110 / 173
番外編
デートしたいっ!おまけモブ視点 前編
しおりを挟む
推しが目の前に現れたらどうしよう。
そんな妄想は死ぬほどした。数えきれないくらいした。
でもまさか、現実なるなんていったい誰が想像しただろう。
妹と二人でネズミーシーにやってきて、今レストランの行列に並んでいる。
そして後ろを振り返れば、推しが二人でイチャイチャしていらっしゃる。
イチャイチャとは私の妄想だが、頭の中は自由だからいいのだ。
私は職業柄、口話が読み取れる。声はかすかにしか聞こえないが、口を読めば会話が分かる。
ダメだ。ダメだ。勝手に読んだらダメだ。分かってはいるが……すまぬ、許してくだされ。読んだ内容は絶対に口外しません!
『あ、そうだお土産にチョコクランチ買って帰りてぇっ』
『秋さん意外とチョコ好きだよね』
『うん好き。前にもらったここのチョコクランチ超美味かったんだよ。なんか缶に入ってるやつ。俺二個は食いてぇな』
『じゃあ四個買って帰ろっか』
『なに、お前も二個食うの?』
『秋さん、あとでもっと買えばよかったって言いそうだから』
私の脳内は妄想天国になっていた。
え、なになに、それは四個買って持って帰りなよって意味? ちょっと違うよね? 買って帰ろっかって言ったよ。え、なんか一緒に住んでるっぽく聞こえるのは私だけ??
同じマンションに住んでる二人。これは家を行き来してるとかじゃないね。もう一緒に住んでるね。同棲だね?
……なわけないか。
ぐふふふ。妄想が膨れる。楽しすぎる。
なんか秋人が元気ないなと思っていたら、『疲れた』と言って蓮にもたれかかった。えっ。なんて眼福っ。
くっつく二人に萌えていたら、なんと肩に頭まで乗せたっ! ぎゃーー!
「あー疲れたー癒されるー」
ここまで聞こえてきた秋人の声。
なになにその取ってつけたような言い訳みたいなのっ。可愛すぎかっ。
蓮のほっぺが赤く見えるのは気のせいなのかっ?!
もう脳内が大変です。心臓がヤバいです。神様本当にありがとうございますっ!
席についてからも、食事をしながらずっと推しを観察していた。
「もう、お姉ちゃん聞いてる?」
「聞いてない。姉ちゃん推し観察で手一杯」
「分かってるよっ。だからさ、後悔しないようにあとで声かけて握手とかしてもらおうよ?」
「は? むむむ無理無理っ。ななな何言ってんのっ」
「もー、こんなときにコミュ障は置いといてさぁ」
「あ! やだめっちゃ席近いっ! どうしようっ!」
二人がななめふたつ隣りに座った。近すぎるヤバすぎる。隣の席の人いいなぁ……。
私からは蓮は背中だけど秋人の顔は見えた。やったっ!
さっきからずっと秋人のため息がとまらない。元気ないなぁ大丈夫かな? と思っていたら、秋人の口話を読み取って手から箸がすべり落ちた。
今なんて言った? 『蓮不足すぎ』って言った? 読み取り間違えた?
そんな訳ない。言った絶対に。
そんなため息つきながら『蓮不足すぎ』って……、二人だけでネズミーシーに来て、ずっと一緒なのに蓮が不足なの?
普通は不足どころか充足では?
そこで私はハッとした。もし私の妄想が妄想じゃなかったら?
二人が一緒に住んでいて、いつもベタベタイチャイチャしてたとしたら?
外ではイチャつけないと我慢していたら?
それは蓮が不足になるだろう。え、そういうことなの?
そんなにため息がとまらないほど蓮不足すぎって、それ以外の意味って何かある?
ヤバい……秋人……可愛すぎかよ……っ!
推しが尊すぎてもう倒れそうです……。
推し二人が立ち上がった。
慌てて私も立ち上がる。
「お姉ちゃん全然食べてないけどっ」
「もう食べれないっ行くよっ」
なんとか秋人に蓮を補充させてあげたい。
もう私の妄想でもなんでもいい。妄想の中の秋人だとしても蓮を補充させてあげたいっ。
だからお願い神様、今だけはコミュ障を封印させてくださいっ!
