5 / 154
5 冬磨のセフレに……
しおりを挟む
「誰かと待ち合わせ?」
椅子に腰を下ろしながら冬磨が俺に問いかける。
「いや? 噂の美形を見に来た」
「ああ、そうなんだ」
冬磨は少しも驚かず、淡々とそう口にした。
聞き返さずとも自分のことだとわかってる口振り。
謙遜もしないし喜びもしない。
きっといつものことなんだろう。もしかすると、最初にマスターが苦笑したように、俺目当てか、とガッカリしてるのかも。
「うーわっ。いま自分で美形って認めたな?」
冬磨レベルだと、謙遜したほうが嫌味だからそれでいい。
「そこはさぁ。普通『いや俺、全然美形じゃないし』とか謙遜しねぇ?」
でも俺はあえて嫌味たっぷりに言った。気に入られようとはしない。あくまでも冬磨には興味なんてなさそうに振る舞う。
「いや俺、全然美形じゃないしー」
突然冬磨が俺の言った言葉をオウム返しで棒読みした。
目を細めて、どこかしらけた風を漂わせている。
「ぷはっ」
そんな冬磨に思わず吹き出してしまった。
あ、やばい、素で笑っちゃった。
ビッチ天音なら、もうちょっと皮肉な笑い方をしなきゃだめなのに。
冬磨を見ると、俺が笑ったのがそんなに嬉しかったのか、すごく優しげに俺を見て微笑んでいた。
冬磨の笑顔を見ると胸が張り裂けそうになる。気持ちがバレてしまいそうで目を逸らしたくなる。
でも、ビッチ天音ならいちいち目を逸らさない。見つめられたって平静でいないと。
俺は慌てて話を戻した。
「なんかさー。噂だと、まるで王子様だとか、芸能人よりカッコイイとか、神レベルだとか、あんまり大袈裟だから。どんなもんか気になりすぎてさ」
ほかの店には行ったこともないし、本当の噂なんて俺は知らない。だから、俺が勝手にそう思ってるだけの言葉たちを並べてみた。
二人とも表情が変わらないところを見ると、やっぱり同じような噂でいっぱいなんだろう。
「で? 実物はどうだった?」
マスターがニヤニヤして俺を見る。
「うん、まぁ大袈裟ではなかったかな? でも、神レベルはねぇな」
俺は、フンと鼻で笑う仕草を見せる。
「おい冬磨、神レベル否定されたぞ?」
「嬉しいね。否定されるとホッとするわ」
本当に嬉しいと思ってるみたいな表情で、冬磨は酒の入ったグラスをかたむける。
「うわ、その台詞が言えちゃうってのがもうやばいな」
「そう、冬磨はやばいレベルだからね」
そろそろ潮時かな。
このままずっと一緒にいたいけど、本気じゃない、興味もない、そう思っていると信じてもらうためには執着してはだめだ。
まずはビッチ天音として知り合えて上々。
「んじゃ、満足したから俺帰るわ」
「えっ?」
腰を上げようとしたら、マスターが驚いた声を上げる。
「なに?」
「え? いや、てっきり冬磨にお誘いかけると思ってた」
「は? なんで?」
「大袈裟じゃなかったってことは美形だって認めたんだろ? 流れ的にそうかなって思って」
「ないね。それはない」
マスターほんとありがとう。この流れ、自然すぎる。今後、どうやってこの先の話題を持ってくるか悩んでた。マスター好きっ。
「はは。俺、天音にとってはないんだ」
「うん、ないね。だって俺……」
ここで俺は、最低なことを口にする。ごめんね、冬磨。
「病気うつされたくねぇし」
「は…………」
ぶはっとマスターが吹き出した。
冬磨は、ぽかんとしてる。
「だって。絶対相手にしてもらえないって噂だけどさ。会ってみてわかったわ。あんた、セフレ多すぎて忙しいから新しい人相手にできねぇだけだろ?」
マスターがさらに笑って腹を抱えた。
冬磨がクッと声を上げて苦笑する。
「まぁ、正解かな」
「やっぱりね。俺そこまでの奴は無理。信用出来ねぇし」
冬磨が初めて見せる表情で俺を見る。
どこか、なにかを探る目。観察するような目。
「天音は、セフレとかいないタイプ?」
「いや? てかセフレしかいない。俺は誰も好きにならないから」
セフレがいること、誰も好きにならないこと、病気は絶対に持ってないこと、ちゃんと伝えることができた。
病気どころか、そもそも俺経験ないしな……。
あの日、冬磨は病気が怖いと言っていた。だからどうしてもこの流れが必要だった。傷つけちゃったかな……。
まさか一日で達成できると思ってなかった。もうマスターには足を向けて寝られない。ありがとうマスター。
「俺を病原菌みたいに言うってことは、天音はよっぽどちゃんとしてるんだな?」
「当たり前だろ? ゴム付けない奴とはしたこともねぇよ」
誰ともしたことがないのにこんな台詞、ほんと冷や汗が出る。
「ふぅん。俺もそこはちゃんとしてるぞ?」
「あっそ。じゃあ病原菌扱いは訂正してやるよ」
「それはよかった」
ここまで達成できたらもう上々すぎる。
あとはもっと会う回数を増やして俺を知ってもらう。信用してもらう。俺も冬磨を信用していく過程を少しづつ見せていけば…………。
「天音。俺をセフレの一人に追加しない?」
「…………は?」
冬磨……いま、……え?
