上 下
22 / 149

22 イきたくないのにっ ※

しおりを挟む
「……ん……っ、ン……、と……ま……」
「天音。クソセフレのおかげで余裕だわ。天音のイク顔いっぱい見せろよ」
「は……、いっぱいって、ばか……じゃね……っ、ンッ……」

 イク顔って俺どんな顔してるんだろ……っ。
 冬磨のイク顔を見られると思ってドキドキしてたけど、俺のも見られるって考えてなかったっ。
 恥ずかしいっ。どうしようっ。

「ふはっ。もーなんだろな。天音がベッドで可愛くないこと言うと余計可愛いんだけど」

 ほんとやばい、と極上に笑う冬磨に胸が熱く燃えた。
 どうしよう……。もう俺、冬磨を独り占めにしたい。
 冬磨のこんな顔、他のセフレはいつも見てきたんだと思うと、また嫉妬で苦しくなる。
 もっと早く敦司に相談していれば。
 もっと早くキスマークを付けていれば。
 そうすれば、こんなに幸せな冬磨との時間がもっと早く手に入ったのに……。

「あぁ……っ、……ぁ……っ、とぉ……ま……っ……」
「天音、気持ちい?」
「ぅん……っ、きもち……ぃ……っ……」
「お前が感じてる顔……すげぇクる。は……っ、やば……い……」

 冬磨は腰の動きを止めて顔をゆがめる。
 俺を見つめて苦笑して「はは……情けねぇ……」とつぶやいて、俺の頬にキスを落とした。

「すげぇ余裕だと思ったのに……」

 そんな冬磨に愛しさがあふれて、俺は首に腕を回してぎゅうっと抱きついた。

「とぉま……」

 好き……。
 心の中で冬磨に伝える。
 そして、冬磨の頬にキスをした。初めて自分からキスをした。
 目を見られたら終わるかもしれない、そう思っていたから、キスなんてもっと怖くて自分からはできなかった。
 でも、大丈夫だった。絶対に気持ちがだだ漏れのはずの目。それを見られても大丈夫だった。
 だから、したくてしたくてずっと我慢していたキスをした。
 心臓が壊れそうなほどドキドキしながら、冬磨の頬にキスをした。

 冬磨……大好き。ずっと冬磨とこうしていたい……。
 
「……キスなんて……初めてじゃん、天音」

 突然ズンッと最奥を突かれた。

「あぁ……っ……!」

 冬磨が顔を上げて優しく俺を見つめる。

「ほっぺにチュウがこんなクるとか……俺やばいな……」

 と冬磨が苦笑して、余裕のなさそうな顔で中を深く突いてくる。

「あ……っ、ぁっ、や……っ……」
「天音、後ろより前のが好きだろ? 可愛い声がさらに可愛い……」
「ん……すき……っ、すき、……ぁ……っ」

 冬磨……好き……。

「どんな顔でイクのか早く見せて……っ、天音」
「ンぁぁ……っ! ふか……ふかぃ……っ、や……ぁ……っ」
「イッて、天音っ」
「あっ、や……っ、んんー……っ! と……まっ、とぉま……っっ!」

 冬磨の顔を見ながらの絶頂は、今までとは比べ物にならないほど気持ちがよくて幸せだった。
 冬磨にしがみついていた手が、ストンとベッドの上に落ちた。もう身体に力が入らない。
 頬を優しく撫でられ、目を閉じている自分に気がついた。
 ゆっくりと目を開くと、冬磨が目尻を下げて俺を見つめて破顔する。

「天音、最高に可愛い……」
「と……ま……」
「泣くほど気持ちよかった?」

 その言葉で、自分がまた涙を流していたんだと知る。

「今は怯えてねぇもんな?」

 気持ちいいからじゃないよ……冬磨。怯えてるからでもない。
 冬磨に抱かれて俺が泣くのは、いつも幸せだからだよ……。

「もうちょっと俺に付き合ってな?」

 俺の身体を少し休ませてから、冬磨はまたゆっくりと中を優しく出入りする。

「ん……っ、……はぁ……」
「つらくないか?」
「だい……じょぶ……」
「ん……よかった」

 余裕のなさそうな冬磨の表情。それでも俺のためにゆっくりと動く冬磨の優しさが愛おしい。
 冬磨のイク顔をちゃんと見たいから、次は冬磨だけイッてほしい。
 だから「俺はいいからイッて」と言ったのに冬磨は聞いてくれない。
 容赦なく手と唇で敏感なところを愛撫される。
 冬磨のイク顔が見たいんだってばっ。
 だから、「もうしんどいんだってっ」「俺はいいっつってんだろ!」と繰り返し訴えたのに、冬磨はクスクス笑って「あー可愛い」と破顔するだけだった。

「や……っ、ちく……びっ、やだ……っ、あ……っ……!」
「も……俺限界……っ、天音もイッて」
「やだっ、やだっ、イッ……っ」

 イきたくないのにっ!

「あぁぁ……っっ!」
「天音……っ……」

 必死で冬磨の顔を見ていたけれど、結局俺が先にイかされて頭が真っ白で、冬磨のイク顔を覚えていない。
 冬磨のイク顔……見られる日なんて来るのかな……。


 
しおりを挟む
感想 162

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...