そんな妄想は死ぬほどした。数えきれないくらいした。
でもまさか、現実なるなんていったい誰が想像しただろう。
妹と二人でネズミーシーにやってきて、今レストランの行列に並んでいる。
そして後ろを振り返れば、推しが二人でイチャイチャしていらっしゃる。
イチャイチャとは私の妄想だが、頭の中は自由だからいいのだ。
私は職業柄、口話が読み取れる。声はかすかにしか聞こえないが、口を読めば会話が分かる。
ダメだ。ダメだ。勝手に読んだらダメだ。分かってはいるが……すまぬ、許してくだされ。読んだ内容は絶対に口外しません!
『あ、そうだお土産にチョコクランチ買って帰りてぇっ』
『秋さん意外とチョコ好きだよね』
『うん好き。前にもらったここのチョコクランチ超美味かったんだよ。なんか缶に入ってるやつ。俺二個は食いてぇな』
『じゃあ四個買って帰ろっか』
『なに、お前も二個食うの?』
『秋さん、あとでもっと買えばよかったって言いそうだから』
私の脳内は妄想天国になっていた。
え、なになに、それは四個買って持って帰りなよって意味? ちょっと違うよね? 買って帰ろっかって言ったよ。え、なんか一緒に住んでるっぽく聞こえるのは私だけ??
同じマンションに住んでる二人。これは家を行き来してるとかじゃないね。もう一緒に住んでるね。同棲だね?
……なわけないか。
ぐふふふ。妄想が膨れる。楽しすぎる。
なんか秋人が元気ないなと思っていたら、『疲れた』と言って蓮にもたれかかった。えっ。なんて眼福っ。
くっつく二人に萌えていたら、なんと肩に頭まで乗せたっ! ぎゃーー!
「あー疲れたー癒されるー」
ここまで聞こえてきた秋人の声。
なになにその取ってつけたような言い訳みたいなのっ。可愛すぎかっ。
蓮のほっぺが赤く見えるのは気のせいなのかっ?!
もう脳内が大変です。心臓がヤバいです。神様本当にありがとうございますっ!
席についてからも、食事をしながらずっと推しを観察していた。
「もう、お姉ちゃん聞いてる?」
「聞いてない。姉ちゃん推し観察で手一杯」
「分かってるよっ。だからさ、後悔しないようにあとで声かけて握手とかしてもらおうよ?」
「は? むむむ無理無理っ。ななな何言ってんのっ」
「もー、こんなときにコミュ障は置いといてさぁ」
「あ! やだめっちゃ席近いっ! どうしようっ!」
二人がななめふたつ隣りに座った。近すぎるヤバすぎる。隣の席の人いいなぁ……。
私からは蓮は背中だけど秋人の顔は見えた。やったっ!
さっきからずっと秋人のため息がとまらない。元気ないなぁ大丈夫かな? と思っていたら、秋人の口話を読み取って手から箸がすべり落ちた。
今なんて言った? 『蓮不足すぎ』って言った? 読み取り間違えた?
そんな訳ない。言った絶対に。
そんなため息つきながら『蓮不足すぎ』って……、二人だけでネズミーシーに来て、ずっと一緒なのに蓮が不足なの?
普通は不足どころか充足では?
そこで私はハッとした。もし私の妄想が妄想じゃなかったら?
二人が一緒に住んでいて、いつもベタベタイチャイチャしてたとしたら?
外ではイチャつけないと我慢していたら?
それは蓮が不足になるだろう。え、そういうことなの?
そんなにため息がとまらないほど蓮不足すぎって、それ以外の意味って何かある?
ヤバい……秋人……可愛すぎかよ……っ!
推しが尊すぎてもう倒れそうです……。
推し二人が立ち上がった。
慌てて私も立ち上がる。
「お姉ちゃん全然食べてないけどっ」
「もう食べれないっ行くよっ」
なんとか秋人に蓮を補充させてあげたい。
もう私の妄想でもなんでもいい。妄想の中の秋人だとしても蓮を補充させてあげたいっ。
だからお願い神様、今だけはコミュ障を封印させてくださいっ!
11
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる