなって。あーもー」
ソファに倒れ込んだ俺に、敦司がティッシュの箱を渡してきた。
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