俺も冬磨を信用していく過程を………っ。過程をっ。
こんなこと、想定もしてなかった。
俺、どう反応したらいいの?
やばい、もう完全に素の俺だ。驚きすぎてビッチ天音が消えてしまった。
「ぶっはっ!」
突然、冬磨が派手に吹き出した。
一緒にマスターもまた笑い転げる。
「まさか冬磨の誘い受けて唖然とする奴がいるなんてな?」
「すげぇ。俺、今日日記つけっかな。誘ったら唖然とされました、マルって」
二人はずっと笑い転げてる。
俺は夢でも見てるかのように惚けてしまって、ビッチ天音に再度なりきるまでにかなりの時間を要した。
でも、その反応が逆によかったみたいだ。
俺が冬磨に本気じゃないという嘘が、ますます本当らしくなった。
「じゃあ天音。行く?」
「行く……?」
どこに?
聞き返そうとしてハッとした。
どこって……どこって決まってるじゃん。
まさか今日いますぐっ?!
身体中から汗という汗がドッと流れ出た気がした。
嘘だよね。誰か嘘だって言って……っ。
椅子に腰を下ろしながら冬磨が俺に問いかける。
「いや? 噂の美形を見に来た」
「ああ、そうなんだ」
冬磨は少しも驚かず、淡々とそう口にした。
聞き返さずとも自分のことだとわかってる口振り。
謙遜もしないし喜びもしない。
きっといつものことなんだろう。もしかすると、最初にマスターが苦笑したように、俺目当てか、とガッカリしてるのかも。
「うーわっ。いま自分で美形って認めたな?」
冬磨レベルだと、謙遜したほうが嫌味だからそれでいい。
「そこはさぁ。普通『いや俺、全然美形じゃないし』とか謙遜しねぇ?」
でも俺はあえて嫌味たっぷりに言った。気に入られようとはしない。あくまでも冬磨には興味なんてなさそうに振る舞う。
「いや俺、全然美形じゃないしー」
突然冬磨が俺の言った言葉をオウム返しで棒読みした。
目を細めて、どこかしらけた風を漂わせている。
「ぷはっ」
そんな冬磨に思わず吹き出してしまった。
あ、やばい、素で笑っちゃった。
ビッチ天音なら、もうちょっと皮肉な笑い方をしなきゃだめなのに。
冬磨を見ると、俺が笑ったのがそんなに嬉しかったのか、すごく優しげに俺を見て微笑んでいた。
冬磨の笑顔を見ると胸が張り裂けそうになる。気持ちがバレてしまいそうで目を逸らしたくなる。
でも、ビッチ天音ならいちいち目を逸らさない。見つめられたって平静でいないと。
俺は慌てて話を戻した。
「なんかさー。噂だと、まるで王子様だとか、芸能人よりカッコイイとか、神レベルだとか、あんまり大袈裟だから。どんなもんか気になりすぎてさ」
ほかの店には行ったこともないし、本当の噂なんて俺は知らない。だから、俺が勝手にそう思ってるだけの言葉たちを並べてみた。
二人とも表情が変わらないところを見ると、やっぱり同じような噂でいっぱいなんだろう。
「で? 実物はどうだった?」
マスターがニヤニヤして俺を見る。
「うん、まぁ大袈裟ではなかったかな? でも、神レベルはねぇな」
俺は、フンと鼻で笑う仕草を見せる。
「おい冬磨、神レベル否定されたぞ?」
「嬉しいね。否定されるとホッとするわ」
本当に嬉しいと思ってるみたいな表情で、冬磨は酒の入ったグラスをかたむける。
「うわ、その台詞が言えちゃうってのがもうやばいな」
「そう、冬磨はやばいレベルだからね」
そろそろ潮時かな。
このままずっと一緒にいたいけど、本気じゃない、興味もない、そう思っていると信じてもらうためには執着してはだめだ。
まずはビッチ天音として知り合えて上々。
「んじゃ、満足したから俺帰るわ」
「えっ?」
腰を上げようとしたら、マスターが驚いた声を上げる。
「なに?」
「え? いや、てっきり冬磨にお誘いかけると思ってた」
「は? なんで?」
「大袈裟じゃなかったってことは美形だって認めたんだろ? 流れ的にそうかなって思って」
「ないね。それはない」
マスターほんとありがとう。この流れ、自然すぎる。今後、どうやってこの先の話題を持ってくるか悩んでた。マスター好きっ。
「はは。俺、天音にとってはないんだ」
「うん、ないね。だって俺……」
ここで俺は、最低なことを口にする。ごめんね、冬磨。
「病気うつされたくねぇし」
「は…………」
ぶはっとマスターが吹き出した。
冬磨は、ぽかんとしてる。
「だって。絶対相手にしてもらえないって噂だけどさ。会ってみてわかったわ。あんた、セフレ多すぎて忙しいから新しい人相手にできねぇだけだろ?」
マスターがさらに笑って腹を抱えた。
冬磨がクッと声を上げて苦笑する。
「まぁ、正解かな」
「やっぱりね。俺そこまでの奴は無理。信用出来ねぇし」
