ふれていたい、永遠に

たっこ

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番外編

夢の中で✦side秋人✦後編 ※

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「いいよ蓮……動いて……」
「うん。でももうちょっと」

 ぎゅっと俺を抱きしめて、また耳を舐めてくる。

「んんっ、も……いいって……耳……」
「だって。秋さんが可愛くてやめられない。ずっとビクビクしてるんだもん」

 そう言って耳孔に舌を差し入れる。
 
「あ、ンン……ッ、はぁ……っ、やば……また勃つじゃん……」
「どれ? あ、ほんとだ。もう勃ってきてる」

 蓮が前をさわりながら嬉しそうに笑う。
 もう二回も出したのにマジか……。
 元気だな俺……。
 蓮にぎゅっと包まれながら、前をさわさわといじられ、耳を舐められ、もう全身がドロドロに溶かされていた。

「動いていい?」
「……ん、いいよ」
「…………うっ、……はぁ……きもちい……っ。秋さん……愛してる。大好き」
「……ん……俺も。……あぁっ、ん……っ」

 蓮の言葉も吐息も全部耳元で、もうずっとゾクゾクしっぱなしだ。
 俺は顔が見えない体位はずっと嫌いだった。
 でもこれ……顔が見えるよりずっと蓮を感じる。
 いつもと違うことをすると思わぬ発見があるな、と蓮に突かれて喘ぎながら嬉しくなって思わず笑った。

「……いま笑った?」
「んっ……うん、すげぇ幸せで。ア……ッ、あぁ……っ、れん……俺、も……だめ……っ」

 俺の申告に、蓮が強めのストロークで最奥に数回打ち付けた。

「ぁああぁぁ……ッッ!!」
「くっぅ……ッッ!」

 あ……俺もう限界……。
 蓮に抱きしめられたまま、いよいよ意識が薄れていく。

「れ……ん……」
「……うん?」
「……おやすみ…………」
「え? うそ、秋さ……――――」

 そこで俺の意識は途切れた。

 
 
 目が覚めたらソファの上だった。
 正確には、蓮に抱えられた状態で目が覚めた。
 いやもっと正確には、布団にくるまれたミノムシ状態で蓮の腕の中にいた。
 壁時計を見ると、もう美月さんが迎えに来てもいい時間だ。マジかっ!
 血の気が引いて飛び起きる。

「おいっ、蓮っ、遅刻だっ」
「ん……」
「おいっ! 蓮っ!!」
「ん……」
 
 マジかっ!
 声だけで蓮を起こすのは至難の業だ。
 いつもスマホのアラーム音を合図に仕事モードに切り替えるらしい。あれが一番効果がある。
 スマホを探したがソファにもテーブルにもない。
 蓮がセットし忘れるわけはないから、ベッドにそのままの可能性が高い。
 慌てて布団をはいで立ち上がり寝室に走った。走りながら俺は自分が素っ裸だと気づく。ミノムシ状態だった理由がわかった。
 寝室のいつもの場所に蓮のスマホがあった。すぐに手に取って美月さんに発信する。裸を気にしてる余裕もない。
 美月さんの応答を待っていると、昨夜のアレやコレやでベタベタのシーツが目に入る。だからソファで寝たのか、と納得した。スマホもそのままだったし、おおかた蓮も電池切れだったんだろう。

『はい。蓮くんどうしたの? もうすぐ着くよ?』
「すみませんっ、秋人ですっ」
『えっ秋人くん?』
「実は蓮がまだ寝ててっ! すみませんっ! とりあえず先に電話をっ」
『あーー。とうとうやったかー』
「いまアラームで起こしますっ! あの、シャワー入る時間とれますかっ?」
『んー無理だなぁ。昨日入らずに寝たの?』
「いや、あの、入ったんですけど……」

 そのあとにアレだからな……。でも汚れ具合は俺よりましか。入らなくても行けるか……?

『うん。色々わかった。ごちそうさまです』

 もう恥ずかしすぎるし情けないしで、返事ができない。

『大丈夫。とりあえずアラームで起こして着替えさせるまでできるかな? 歯ブラシなんかは用意あるから手ぶらで大丈夫よ』
「わかりましたっ」
『じゃ、いま着いたから。玄関で受け取るね』
「いや、下まで俺が連れて……」
『起こす秘訣あるから。玄関で待ってて? じゃ』

 切れたスマホを手に持ったまま、俺は床に落ちたパジャマを着た。もう自分の服まで用意する時間すらない。
 蓮の着替えを持ってリビングに戻る。
 蓮の耳元でアラームを鳴らし、なんとか起こすことには成功する。
 
「秋さんおはよ……」
「おはようじゃねぇっ!」
 
 キスを迫る蓮の手を引っ張り起こし、無理やり服を着せ玄関に連れて行く。やべぇギリギリセーフだ……。勘弁してくれ……。

「秋人くん、お疲れ様」

 玄関まで迎えにきた美月さんの顔を、とてもじゃないが見ることができなかった。
 
「ほんと……すみません……」
「いつかやると思ってたのよねぇ」

 寝てるのか起きてるのかわからない蓮が、靴をはいて玄関にボーッと座っている。それを見下ろして美月さんはため息をついた。

「ま、とりあえず大丈夫よ。たぶん一瞬で起きるから」
「え、一瞬? どうやって?」

 美月さんは蓮の耳元に口を近づけた。

「秋人くんが怒って出て行っちゃったわよっ。蓮くんまた抱きつぶしたでしょうっ」
「え゛ッッ!!」

 蓮がガバッと勢いよく立ち上がった。

「秋さんっっっ!!」

 俺を見もせず玄関を飛び出そうとする蓮の首根っこを、美月さんがつかむ。

「じゃあね、秋人くん。ゆっくり休んでね」
「え……っと。はい。どうも……」
「えっ秋さん?! あれ? なんで?」

 いよいよ美月さんが怖い。
 蓮を一瞬で起こしたことも怖いが、蓮が無茶をするのは俺のオフ限定だと察しているのも怖い。
  
「ほら早く行くよ、まったくもう」
「え? え?」

 美月さんってもしかしてサトリかな……。
 本当に怖すぎる。
 まだ青ざめた顔のまま引きずられて行く蓮を見送りながら、俺のマネージャーじゃなくてマジでよかった……と心底思った。
 
 寝なおそうと寝室へ行きかけて、ベタベタのシーツを思い出す。シーツがあれなんだから俺も同じくらいか……? と恐る恐るパジャマをめくってみたが、不快な感じがまったくない。きっと蓮が濡れタオルで拭ってくれたんだ。
 早く寝るべきなのは蓮のほうだったのに。それでも俺優先に動いてミノムシにして抱きしめて電池切れ起こしたのか……。バタバタと必死で動く蓮を簡単に想像できた。
 さっきは真っ青な顔で俺を追いかけようとして……本当に俺の蓮は可愛いな……。
 さっき「おはようじゃねぇっ!」と怒ったことを、早く謝りたくて落ち着かなくなってきた。
 たったいま見送ったばかりの蓮を待つ、俺の長い一日が始まった。
 
 

 
end.

 
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