ふれていたい、永遠に

たっこ

文字の大きさ
上 下
128 / 173
番外編

大晦日〜年越し✦side蓮✦4

しおりを挟む
 モゾモゾと腕の中でなにかが動く感触に、ぼんやりと意識が戻った。
 
「……れん。俺のれんー。好きぃ。めっちゃ好き。うー……好きぃ。愛してるー……」
 
 大好きな秋さんの声だ、と嬉しくなって気分がふわふわした。胸にグリグリと顔を押し付けてくる秋さんの頭をそっと撫でる。

「んぁ……? 起きたぁ? 俺のれん、起きたぁ?」
「秋さん……可愛い……ん、お酒くさい……」

 ぼやっとした頭で、めずらしいなと思って笑った。

「れんー。ぎゅってしてー。んぁ、まって。やっぱキスがいぃ。キスー」
「ふふ……うん……」

 頭がぽわぽわしたまま、腕の中にいる秋さんにキスをした。お酒の匂いよりも歯みがき粉の味でスースーするのが、秋さんらしいなと笑みがもれた。
 ついばむように優しいキスを繰り返す。俺のうなじをスルスルと撫でる秋さんの手が気持ちいい。

「……ん、……れん……」
 
 可愛く甘えるように動く秋さんの舌に、俺も同じように返す。本気モードじゃない甘えたキスに、二人でクスクス笑いながら舌を絡めた。

「れん、迎え何時ー?」
「……ん? えーと……?」
「あ、そだそだ、いま寝起きだったぁ。れん寝起きじゃーん。そりゃ答えらんねぇよなぁ。ふはっ」

 目覚まし鳴るからいっかぁ、と言って俺の胸に顔をうずめた。

「秋さん、いま何時……?」
「ん? んー、まだ暗いー」
 
 俺はとりあえず秋さんが酔っ払いだということは理解できた。秋さんの言うとおり、目覚ましが鳴るまではゆっくりできるから大丈夫だ。
 
「なぁなぁれん、おれさぁ、お前におねがいあるんだけどー」
「うん、なに……?」
「いまおれ全然弱ってねぇけどさぁ。すっげぇ幸せで怖いくらいだけどさぁ。あれやってほしいあれ」
「ん? なに……?」
「好き好き攻撃ー」
「え……」

 なぁやって? なぁなぁ、と胸に顔をグリグリ押し付けてくる。
 あれ、俺もしかしてまだ寝てる? これ夢かな? 秋さんがこんなこと本当に言う……?
 本当に弱ったときですらお願いされたことはない。
 でも夢でもなんでも、そんな可愛いお願いいくらでも喜んでやってあげる。

「秋さん、好き。大好き。愛してる……」
「……んー、違うー」
「え、違う……?」
「好き好き言いながら目とか鼻とかほっぺとか、チュッチュッてするやつだよ。あれやって」

 俺はまだ眠い目をまたたいた。
 秋さんは目を閉じると「ん」と言ってキスを待つ。
 待って待って。本当にこれ現実? 秋さんどれだけ酔っ払いなんだろう。もう可愛すぎて死にそうだ。
 俺は目に鼻に頬に額に、顔中にキスを落として好き好き攻撃をした。

「秋さん、好き」
「……ん」
「大好き」
「……ん」
「愛してる」
「……ん……もっと」

 ちょっと長めに唇にキスをして、また顔中にキスと好きを繰り返す。

「世界で一番好き」
「ふは、……ん」
「昨日より大好き」
「……ん、うん」
「明日はもっと愛してる」
「ははっ。うん、俺もぉ。めっちゃ愛してる」

 最後に唇にチュッとキスをすると、またなにかを期待する目で俺を見つめた。

「あとさ、あとさ、キスマつけて」
「……え? キスマ……? キスマーク?」
「そそ。首、首がいー」
「えっ。ダメダメっそれはダメっ!」
「いいじゃん、おれ五連休だしさぁ。オフ明けも撮影とかねぇしぃ」
「五連休……」

 ちょっとづつ目が覚めてくる。そうか、今日から秋さん五連休か。

「なぁ、いいじゃん、つけて。軽くでいいからさぁ。キスマー」

 キスマークをつけてなんて初めて言われた。俺たちは仕事柄、絶対につけたらダメだと思っていたし、秋さんもそう思っていると思う。

「秋さん、酔いが覚めたら後悔するかも。俺怒られるかも」
「ないない。だって俺、五連休ってわかってから、ずっとつけてもらおうと思ってたもん」
「え……酔ってるからじゃないの?」
「もう連休なんていつあるかわかんねぇだろ? なぁ、いいじゃんつけて?」

 また「ん」と言って首を反るようにしてこちらに向ける。

「あ……あとで怒らない?」
「怒んない。喜ぶー」
「……さ、鎖骨でいい?」
「くびー」
「いや、でも……。いや、やっぱり首はダメ」
「えー。……むー。……じゃあ鎖骨でいい」
「……うん」

 鎖骨にキスをしようとして、秋さんがまだ服のままだということにやっと気づく。
 本当に酔っ払ってるんだな。秋さんがパジャマにも着替えず寝ようとするなんて初めてだ。
 セーターとシャツの首元を少し下げて、ドキドキしながら鎖骨にキスを落とし、初めて本気でジュッと吸い付いた。

「……んんっ……」

 唇を離すと、秋さんの白い肌に紅い華が咲いた。
 初めて付けたキスマークにドキドキする。

「ついた? キスマついた?」
「……うん。ついた」
「マジ? マジで?」

 秋さんが枕元のスマホを手に取って操作して、首元を出すように服を下げスマホをかざした。

「……うわ。うわ。キスマだ。やべ……めっちゃ嬉しい」

 頬を桃色に染めた秋さんが、かざしたスマホでカシャッと音をたてる。

「……えっ。まさか写真撮った?」
「うん、撮ったー」
「え、ダメだよそんなの残しちゃっ」
「だって撮んなきゃ消えちゃうじゃん」
「誰かに見られたらどうするのっ」
「誰にも見せねぇってー」

 秋さんのスマホを取り上げると「あ、もー。お前それ消しても俺また撮るかんな」と言って、また俺の胸に顔をうずめた。
 
「あーやべぇ……すげぇ嬉しい……」
「……そんなにキスマーク、嬉しい?」
「うん。めっちゃ嬉しー。だってずっとつけてほしかったんだもん。あー……誰かに自慢してぇ……」

 だからその胸に顔グリグリするの、可愛すぎるからやめてほしい……。

「俺さぁ。朝起きたらついキスマ探しちゃうんだよな。お前がつけるわけねぇってわかってんのに……。んで、やっぱねぇよなぁってガッカリすんのぉ……」
「…………っ」

 秋さんがそんなにキスマークをつけてほしかったなんて、全然知らなかった。キスマークを探してガッカリする秋さんを想像するとなんだか胸が痛い。いつでもつけてあげたいのにそれは無理だから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

尻で卵育てて産む

高久 千(たかひさ せん)
BL
異世界転移、前立腺フルボッコ。 スパダリが快楽に負けるお。♡、濁点、汚喘ぎ。

処理中です...