冬磨が初めて見せる表情で俺を見る。
どこか、なにかを探る目。観察するような目。
「天音は、セフレとかいないタイプ?」
「いや? てかセフレしかいない。俺は誰も好きにならないから」
セフレがいること、誰も好きにならないこと、病気は絶対に持ってないこと、ちゃんと伝えることができた。
病気どころか、そもそも俺経験ないしな……。
あの日、冬磨は病気が怖いと言っていた。だからどうしてもこの流れが必要だった。傷つけちゃったかな……。
まさか一日で達成できると思ってなかった。もうマスターには足を向けて寝られない。ありがとうマスター。
「俺を病原菌みたいに言うってことは、天音はよっぽどちゃんとしてるんだな?」
「当たり前だろ? ゴム付けない奴とはしたこともねぇよ」
誰ともしたことがないのにこんな台詞、ほんと冷や汗が出る。
「ふぅん。俺もそこはちゃんとしてるぞ?」
「あっそ。じゃあ病原菌扱いは訂正してやるよ」
「それはよかった」
ここまで達成できたらもう上々すぎる。
あとはもっと会う回数を増やして俺を知ってもらう。信用してもらう。俺も冬磨を信用していく過程を少しづつ見せていけば…………。
「天音。俺をセフレの一人に追加しない?」
「…………は?」
冬磨……いま、……え?
俺も冬磨を信用していく過程を………っ。過程をっ。
こんなこと、想定もしてなかった。
俺、どう反応したらいいの?
やばい、もう完全に素の俺だ。驚きすぎてビッチ天音が消えてしまった。
「ぶっはっ!」
突然、冬磨が派手に吹き出した。
一緒にマスターもまた笑い転げる。
「まさか冬磨の誘い受けて唖然とする奴がいるなんてな?」
「すげぇ。俺、今日日記つけっかな。誘ったら唖然とされました、マルって」
二人はずっと笑い転げてる。
俺は夢でも見てるかのように惚けてしまって、ビッチ天音に再度なりきるまでにかなりの時間を要した。
でも、その反応が逆によかったみたいだ。
俺が冬磨に本気じゃないという嘘が、ますます本当らしくなった。
「じゃあ天音。行く?」
「行く……?」
どこに?
聞き返そうとしてハッとした。
どこって……どこって決まってるじゃん。
まさか今日いますぐっ?!
身体中から汗という汗がドッと流れ出た気がした。
嘘だよね。誰か嘘だって言って……っ。
129
あなたにおすすめの小説
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
必要だって言われたい
ちゃがし
BL
<42歳絆され子持ちコピーライター×30歳モテる一途な恋の初心者営業マン>
樽前アタル42歳、子持ち、独身、広告代理店勤務のコピーライター、通称タルさん。
そんなしがない中年オヤジの俺にも、気にかけてくれる誰かというのはいるもので。
ひとまわり年下の後輩営業マン麝香要は、見た目がよく、仕事が出来、モテ盛りなのに、この5年間ずっと、俺のようなおっさんに毎年バレンタインチョコを渡してくれる。
それがこの5年間、ずっと俺の心の支えになっていた。
5年間変わらずに待ち続けてくれたから、今度は俺が少しずつその気持ちに答えていきたいと思う。
樽前 アタル(たるまえ あたる)42歳
広告代理店のコピーライター、通称タルさん。
妻を亡くしてからの10年間、高校生の一人息子、凛太郎とふたりで暮らしてきた。
息子が成人するまでは一番近くで見守りたいと願っているため、社内外の交流はほとんど断っている。
5年間、バレンタインの日にだけアプローチしてくる一回り年下の後輩営業マンが可愛いけれど、今はまだ息子が優先。
春からは息子が大学生となり、家を出ていく予定だ。
だからそれまでは、もうしばらく待っていてほしい。
麝香 要(じゃこう かなめ)30歳
広告代理店の営業マン。
見た目が良く仕事も出来るため、年齢=モテ期みたいな人生を送ってきた。
来るもの拒まず去る者追わずのスタンスなので経験人数は多いけれど、
タルさんに出会うまで、自分から人を好きになったことも、本気の恋もしたことがない。
そんな要が入社以来、ずっと片思いをしているタルさん。
1年間溜めに溜めた勇気を振り絞って、毎年バレンタインの日にだけアプローチをする。
この5年間、毎年食事に誘ってはみるけれど、シングルファザーのタルさんの第一優先は息子の凛太郎で、
要の誘いには1度も乗ってくれたことがない。
今年もダメもとで誘ってみると、なんと返事はOK。
舞い上がってしまってそれ以来、ポーカーフェイスが保てない。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる